小島 稔氏
学生時代に、愛用のカメラで各地のさまざまな風景を撮影したくて、自転車で大阪から東京間を旅したことがあるほどのカメラ愛好家。
フィルムの種類
VINICE
こんにちは。
このカメラ、ヴィニーチェクラブのスタッフが20年くらい前に購入したカメラです。しばらく使うことがなかったので、使い方を教えていただいて、改めて素適な写真を撮れるようになりたい!と思っているんですね。
そこで、コレをきっかけに、取り扱い説明書に書いてあることより、それ以前の段階になりますが・・・カメラ初級者対象で教えていただけますか?
普段はカメラまかせで撮影していまして、機能をほとんど知らない素人なので、的外れな質問をすると思いますが、どうぞよろしくお願いします。
小島先生
はい。
カメラには、色々な種類がありますが、これは35mmフィルムを使用する一眼レフカメラですね。恐らく1980年代のカメラですね。今こうしてみると、実にしっかり作られていますよね。
ちなみにこちらにあるカメラは、もう少し大きなフィルムを使用する中判カメラです。ちょうど普通の一眼レフカメラを、ひとまわり大きくしたようなカメラです。
その分、重く大きくなっています。
VINICE
フィルムにも色々なサイズがあって、大きいものもあるのですね。
小島先生
勿論、通常のカメラでも綺麗に写真を撮ることができますが、大きく伸ばしたいときや、被写体の質感を更に緻密に写したいときなどは、この中判カメラのほうがいいですね。
大きくて重たいのですが・・・。
ちなみにこのカメラの1コマの画面の大きさは、6cm×7cmです。
このサイズは1コマの通常のフィルムの約4倍の面積に相当します。
フィルムの種類
なぜカメラは重たいの?
VINICE
なるほど。カメラによって特性が違うのですね。それなりのメリットが無ければ、大きくて重たいだけのカメラは使いたくないですよね。やはり本格的に写真を撮るとなると、使用目的によってカメラを使い分けする事になるのですか?
1台のカメラのみで万能に、という訳には行かないのですね。
小島先生
はい。更に大きく伸ばしたいときには、大型カメラを使用します。
この分野のカメラは、とても大きく重く、気軽に旅行に持っていくなどの機動性はありませんが、広告業界では今だに大活躍しています。
例えば、おいしそうなビールのポスターや、各種カタログ写真は、大型カメラで撮影されることが多いのです。現在のデジカメでは到底及ばない高画質が得られます。
通常4×5(シノゴ)カメラと呼ばれる物を使います。
シノゴとは、1コマのフィルムの大きさを表しています。単位はインチ(inch)です。つまり、10.2cm×12.7cmということになります。これは、通常のフィルム面積の約13倍の面積に相当します。
VINICE
なるほど。少しでも、綺麗な写真を撮ろうとすれば、情報量の多い中判、大型カメラを使う訳ですね。
しかし、機動性で有利なものとしては、35mmフィルムを使用する、『普通のカメラ』という選択が良いのですね。
小島先生
その通りです。中でも中判カメラは中間的存在で、大型カメラの持つ高画質と機動性をあわせ持つカメラと言えるかも知れません。(そこそこ機動性もあり高画質)
おにぎり! 一眼レフカメラ
小島先生
実はこれ、ここの三角の部分に、プリズムが入っているんです。
何の役割かというと、レンズを覗いたときに、被写体を反射させて正像を写し出すためなんです。
これがないと、左右逆転して見えるんですよ。
VINICE
あー、なるほど。
ところで、無い物もあるのですか?
小島先生
あります。全てのカメラが一眼レフの構造をしている訳ではありません。
大型カメラの場合は、プリズムがついていないから、天地左右が全て逆に見えます。
空が下に見えるんです。最初慣れないときは大変でしたよ。
このように頭に三角のおにぎりをしょっているかというとプリズムがあるからだったんですね。
プリズムをはずすと左右逆に見えてきます。
VINICE
このようなものを、一眼レフというんですか?
小島先生
はい、おにぎりをしょっているのは一眼レフと解釈していいと思います。
レフって?
銀塩カメラ?デジカメ?
