講師:米井 嘉一先生
同志社大学 アンチエイジングリサーチセンター教授 医学博士 日本初の抗加齢医学の研究講座である同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授として、研究に尽力するほか、抗加齢医学を日本に紹介。
米井嘉一抗加齢研究室hp→
http://www.yonei-labo.com/
■lesson1
アンチエイジングは 機能的な年齢の 若返り
日本への導入
vinice
アンチエイジングという言葉を最近耳にするようになりました。「アンチエイジング=いつまでも若々しくいられる」というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか?アンチエイジング(抗加齢)の普及と発展に力を注いでおられる米井先生に教えていただきたいと
思います。宜しくお願いします。
米井先生
宜しくお願いします。
vinice
では、アンチエイジングはいつ頃できたのでしょうか?
米井先生
世界的にアンチエイジングの言葉ができたのは1990年代初め頃からで、アメリカやヨーロッパを中心に若さと健康についての研究が
始まりました。 私がアンチエイジングの言葉を知ったのは1999年です。
vinice
米井先生はアンチエイジングを知ってから今までどのような活動をされてきたのですか?
米井先生
初めは、アメリカのクリニックや学会で話を聞いて、“これは面白い!”と思ったのがきっかけです。それからアメリカとヨーロッパで勉強をして日本に導入したいと思いました。日本の医療制度は独特で、日本にきちんと根づかないとせっかく良いものでも浸透しないと思い、アカデミック研究会を立ち上げました。アメリカは自由診療の国ですが、日本は医療に対して厳しいので、まずは内科学会や外科学会など様々な学会の既存のドクターにアンチエイジングが良いと思ってもらえるような学問体系をつくりたく、2001年に研究会を作りました。研究会で学問的な裏づけができました。そして、2001年に日本で初めて、川崎の日本鋼管病院にアンチエイジングドックを開設しました。
vinice
新しいものを導入することは簡単なことではありませんよね。
米井先生
そうですね。アンチエイジングドックは自由診療で、健康増進のための予防医学なので保険が適用されません。日本では保険医療が主体ですが、自由診療は美容外科や人間ドックなどが主です。 人間ドックに対しては、定着していることと、安心感があったので、人間ドック学会のドクターたちとタイアップして、アンチエイジングドックを作り上げていきました。
アンチエイジングの目的とは
vinice
なるほど。ところで、アンチエイジングは、外科と内科のどちら寄りなのでしょうか?
米井先生
外科でもあり、内科でもあり、両面あるんです。 見た目のアンチエイジングもあります。例えば、エステに行ったり、お化粧をしたり、美容外科でしわをのばしたり、しみをとったりと、見た目のアンチエイジングはありますが、3年くらい経過すればまた年をとってしまいます。 それはしょうがないことですが、せっかく外面的なものをきれいにしたのだから、それをいかに長持ちさせることができるか?長持ちさせることが大切なので、 内面的なアンチエイジングも大事なんです。だから、両方大事で、美容外科とタイアップをした活動も行なっています。両方行なうことによって、相乗効果が生まれ、1+1が2ではなく、3にも5にもなります。
vinice
外見をきれいにするだけでも自分に自信がでてきますが、それが一時的ではもったいないですね。そのキレイさを長持ちさせるには内面的なアンチエイジングが必要で、両方やると相乗効果がでるんですね。 でも、アンチエイジングの1番の目的はなんでしょうか?
米井先生
健康長寿です。 日々の健康を増進して、生活の質を良くしていきます。これを連続して健康長寿を保つのが目的です。人間は老化しますが、老化の仕方は人それぞれ。 頭が老化する人、骨が老化する人、血管が老化する人、様々です。
vinice
100歳でもボケがなく、病気もない方は老化するスピードが遅いのですか?
米井先生
100歳でボケもなく、病気もない方を百寿者と言いますが、百寿者が決して老化のスピードが遅いわけではありません。全身の体のパーツが、心も体もバランスよく均一に老化していることが特徴で、弱点が極めて少ないのです。 しかし、一般的には老化の仕方にムラがあり、弱点があります。その弱点がどんどん大きくなって病気になって、健康な部分まであしをひっぱるようになり、健康長寿から脱落してしまいます。
vinice
弱点とは、部分的に劣っているものを指しているのですか?
