講師:佐々木 隆先生
StoJapan株式会社 代表取締役
1965年3月 神奈川県茅ヶ崎市出身。
関東学院大学工学部卒業後、野原産業株式会社にて金属製建具の営業に従事。
2003年、湿式外断熱メーカー「ドイツSto AG」より日本輸入代理店権を収得
以後、湿式外断熱工法「StoTherm Classic」の普及に努める。
2006年1月Sto Japan株式会社を設立し、代表取締役に就任。
StoJapan HP→http://www.stojapan.com/
VINICE
ヴィニーチェクラブプロデュースの物件でも採用されている外断熱工法。アルシア大森では、引渡し前の検査時、2月のまだ寒い時期でしたが、女性の検査員からフローリングの床でも寒くなかったという声を多く聞きました。冬場の検査は特に足元が冷え女性には厳しいはずなのですが。また、ご入居者の皆様からも、酷暑の夏でもエアコンをつけた日数がとても減ったという声を聞きます。
これって、外断熱だからなのでしょうか。
今回は、この外断熱工法についてその魅力を教えていただきます。
それでは、さっそくですが、まず“断熱”ということからお伺いしたいと思います。そもそも、“断熱”ってどうして必要なのでしょうか。
佐々木先生
私たち人間には、多い少ない個人差はありますが、脂肪がついていますよね。それは体を守るためでもあり、脂肪がついていることによってある程度暑さ・寒さにも耐えられるんです。
この脂肪が、いわゆる“断熱”の役割ということです。また、ペットボトルの冷たい水や温かいお茶は、そのまま放置しておけば、ぬるくなってしまいます。でも魔法瓶に移すことで、冷たいまま、温かいまま保つことができます。
VINICE
ようは、熱を伝わりにくくするとか、熱が逃げるのを防ぐということですね。
佐々木先生
はい。建物内の温度が、外気によって左右されるのを防ぐために、建物の断熱が必要なんです。
VINICE
断熱というとどうしても寒い時期に室内を温かく保つために大切というイメージがあるのですが、暑さに対しても重要なことなんですね。
佐々木先生
最近は地球温暖化の問題もあり、夏の暑さも厳しいものになってきていますし、そのためエアコンの使用が増え、それがヒートアイランド現象を引き起こす原因にもなっています。ですから、これからの建物の基本性能である断熱についてもしっかり取り組まなければいけないと思います。
VINICE
断熱にも、内断熱と外断熱と2つの工法があると思いますが、その違いは何でしょうか?
佐々木先生
簡単に言うと、断熱の位置が違います。
鉄筋コンクリート造のマンションで考えると、コンクリートの内側、つまり部屋側に断熱材を貼るのが内断熱、コンクリートの外側に貼るのが外断熱です。
内断熱工法 | 外断熱工法 |
VINICE
外断熱は、建物をすっぽり覆ってしまう、つまり洋服をきるような感覚ですね。
佐々木先生
そうですね。内断熱ですとこの図をみてもわかるように、どうしても断熱材でおおいきれない部分がでてきます。この部分から熱が伝わったり、熱が逃げていってしまったりします。その点外側を覆ってしまう外断熱であれば、断熱の効率もよいわけです。
VINICE
なるほど。コンクリートが熱を伝えてしまうということですか?
佐々木先生
コンクリートは、一旦温まるとなかなかさめにくく、反対に冷えてしまうとなかなか温まりにくいという性質をもっています。
ですから夏の日中、日差しを浴びるコンクリートの温度は50度以上まであがり、それが夜になってもなかなか温度が下がりません。逆に冬の寒い時は外気が10度ならそこまで下がってしまい、なかなか温まりにくくなります。
内断熱の場合、コンクリートは常に外部の気温と同じように変化しているということです。逆に外断熱の場合は、コンクリートの外部側に断熱材がありますので、コンクリートは外部の温度に左右されず、室内の温度と近くなるということです。
VINICE
私たちが冬寒いとダウンジャケットを着たり、夏は日射を防ぐため長袖のシャツや帽子をかぶるのと同じで、建物に服を着せるのが外断熱ということですね。
VINICE
外断熱工法にも、湿式工法と乾式工法という2つの方法がありますが、その違いはなんでしょうか?
佐々木先生
湿式工法と乾式工法は使う部材と断熱材の貼り方が違います。
湿式工法は断熱材を外壁であるコンクリートに直接貼り付けます。
乾式工法は、コンクリートに金物を取り付け、そこに断熱材を取り付けていきます。
◆湿式工法◆ |
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◆乾式工法◆ ナイスパークフィールド旭丘 |
VINICE
見た目で何か違いはあるんですか?
佐々木先生
湿式は、塗り壁や吹き付けをイメージしていただければいいかと思います。乾式はパネルで取り付けていますので、仕上げもタイルをはることができます。ただそのぶん、当然乾式の場合厚みが大きくなります。
VINICE
マンションの場合、外壁はタイル貼りが多いですが、湿式工法ではタイルは貼れないんですね。
佐々木先生
そうですね。でも逆に湿式工法の場合色の種類が多く、また自由にデザインもできるというメリットもあります。
VINICE
アルシア大森は、3種類のカラーでデザインされていました。
アルシア大森(湿式工法)
佐々木先生
アルシア大森は、ブラウン系のシックな色合いでしたが、ドイツの建物には、とてもカラフルな物が多いです。湿式工法では、現在800色くらいのカラーバリエーションがあります。
VINICE
そんなに、カラーの種類があるのですか!
ドイツでは外断熱工法が主流なのですか?
佐々木先生
日本では、まだまだ外断熱は普及していないのが現状ですが、ドイツをはじめ欧米では外断熱工法が主流です。1970年代のオイルショック以降国をあげて取り組み、研究していました。その後建てられた建物は100%外断熱を採用しているといっていいほどです。ドイツや北欧ではもう外断熱が常識となっています。
私たちSTO社もドイツが本社です。
VINICE
それでは、次回は外断熱の歴史やドイツでの外断熱事情についてお伺いしたいと思います。