小島先生
キャノンのこのカメラは、実にしっかり出来ていますね。
機械カメラ特有の精密感に溢れています。それにマニュアルカメラなので、絞りやシャッター速度を自分の表現意図に応じて、自在にコントロールができます。
それがマニュアルの醍醐味でもあるわけです。
また一眼レフは多彩なレンズ交換も可能なので、様々な画角で撮影が可能です。20ミリの広角レンズから300ミリ以上の望遠レンズの装着が可能です。
VINICE
昨今デジカメとフイルム式カメラの比率が急速に変わってきているそうですね。
それから・・・銀塩カメラってフィルムを使ったカメラのことを言うのですか?
銀塩カメラって?
小島先生
はい。今は、カメラと言うとデジカメを意味していると言っても過言ではないでしょう。
仕上がりのスピードを比較すると銀塩はデジカメに太刀打ちできません。
何しろ撮影した直後に写った写真をモニターで確認する事が可能です。これはデジカメ最大のメリットだと思います。
しかし、その一方で銀塩は大型カメラを中心として広告業界に於いて、まだまだ活躍が続くでしょう。また、旧式の機械式カメラは比較的構造が単純で特殊な電子部品が入っていないので、メンテナンス次第で長年使用する事が可能です。実際、クラシックカメラは現役で充分実用になります。それぞれの長所を生かしながら共存しているのが、まさしく現在のカメラ市場の姿です。
私たちは、幅広い選択肢の中でカメラを選び楽しむ事が出来ます。そういう意味では実に恵まれた時代だと言えます。
VINICE
それぞれのメリット・デメリットを理解して選びたいですね。
小島先生
では、メリットを表にまとめておきますから、見てくださいね。
■フィルム式カメラとデジカメのメリット
◆フィルム写真について
・豊富なグラデーション表現ができる。
・精密描写が可能(中判や大型フィルムは、デジカメでは到底及ばない画質の クオリティがある)
・ポジフィルムは印刷用にすぐ使える
【本体について】
・機械式のタイプのものであれば、電子部品が入っていないため、
メンテナンス次第で永く使用することができる(70年前のカメラでも充分撮影 できる)
・電池要らずのカメラがある。(どんな状況でも撮影可能)
・交換できるレンズが豊富(20世紀の文化遺産を活用できる)
・ボディが金属製で比較的頑丈
・趣味性が高い (約170年もの歴史がある為、世界各国で様々なカメラやレン ズが生産された。時代背景やお国柄が繁栄されていて個性豊かで非常に面 白い)
◆デジタルカメラのメリット
【デジタル画像について】
・画像の加工が容易
・データ間のやりとりが可能、しかもスピーディに行える
・撮影結果をすぐに確認できる
・消去・保存が容易
・接写が得意
・暗いところでの撮影が可能
・カラーバランス(ホワイトバランス)が容易
・蛍光灯などの色カブリも克服できる
・記録媒体がコンパクト
VINICE
次回は、銀塩カメラでもデジカメでも共通で、カメラのしくみがわかる!一歩踏み込んだ内容をお届けします。
部位の解説
VINICE
カメラにはたくさん数字が表示してありますが、実は私それぞれの意味がわからないんですよ。
小島先生
まず、露出はマニュアル露出、オート露出(自動)の2つに分ける事ができます。
いずれも露出は、絞りとシャッター速度の組み合わせによって決められます。
マニュアル露出とは、絞りとシャッター速度を自分で決めて撮影する事です。これこそが、写真撮影の醍醐味ではないかと私は思います。カメラのオート露出もシチュエーションによっては大変便利で快適です。しかし、マニュアルでいろいろ試しながら、(時には失敗しながら)写真を撮ることも大きな楽しみではないかと思います。
失敗があるから喜びも大きいと思います。
VINICE
カメラの自動設定には、焦点をあわせるものしかないと思っていましたが、露出の自動設定があるのですね。実はカメラにとって、『露出』の加減で写真の良し悪しが出てくるわけですね。
慣れるまではオート露出を利用して撮影すれば簡単に撮影できますね・・・。
ところで、それぞれカメラの部位に表示してあります数字の意味を教えていただけますか?
小島先生
表にまとめてみました。
部位解説
①シャッター
このカメラは8秒から2000分の1秒までのシャッターを搭載したカメラという事になります。
表示してある数字1より右は整数
2000・1000・500・250・125・60・30・15・8・4・2・1・2・4・8 秒
B(バルブの意味:シャッターを開放するとき)・A(オートの意味)
②レンズ
このレンズはF値1.4のレンズです。
F値は、焦点距離を絞りの有効口径(実際に光が通過する穴の直径)で割ったものです。
焦点距離が50ミリでレンズの口径が50ミリであれば、F値は1と言うことになります。 (50÷50=1)
・・・理屈っぽくて難しいですね!