米井先生
そうです。 60歳の人が、脳年齢は50歳、血管年齢も50歳、骨年齢は70歳の場合、あと5年後には骨が折れしまうので、50歳に戻すようにします。早いうちから重点的に予防して、または治して、機能的な年齢の若返りを図ることがアンチエイジングです。あるいは、機能的な年齢の老化予防です。
vinice
機能的な年齢の若返りが目的なんですね。
米井先生
そうです。いろんな器官・臓器がある中で、1番老化している部分を重点的に直す。この論理を伝えると、他のドクターはなるほどと頷いてくれます。 悪い部分を1つ治すと、他の部分にプラスの作用が働くのです。これをアップレギュレーションと言いますが、逆に、弱点をそのまま放置しておくと、脳は50歳ですが、骨だけが71歳・72歳となっていき、元気だった器官・臓器も悪くなってしまいます。これをダウンレギュレーションと言います。 全体のバランスを保つことが大切なのです。そのための指導治療がアンチエイジングドックになります。
vinice
自分では全体のバランスが均一かどうか、どの部分が老化しているか知ることは難しいですものね。 では、lesson2では、アンチエイジングドックについてもう少し詳しく教えてください。
■lesson2
アンチエイジングドックで初歩的な老化予防
目指せ!実年齢よりも少し若い年齢
vinice
前回は、器官や臓器の全体のバランスを保つことが大切で、そのバランスを保つための指導治療がアンチエイジングドックと教えていただきました。今回はもう少し詳しくて教えてください。宜しくお願いします。
米井先生
アンチエイジングドックでは骨年齢・血管年齢・神経年齢・ホルモン年齢などの機能的な年齢を測ります。これらのバランスが良いのが好ましく、しかも実年齢よりも少し若いほうが理想的です。
アンチエイジング ドックで調べて、弱点を探しだし、実年齢よりも少し若い年齢を目指します。
そして、弱点をなくすために何をするか、問診で指導を行ないます。 指導は40分から1時間程度で食事療法と運動療法、精神などの気の持ちようについてです。 骨が弱かったらそれに合った指導をしますし、ホルモンの分泌が少なければ、ホルモンを出す運動、筋肉が衰えているならば筋肉をつけるための運動、睡眠の仕方、食事についてなどの指導を行ないます。
vinice
指導は思っていたより時間をかけてじっくりやるんですね。
しかも、食事・運動・精神の指導と、細かく指導していただけるわけですね。
米井先生
そうですね。人間が生きるには、120歳や125歳と限界があります。1年1年避けがたい正常な老化があって、120歳まで生きる人は正常な老化だけですが、一般の人は正常な老化に加えて病的な老化があります。ここで診断するのは病的な老化であり、それを知ることで予防と治療ができるのです。
vinice
では、120歳まで生きるのは不思議なことではないんですね。
米井先生
そうかもしれませんね。
全員がアンチエイジングを行なえば、平均寿命が5歳から10歳は上がるでしょうね。 弱点を補正することはとても大事です。健康商法などで情報が多すぎて何をやればいいか分からない方が多くいます。親がサプリメントを飲んで効いたからといって本人が飲んでも、その人に合うかどうかは別です。骨が強い人が骨粗しょう症の薬を飲んでも効果はありません。
vinice
口コミをつい信用しがちですが、人それぞれ老化する部分は違うので、効くかどうかはわからないですね・・・。
おっしゃるように、情報がありすぎて、どれを試せばいいかわからないです。
米井先生
私たちの役目は、氾濫している情報の交通整理してあげて、その人に合った方法を指導することです。
基本は生活療法です。
生活療法とは、食事・運動・精神。全部駆使して弱点を制するのです。 30歳くらいなら、バランスが崩れている方は少ないので、多少崩れていても、少し治療すればすぐに治ります。
vinice
手を打つなら早い方がいいということですか?
米井先生
人間はだいたい30歳で成熟します。社会的な意味で生産性がよく、ホルモン分泌が良く、もっとも理想的な生き生きとした状態になる方が多いです。30歳で検査しても、このままでいいですという方が多いと思います。それが33歳、35歳、40歳となって、項目ごとに外れていく方が多くなります。35歳で検査をすれば、たとえ外れていても補正は楽です。しかし、60歳、70歳は補正の幅が大きくて戻すのが大変です。だから、35歳くらいで検査をすることをお勧めします。
vinice
目標は30歳ということですか?