③絞り・距離・被写界深度
レンズの外周部には、絞り、距離、被写界深度 (ピントが合う範囲)が数字で示されています。
表示してある数字
1.4・2・2.8・4・5.6・8・11・16・22 A(オートの意味)
④露出補正
露出補正ダイヤル。オート露出設定の露出を変更するためもの。
主にポジフィルム撮影時に使用する。
露出って?
VINICE
『露出』のことですが、ご説明していただけますか?
意味を理解しないと、撮影する際に、露出をどのように意識したらいいのかよくわかりませんものね。
オート露出の場合は、良い撮影ポイントでシャッターが降りるように自動的に制御されて、撮影することができますが、マニュアル操作に変更した場合は、どんなタイミングでシャッターを切ればいいのかわからないので教えてください。
小島先生
フィルムなどの感光材に対して光を与えることを『露出』と言います。
「適正露出」は見た目に近い色や明るさに再現する様に、フイルムに光を与えることをいいます。
表現意図によっては、見た目と違う様に撮影もできます。
マニュアルでは、動きを止めるシャッターとレンズを通過する光の量を調節する絞りを組み合わせて表現意図に応じて自在に露出のコントロールが可能です。下の表はどの組み合わせで撮影しても、フイルムに届く光の量は同じです。
しかし流れる滝の動きを止めたいと思ったら、シャッター速度を1/500や1/1000を選択すれば良いし、滝のしぶきの「動感」・・・動く様子を出したいのであれば、1/15或いは、1/8にして撮影すれば良いわけです。
この場合かなりのスローシャッターになりますので、三脚が必要になりますね。下の表では、9通りの組み合わせを載せましたが、それぞれ全て違う写真になります。また、冬の荘厳なイメージの滝を写したければ、露出(光の量)を少なくして、少し暗めに写します。
また、夏の爽やかな滝のイメージであれば逆に露出(光の量)を多くかけて明るめに撮影します。
このように、マニュアル露出は「見た目に近い露出設定を行うオート」と違い、撮影者の作画意図が反映されます。
「露出」は1つではないのです。数学の答えではありませんので、答えは1つではありません。
イメージの数だけ「露出」があります。
もちろん、誰が見ても「失敗」としか見えない露出も有りますよ。
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同じ分量の光をフィルムに当てるときの
絞りとシャッター速度の関係 |
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絞 り |
シャッター
速度(秒) |
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もし、川の水の流れを
撮影するとしたら・・・ |
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流れる水の動きを止め
その一瞬を撮影したいときに使う |
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F2、8 |
1/250 |
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一般的な組み合わせ |
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F4、0 |
1/125 |
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F5、6 |
1/60 |
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自転車走行くらいの動き
周囲が薄暗くなる夕方など |
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F8、0 |
1/30 |
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水のしぶきの「動感」を出したいときに使う |
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F22、0 |
1/4 |
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絞りって?
絞りとシャッター速度の関係
小島先生
上の表でお分かりの様に基準露出を1点出しておけば、シャッター速度を1段早くした場合、絞りは1段開ければ良いのです。逆に1段絞り込んだ 場合はシャッター速度を1段遅くすれば露出は適正になります。
VINICE
風景を撮影する場合は、絞りが優先ですか?
小島先生
風景は基本的に手前から奥までピントをすべて合わせて撮るのが一般的ですから、絞り優先で撮影することが多いですね。これは、あくまで一般論です。
作画意図が異なれば当然撮り方も違って来ます。
これは参考にしてください。
ASA100のフィルムを使用したとき、
絞りF16、0 シャッタースピード1/250位を使用
この写真は、手前の花壇から奥のホテルまで
全てピントがあっている。
被写界深度が“深い”といいます。
ASA100のフィルムを使用したとき、
絞りF5.6、0 シャッタースピード1/500位を使用
この写真は、手前をぼかして奥の建物にだけ
ピントがあっています。
被写界深度が“浅い”といいます。
VINICE
数字に関しては、少々複雑な気もしますが、カメラのしくみはフィルムに当てる光の量の調節をするための箱なのですね。
レンズの大きさや位置、焦点距離を変化させたり、それによって光の入る窓が大きくなったり小さくなるためにシャッター速度を変え、時間をかけて光を取り入れるなど、そのような動きをしていたのですね。ピンホールカメラの単純な箱で写真が写せる意味がなんとなくわかりました。
小島先生
そうなんです。カメラは単純な構造なんですよ。
column -コラム
◆電池がなくても撮影可能のカメラが理想のカメラ! ◆
デジカメ及び、電子シャッターのカメラの最大の弱点は、電池で露出やシャッターを制御していると言う事です。
通常は良いのですが、山などで温度が一定以上低下すると、電池の電圧が低下します。すると、ICやコンデンサーで制御しているシャッターの速度にムラが出てきます。結果として露出の精度が狂ってきます。最悪はシャッターがきれなくなります。(バッテリーを緩める等の対策が必要)
以前こんな経験がありました。冬山で突然シャッターが切れなくなりました。故障だと諦め、折角の絶景を前に仕方なく撮影を断念しました。ところが、翌日の下山の途中にダメ元でシャッターを押してみると、突然シャッターが切れました。後になって解かったことですが、寒さの為電池の電圧が低下し、シャッターが切れなくなっていたということがわかりました。
それ以来、私のカメラ選びの基準が変わりました。いかなる状況の中でもとりあえずはシャッターを切ることができる機械式カメラを使うようになりました。絶景を前に悔しい思いをしなくても済むように・・・・・。
◆1970年代前半まで生産されたカメラは機械式カメラが多い! ◆
こうして理想とするカメラを探していくと、この年代のカメラに行き当たります。機械式カメラが豊富に生産されていた最後の時代というと1970年代前であることがわかりました。
この時代のカメラは一般的に、『クラシックカメラ』と呼ばれています。日本やヨーロッパをはじめとする世界のカメラは、この頃まで機械式カメラを多く生産していました。電子制御式カメラの多くは製造打ち切りから10年もすると部品がなくなって修理ができなくなります。その点クラシッカメラは、構造が比較的単純で専用電子基盤が無いため、多くの場合修理が可能です。実際中古カメラ店には、1930年~60年代のカメラが販売されています。
レンズの種類
VINICE
Lesson2でレンズの絞りとシャッター速度の関係のお話がありましたが、レンズの見え方について、もう少し詳しく教えていただけますか?
それにこのF1カメラには、もうひとつレンズが用意されています。
どんなふうに使い分ければいいのでしょうか?
小島先生
物を近接撮影するときは中望遠レンズを使うと、目で見た感じに近い自然な感じに写すことができるんですよ。具体的に言うと85ミリから100ミリ程度の焦点距離のレンズです。
例えば、小物を撮影する時などは、この方法を試してみてください。広角レンズで近接撮影した時とは違った印象になります。
※コンパクトデジタルカメラ使用して撮影しました。 |
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広角レンズで撮影
箱の形が歪。頭が大きい。
約24mm |
中間のレンズで撮影。
約50mm
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望遠レンズで撮影。
箱の縦のラインが垂直に見える。
約70mm |
これは人物を撮影する時もまったく同じこと。
85ミリ前後のレンズはポートレイトを撮影する際、昔から良く使われていました。
こんな事実からも中望遠レンズは、被写体をバランス良く写すことができるのです
VINICE
なるほど!中望遠で撮影した写真は確かに実際の形に近いですね。
小島先生
これがレンズの特性なんです。
広角レンズ望遠レンズ
小島先生
広角レンズは広い角度で写りますが、画面は人間の目で見たものより遠近感が誇張されます。
その為、実際目で見ているときよりも、近くの物はより大きく、遠くの物はより小さく写ると言う特性があります。逆に中望遠レンズは、距離感が見た目に近く、パースが比較的出にくいレンズです。
その特徴が、物の形を素直に写し取る特性になっている訳です。
VINICE
私は少し前に、室内を撮影するために広角レンズのデジタルカメラを購入したんですね。
確かに真近なものもレンズに入るので目的は果たせましたが、思いがけない点がありまして。
写真の端に写っているドアが、垂直ではなく歪んでいるんですね。中央に写っている家具を中心に垂直を意識して撮影すると、サイドがどうしても斜めに写るんですね。
小島先生
先ほどの箱の写真と同じことです。