米井先生
初めは30歳が目標と言っていました。1番成熟した年齢で生き生きしているからです。
40歳~45歳の方は30歳を目標にしてもいいと思いますが、60歳や70歳の方が30歳を目指すのは遠い感じがします。 今では、実年齢の7掛けから8掛けの間の機能的な年齢を目標としています。60歳は42歳~48歳の間ですが、この年齢に入っている方もいますので、そこを目指してがんばってもらいます。 年齢の7掛けでバランスが取れている人は本当に健康です。病気になりにくくなります。
vinice
60歳や70歳の方が30歳を目指すのは、さすがにムリだと思ってしまいますが、 7掛けから8掛けの年齢ならできる気がしますね。
ところで、アンチエイジングドックを受診している方の年齢層はいくつくらいですか?
米井先生
40歳・50歳・60歳の方が多く、男性女性の割合は1:1です。 以前、アンチエイジングドックができたばかりの時は、マスコミにとりあげられてメディアにでると、リアクションがいいのは女性なので、2:1で女性が多かったです。 ちなみに、一般的な人間ドックは2:1で男性が多いです。人間ドックのリピーターは多く、そのリピーターがオプションでアンチエイジングドックを受けて口コミで増えていきました。 アンチエイジングドックは、人間ドックの未来系と言われています。人間ドックは、生活習慣病やガンを早期に発見して、予防や早期治療に結び付けますが、そこに老化を病気としてとらえて、早目に見つけて予防して、ちょっと弱ったところは治してしまうのです。人間ドックもアンチエイジングドックも両方大事ですが、生活習慣病やがんに加えて、初歩的な老化を治すのがアンチエイジングドックです。
vinice
初歩的な老化を治してもっとも生き生きとした状態を目指すことがアンチエイジングドックなんですね。
適度な脂肪は大切!
vinice
最近は、お菓子等ばかり食べていたり、食生活がみだれている方が増えてきた気がしますが・・・。
米井先生
現在8歳~85歳の方を検査していて、1500名以上のデータがありますが、8歳、9歳の子供が成熟した30歳になれるかみているんです。今の子供達は、ゲームや受験で外で遊ばないので骨が弱くて筋肉がなく、肩こりや高脂血症、ストレスかいよう、胃かいようなど多くの病気を持っていたり、あるいは病気にならなくてもとても不健康な子供が多いです。 女性の場合は1番注意しなくてはならないのは骨です。 ダイエットで、痩せていればいいという考えを持っている方がいますが、痩せればいいだけなら簡単で、食べなければいいんです。食べなければガリガリになります。でも骨から必要な栄養分やミネラルも失ってしまうので、骨がスカスカでボロボロになってしまいます。30歳でも骨年齢が50歳ということがあり得ますし、その子が50歳になったら骨は折れてしまいます。
vinice
若くして骨粗しょう症なんて・・・。やはり、しっかりと3食とって栄養をとらなければ 将来が恐いですね。
米井先生
骨密度は治るので、早めに治す必要があります。
また、脂肪は人間の体を守るためにあるもので、いろんなホルモンを出します。脂肪を構成する物質の中には、女性の生殖器を成熟させるような働きもあります。もともと、適度な脂肪は大事なんです。 例えば、脂肪があると転んでもクッションになってくれたり、寒さに耐えられる、血を止める成分もあるので、ケガをしても血がとまったり、また、抗ガン作用や動脈硬化を防ぐ物質もあるんです。 もちろん、体脂肪が35%、40%などつきすぎると弊害がありますが、逆に足りなくてもよくありません。よくテレビでアイドルが体脂肪が一桁なんて言いますが、本当によくないです。脂肪がなさすぎると脳出血になりやすい傾向もあるんです。 人間は酸素を吸うときに、フリーラジカルという活性酸素ができます。これによって体がさびてきますが、1番反応しやすいのが、脂肪組織です。脂肪は大事な遺伝子やたんぱく質が酸化するのを守っているので、脂肪がなければ、遺伝子ばかり障害が受けてしまって、ガンの発症率も上がってきてしまいます。極端な場合は、女性の生殖器が発達しないから、不妊になってしまうこともあります。
vinice
脂肪はいつも悪者扱いですが、そんなことはないんですね。
脂肪の役目がこんなたくさんあるとは! 適度な脂肪は大切なんですね。
lesson3は、老化について教えていただきます。
何で老化するの?
vinice
アンチエイジングドックでは、初歩的な老化を治してもっとも生き生きとした状態を目指す、と教えていただきました。では、なぜ人間は老化するのでしょうか?