35ミリカメラで使用する、50ミリのレンズは“標準のレンズ”と呼ばれています。
この「標準」とは、一点を目で見たとき標準レンズは人間の目視野に最も近く、遠近感が似ていると言われています。この「標準」という呼び方は、ドイツのライカ社が決めたといわれています。
(ライカは35ミリカメラの元祖)
焦点距離35ミリが準広角レンズ、28ミリは広角レンズ、20ミリは超広角レンズとなります。
望遠系にいくと、焦点距離85ミリ、100ミリは中望遠、200ミリ、300ミリは望遠レンズということになります。それ以上は超望遠レンズということになります。
望遠レンズは長く、重くなりますので、手ぶれを起こさないようにシャッター速度を注意して撮影してください。目安としては、焦点距離分の1以上のシャッター速度になるようにすると、手ぶれはしにくいと思います。
例えば、100ミリのレンズを使用するのであれば、125分の1以上のシャッター速度、200ミリのレンズを使用するのであれば250分の1以上のシャッター速度が目安になります。
それぞれのレンズの個性を知って撮影していると作画に生きてきますよね。
レンズを選ぶところから撮影の楽しみは、始まっていると言うことです。
VINICE
そうですね。レンズの見え方の違いも知っておくと使い分けができそうですね。
小島先生
特に35ミリの一眼レフは、広角レンズから望遠レンズまで多彩なレンズ交換ができますので、色々な写真を撮影する事ができますよ。
左の写真は、交換用レンズです。
撮影するものに応じてカメラに取付けます。
名称の“28mm”とは、焦点距離が28mmで
あることを示します。
28mm55mm200mm300mm
右の写真は、24mm~70mmまでの
ズームレンズです。
上記レンズのように撮影に応じて都度交換
しなくても、1つのレンズで焦点距離を変更
することができます。
これらの写真は90mmレンズを
取り付けして撮影しています。
手作りミニスタジオ
VINICE
ところで、ホームページ用に小物を撮影することがあるのですが、写真を撮るのにふさわしい良い場所がないんですよね。今回の先生の写真はものすごく綺麗に品物が写っていますがどのようにして撮影しているのですか?
小物をネットオークションに出したりするには、少しでも綺麗に撮って、高く売りたいと思っている方もいるかも知れませんから。。。
小島先生
私が良く使う方法をご紹介致しましょう。
それは、お金がかからず、時間要らずのいい事づくめ。
それは窓の近くで光がよく入って、白い紙が2枚あれば誰でも作る事ができます。
カレンダーの裏面など白い紙を2枚使用します
自然光で影が出ないように撮影することが基本です。
ネットオークションはまさに「見た目が9割!」な訳ですから、オークションの写真はとても重要ですよね。これなら少しは高そうに見えますよ!(笑)
VINICE
このミニスタジオ、どなたでも簡単に作れそうですね。
小島先生
自然光で撮影すると比較的綺麗に撮影できます。ストロボを使う方法もありますが、強い影が出たり、テカリが出て質感を出すのが難しいのです。
上記のレンズを撮影したカメラの写真は、質感が飛ばない程度に自然光で多少露出を多めにして撮影しています。実際、このカメラは傷だらけですが、適当に傷がカモフラージュされてむしろ実物より綺麗に写っています。
VINICE
これで、カメラの仕組みも大体わかってきました。聞いているとクラシックカメラの魅力もわかってきますね。
我が家で眠っているフィルム式カメラもいじってみたくなりました。コンパクトカメラですけど・・・・。
では、次回からは実践編をお願いします。
フィルム式カメラでもデジタルカメラでも、両方に共通した撮影テクニックを具体的に教えてください。
小島先生
はい。
column -コラム
◆クラシックカメラは個性的でしかも性能も悪くない!◆
実用性やメンテナンスを含めて選択すると、1940年代から1960年代のカメラが比較的使いやすいと思います。この時代に多くのカメラを生産していたドイツ製が選択肢になってきます。
「耐久性」「操作性」「基本性能」はこの時代に既に完成されており、カメラの進歩とは自動化と高速化、そして軽量化の歴史だったのかな?っと思ってしまいます。
また、この頃のカメラには生産されたお国柄や、メーカーの威信を掛けた意欲作があります。また素材もふんだんに使って作られており、仕上げも良く工芸品のような趣を持つものも少なくありません。使い捨てカメラが販売されている現在とは違い「カメラがカメラ以上の存在感を持っていた時代」に製造されたものはやはり存在感がとてもあり、クラシックカメラの魅力の一つになっています。(実際1920年代ドイツのライカというカメラは日本でとても高価で、ライカ1台の値段は家1軒に相当するとも言われていたそうです。)
更に、現在もフィルムは進化しており昔のレンズでもしっかりとした写真を撮ることが充分に可能です。逆に、コントラストが高めの昨今のポジフィルムと、コントラストの比較的低い昔のレンズが上手く中和して程良い仕上がりになる程です。これは「思わぬ拾いもの!」というのが実感でした。
以前に1950年代のスピードグラフィックという大判カメラで撮影したことがありました。
レンズも50年代のレンズでした。内心どんな色調に上がるか心配でした。しかし思いのほか結果はまずまずでした。カラーバランスも諧調も悪くありませんでした。この時ばかりこれは半世紀前のカメラを少し見直しました。
「ローマの休日」に出てくる半世紀前のカメラ
スピードグラフィック
Let's take a picture!