米井先生
老化の原因の1つ目は、通常の細胞が1日に平均して10万個死滅するのに対して、脳神経細胞は生まれてから死ぬまで同じ細胞が働いていて長生きする細胞なので、神経機能・精神機能は年々衰えます。
これは、認知障害、記憶力、睡眠の質の悪化、やる気などに影響してきます。
2つ目は、人間は酸素を吸うときにフリーラジカルという活性酸素ができますが、これによって鉄のように体がさびてきます。脳細胞のようにずっと働いている細胞はさびに弱く、それが致命的になってきます。心臓の筋肉の心筋もずっと働いているので、さびによってダメージを受けてきます。
3つ目は若さと健康を保つのに必要なホルモンが加齢にともなって低下することです。
例えば、眠りが浅かったり、寝つきが悪い、朝早く起きてしまう、夜中に目が覚めるなど、睡眠の質にはメラトニンというホルモンの分泌が関係しています。メラトニンが少なくなると免疫力の低下や、ストレスに対する抵抗、dheaという男性ホルモン、女性ホルモンの低下が関係していて更年期障害になることもあります。 エストロゲンという女性ホルモンは女性らしさをつくり、女性の性殖器をつくる働きをしますが、動脈をしなやかにすることや、皮膚をやわらかくする働きもあります。男性は男性の性殖器だけではなく、筋肉や骨を作ることや、精神的な抗うつ作用もあります。これが下がってくると、ストレスを感じてうつになりやすいのです。
vinice
老化のメカニズムは、神経細胞の衰えと、活性酸素による体のさび、そしてホルモンの低下なんですね。
米井先生
人によって下がり方は異なり、ホルモンが下がる人、動脈硬化がひどい人など様々ですが、これは生活習慣がとても関係しています。ホルモンだけが下がって、しかも、そのホルモンの中の1つ、または2つだけ下がっていることもあります。
私達はそれを見つけて、足りないものを補う指導もしています。
vinice
年をとったと思っても、何が老化しているかは調べてみないと分からないということですね?
米井先生
そうですね。何が老化しているかは人によって違うということです。 どこが弱点かは調べてみないと分かりません。意外に骨だった、血管だったということもあります。
ムリは禁物。自分に合ったペースで・・・
vinice
今は20代なので少しムリをしても今のところ何とかなっていますが・・・。
米井先生
20代でしたらまだムリがきく年齢ですが、逆にそれが怖いのです。
同じペースでやっていったら、どこかでいつか破綻します。徹夜を週に3回やっても大丈夫かもしれませんが、ずっとやっていたら30歳前半で破綻しますから。 それが何日間かの入院程度で済めば良いですが、くも膜下出血で命をおとす場合もあるので怖いですよ。
vinice
ツケはいつか回ってくるんですね。
米井先生
体調を崩したことをきっかけに、ペースダウンした方は大勢います。 がむしゃらにやりすぎると後々手遅れになる場合もあるので気を付けてください。
vinice
でも、女性で夜遅くまで仕事をしている方も多いと思います。目の前にやるべきことがたくさんあってがむしゃらになってしまう方はどうすればいいのでしょうか。
米井先生
頑張りすぎは適正なペースに調整することが必要です。そうしないと長続きしません。
vinice
自分ではなかなか加減が分からないですよね・・・。
自分のことを客観的にみようと思ってもできないので、検診を受けたほうが良いんですね。
ところで、お医者様は激務ですが、自分の弱点を知っているからコントロールができるんですか?
米井先生
そうかもしれませんね。
しかし、私自身20代・30代のときはバリバリやっていて、週に2・3回泊り込んで仕事をしていたときがありましたが、2年続けたら倒れて4ヶ月入院しました。ドクターだって分かりません。 しかし体調を崩すことで、ペースが合っていなかったと分かります。確かに、ドクターだからこそ分かることも中にはあります。
日本抗加齢学会という学会がありますが、2001年にできた当初は、会員が20人でしたが今では5500人の会員がいます。
そのうち7割~8割がドクターです。自分自身が年をとって、30代のときと違う・・・と感じ、このままではまずいと思うようになったからでしょう。自分でなんとかしようと思って勉強をしています。
まずは、自分に試すことから始め、弱点を探してその弱点を治すために必死にやります。それが良ければ次に親や家族にやって、心底良いと思ったら患者さんにやります。そういう順番でがんばっていますね。
vinice
なるほど。ドクターも年齢には勝てませんものね。 今回は自分に合ったペースが非常に大切だと分かりました。
では、最終回のlesson4は、生き生きと過ごすために自分にできることを教えていただきます。
■lesson4
いつまでも美しく健康的でいるために
1番は「精神」
vinice
アンチエイジングドックに行って弱点を明確化して改善することは、予防であり対処ですが、せいぜい1年に1回・2回程度だと思います。忙しい毎日の中で健康的に生き生きと過ごせるために自分でできることは何でしょうか?
米井先生
そうですね、3つに分けると「食事」・「運動」・「精神」です。
その中で1番大切なのは「精神」です。 “病は気から”と言いますが、“老化も気から”なのです。最近は“キレイも気から”と言います。“意識”を持つことが1番大事です。
そして、私がアンチエイジングドックで指導するときに伝えることは、目標の再設定です。
年齢にもよりますが、“自分は絶対ボケないぞ”、“寝たきりにならないぞ”、“90歳になってもゴルフをやるぞ”など、男性・女性それぞれのシチュエーションに合わせて目標を立てます。 “いつまでも美しくいたい”、“異性にもてたい”でもいいのです。何か目標を決めて、そのためにがんばります。食事なり、運動をがんばるのです。そうしないと何も始まりません。
まず、“気”がないと食事でも運動でも苦労しようとは思いません。目標を再設定して、“気”を持つことが生きる喜びにつながってきます。 芸能人などは注目されるとどんどんキレイになっていきますが、本当にその通りで、“キレイは気から”、“元気は気から”なのです。そういう意味で“気”を持つように指導します。
vinice
まず1番にやることは意識を持つことですね!
米井先生
次に指導することはストレス対策です。
ストレスが何かを知り、いかにうまく過ごすかです。仕事・通勤・人間関係・運動・食事、全てストレスです。
夜になると疲れますが、疲れとはストレスによるダメージです。ストレスによるダメージを受けたら、十分な休養と睡眠で回復させることが大切。回復したら新たなストレスに立ち向かう、この繰り返しです。
十分に回復しているかが大切なので、睡眠が大切になります。睡眠の時間と質の問題です。
よく睡眠をどれくらいとればいいか聞かれますが、睡眠のサイクルは1時間半です。4サイクルで6時間。5サイクルで7時間半。最低でも4サイクルはとってほしいですが、理想は5サイクルです。
サイクルとサイクルの間に目が覚めやすくなりますが、この場合はメラトニンをとるようにすると良いです。
そこで、メラトニンを含む食事をとるような指導を行なうこともあります。どんな食材にメラトニンが入っているかも指導します。
vinice
睡眠の質や時間がストレス対策に関係しているのですね。睡眠をおろそかに考えてはいけませんね。
米井先生
次は、精神のバランスです 。
よく癒しのcdと言われるものがありますが、鳥のさえずりや川のせせらぎなどは沈静作用があるだけで、本当の癒しではありません。 本当の癒しとは、まずどういった精神状態が正常なのか、から入っていかなければならなりません。喜怒哀楽があり、感情が豊かでうまく流れていく、夢と想像力がある状態が1番健康です。不安が多い、怒りっぽいなど、ちょっとずれると夢や希望がなくなってウツ状態になることがあります。このずれ方も人によって違うので、その人のバランスを整えてあげることが良いのです。
vinice : なるほど。
怒ることも大事
米井先生
以前、45歳の銀行マンの患者さんがいました。仕事で上司と部下の両方ではさみうちになってすごいストレスを受けている方でした。ストレスを感じていることを自分でもわかっていたので、cdを買いましたが鳥のさえずりを聞いても改善されず、よけい落ち込み、結局入院してしまいました。
vinice
このようなとき、自分で対処することはできるのですか?