VINICE
カメラの機能や特徴がわかってきたところで、いよいよ実践編ですね。光の調節や、レンズによる見え方の特徴がなんとなくわかってきました。今度は撮影対象物をどのようにして撮影したら良いか教えていただけますか? ファインダーを覗いて見える、撮影対象物の画面構成とでもいうのでしょうか・・・・。何か注意点などありますか?
小島先生
まず、撮りたいものを撮って下さい。「景色」「友達」「街」「旅先」何でも良いです。時間帯も「朝」「昼」「夕方」「夜」それぞれ自分の好きな時間に撮ってみてください。撮るとき自分が気に入ったものが、思い通りに写っていたらバッチリですよね。 しかしこれがなかなか難しいものなのです。写真の上達とは、自分で思ったイメージ通りに撮れることだと思います
VINICE
イメージ通り?撮りたいものがどんなふうにして写真に映し出せるか?それをイメージするのは難しそうですね。
普段使っているコンパクトカメラは、露出やピントあわせなど調整するのは、ほとんどがカメラまかせですからね・・・・。できあがった写真を見て後悔することあるんですが、どうしたらいいのでしょう?
小島先生
例えば、初めは失敗しても、それが写真の楽しみであり、上達して行く上でのプロセスだと思います。「失敗は成功の近道」。これこそが写真の極意ではないかと思います。プロなら失敗は許されませんが、私たちは、楽しく写真と付き合って行けばいいのです。 何よりも自分で楽しむ事が大切ですね。写真を趣味とする事は「撮る」「見せる」「贈る」3つの楽しみを持つ事になります。何だか、ワクワクしますね!
VINICE
先生は本当に楽しそうですね。 自分で何が失敗したか考えて次回に生かすようにすればいいわけですね。では、少し具体的に教えていただけますか?
身近な花を撮影する
VINICE
最近のポストカードには、花がテーマになって写っているものも多いですよね。自分でも上手に撮影してポストカードにしてみたいのですが、プロのように花を綺麗に撮影することは可能ですか?
小島先生
花は身近な被写体です。街を歩いていても至る所に花は有ります。
散歩をしていても、洒落た庭があったり、店舗の前にきれいに飾られた花も多く見つけることが出来ます。 花の撮り方も色々で「クローズアップ」や「フラワーアレンジメント」の花を撮ったり、「生け花」を撮ったり実に多彩です。身近かな被写体としては種類も豊富でなかなか面白いと思います。
■写真一例
image photoPhoto:Minoru KojimaPhoto:Minoru Kojima
VINICE
花をアップに写すと、背景がぼやけて引き立ちますね。どうやったらこのように写せますか?
小島先生
上の写真はどちらも、広角レンズ28ミリを使用しています。手前の花にピントを合わせて写しています。被写界深度が浅くて、テーマのもののみピントが合うから際立ちます。
■写真一例
image photoimage photo
VINICE
コンパクトカメラの場合は、こんな風に写すことは難しそうですけど。
小島先生
ズーム(望遠)レンズを使って写すと比較的これに近い形で撮影できますよ。
風景撮影
VINICE
街並みを撮影するのは面白いですか?
■写真一例
焦点距離80ミリ焦点距離50ミリ
Photo:Minoru Kojima
構図はどちらがいいか?
赤い橋を中心に、そびえたつ近代的な建物の背景と、趣のある町並みを撮影する場合。
建物を大きく撮影する写真と、川に写りこむ建物の姿を含めて撮影する写真ではどちらが好み?