米井先生
頭の中のバランスを考えてあげることが大切です。喜びはなく、悲しみと不安が強い状態の時、ハッピーな音楽は合いません。悲しみの音楽はしんみりしてしまい、よけい落ち込んでします。
そこで、「最近怒りを感じていますか?」と聞いたところ、この方は最近怒りを忘れていたそうです。「上司に怒りをぶつけてみなさい」と言いましたが、さすがにできないようだったので、 「頭の中で上司に怒っている姿をイメージしなさい。」と伝え、患者さんに怒っているイメージをしてもらいました。そうすることで、忘れていた怒りの感情が復活して少しバランスが良くなります。
このような状態のときには、怒りを助長する音楽を聞くことがいいのですよ。例えばk-1などのファイティング音楽、相撲のときに鳴る太鼓の音楽、パチンコ屋でかかるような軍艦マーチです。そうするとバランスが整ってくるのです。
vinice
音楽は喜怒哀楽で欠けている感情を呼び戻す手伝いをして、その結果バランスが整うのですね。 先生は5枚のcd「アンチエイジングミュージック~音楽の処方箋~」を監修していらっしゃると伺いました。
米井先生
私の著書である「陰陽五行による 癒しの音楽」をビクターの方が読んで、興味を持っていただきcdを監修する声がかかりました。
vinice
喜ぶこと、楽しむことは大切だと思いましたが、怒ることも大事で喜怒哀楽のバランスが大切とは驚きました。
米井先生
悲しいときは徹底的に悲しまないとダメです。
感情には流れがあるので、本当に悲しいことがあったときに涙を流さずに済ましてしまったら、逆に尾をひいてしまいます。
例えば、女性の場合流産というとても悲しい経験をした時は、我慢するのではなく思いきり悲しんで涙を流すことも大切なんです。
最近では産婦人科の先生方にもこのような考え方を実践される方も増えています。
vinice
喜怒哀楽をだしていいと教えていただき、実際には怒ること、悲しむことができない状況だとしても、喜怒哀楽をだしていいんだ、だすことが自分にとってプラスになるというだけで気持ちとして楽になります。
ところで、今の子供たちは喜怒哀楽を表現するのが少ないと思います。遊びでも常に一方通行でゲームやテレビなど1人でできることが多くコミュニケーションがありません。大人の方でも、仕事でパソコンに向かって1日過ごすことが多く、それも影響してうつが増えているのではないでしょうか。精神的にバランスが良い状態は難しいんですね。
米井先生
いいえ、本当は簡単なことですが、時代や社会が難しくしているところもありますね。
今後のアンチエイジングの発展
vinice
今後のアンチエイジングについて、どのように広がっていくのでしょうか。
米井先生
アンチエイジングドックは企業検診、地域検診などでどんどん広がっています。
企業の場合、企業の中にいる産業医が職員の健康増進を目指します。この産業医がアンチエイジングに興味を持っていて、職員が健康増進すれば欠勤率が減る、病気の人が減る、生産性が向上する、そうすれば、会社にとっても良く、健康な人が多ければ健康保健組合の出費が減ります。1石2鳥にも3鳥にもなるのです。そのために、アンチエイジングドックを取り入れた企業検診を行なっています。
会社の重役が全員アンチエイジングドックを受けている会社もあります。大学の職員向けの検診もアンチエイジングの考え方を取り入れた企業検診を行ないました。
そして、市町村でやっている地域検診への導入です。地域の健康増進を図るための運動をしています。
積極的なのは福井県で、福井県は県別の長寿ランキングが男女とも2位です。男性の1位は長野県、女性は沖縄です。1位を狙っているのですが、どうしたら良いか相談され、アンチエイジングの考え方をアドバイスしました。
vinice
良い町興しですね。
米井先生
そうですね。今までやっていた地域検診に少し上乗せすることでアンチエイジングドック検診ができます。
福井県の良いところは、福井県と県医師会が非常に仲良くうまくやっているのです。 福井県で良ければ、他の県でも取り上げていくでしょうし、県全体で行なうことが難しいならば市で行なうなどして、今後はアンチエイジングドックに対する理解がどんどん広がっていくのではと思います。
vinice
制度の中に入ると浸透も早いですね。今後アンチエイジングドックが様々な自治体に広がっていくことで、私達の意識も高まっていくのでしょうね。
いつまでも生き生き過ごすには、今回のお話のように自分で対処できることもありますが、1年に1回、2回はアンチエイジングドックを受診して、客観的な視点で自分の体を診てもらい、早い段階から弱点を克服していくことが大切ですね そして、常に“こうありたい”という気持ちを持ち続け健康的でいたいと思います。
先生、とても興味深いお話をお伺いさせていただき、ありがとうございました。
アンチエイジングで健康増進1
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