小島先生
写真は、時代背景も見えて面白いですよ。前から撮影している街の写真を眺めると、広告やウインドーディスプレーの流行が写っていて、時代が見えてくるんですよ。上の写真は、建物によって過去と現代の時代風景を表現していて面白いので撮影してみました。 焦点距離80ミリと50ミリのレンズを使って撮影しましたが、どちらの写真が好きですか?表現したいものを撮影すればいいのです。
VINICE
建物がクローズアップしていると建物に迫力がありますね。
右は川に写りこんでいる建物が面白いです。
小島先生
何を撮りたいかそれが大事です。
ここに海の写真があります。水平線を境界に、何を撮りたいのか?メインは何か?わかる方がいいですね。中央のような画面を真二つに分けるより、どちらかが多いほうがテーマが見えてきて良いと思います。 中央の写真の場合は、水平線がテーマですけどね。
■写真一例image photo 海がテーマimage photo 水平線がテーマimage photo 空がテーマ
VINICE
先ほどの街並みの写真も、同じ風景でも出来上がる写真の構図によって、テーマが違って見えてきます。これが、画面からはみ出たりするとがっかりするので、せめて構図だけでもファインダーを覗いたときはきちんと被写体が見える範囲に入っているかの確認を忘れないようにしないといけませんね。
夜景撮影
VINICE
夜景を撮影するときは、どうですか?
小島先生
「長時間露光」になるとフイルムの現像が上がってくるまでは、仕上がりのイメージが掴めません。そこが「夜景撮影」の面白いところです。ある程度は露出計で読めますが、「長時間露光」や、「多重露光」は経験や試行錯誤によって自分のデータが生まれていきます。
また、夜景視覚と違い蓄積された光を感光させる訳ですから、時々予想もつかない偶然やドラマが写っていたりもします。また最初は勘ピュータでも、少しずつ露出の精度が上がって的確な露光時間が掴める様になります。「光源の明るさ」「距離」「絞り」「シャッターを開ける時間」の4つのバランスで露光を決定します。 最初はラチチュードの広い通常のフイルムで撮影してみてください。
あと、注意してほしいのは、手ぶれですね。軽いカメラはとくに手ぶれがしやすいので注意が必要です。カメラをしっかり動かないように構えて、息を止めてシャッターを切ると揺れにくいですね。三脚を利用するとぶれることがないと思います。 また、フィルムは高感度のもの(ASA400~800)を使うといいですね。
■写真一例
Photo: Minoru Kojima image photo
長時間露光って何?
多重露光って何?
ラチチュードって何?
column -コラム
◆「クラシックカメラでの撮影は全て自己責任。だから面白い!」◆
クラシックカメラの撮影は全て自己責任です。クラシックカメラは何もしてくれません。カメラの操作を間違えれば、結果はそれなりです。現在カメラは自動化しています。(1枚撮影が終了すれば、直ぐに巻き上げられます。それによってフィルム消費に拍車を掛け、フィルムメーカーは、販売実績を伸ばしたとも言われています)
・フイルムの装填
・フィルムの感度設定
・シャッター速度の決定
・絞りの決定
・ピント合わせ
・巻き上げ
・巻き戻し
・ストロボの発光
・モータードライブによる連続撮影も可能
いつの間にか、カメラは自動化と共にこれだけの仕事を引き受けていました。またカメラの自動化と電子化は連続撮影や、動く被写体も捉える事ができる様に成りました。自動化によって今やシャッターボタンは、スイッチと化しオートにしておけば一応は誰がシャッターを押しても写る様になりました。こんな便利なカメラは無いと言うレベルまで技術は進歩しました。今現在も更に、オートフォーカスのスピードを高速化したり、連続撮影の小間数を上げています。しかし、皮肉にも多機能化によって失った機能もあります。自動化と高速化と共にその代償として、大量のバッテリーを搭載する事を余儀なくされました。その結果、35ミリカメラは大きく重くなりました。本来、機動性を生かして撮影するのが35ミリカメラの良さでしたが、思惑から離れてしまいました。 クラシックカメラには、そんなハイテク機能とは無縁ですが、全て自分で決定した操作で撮影した結果が、傑作を生んだ時の喜びは格別です。
■次回は、撮影テクニックPART2をお届けします。■
記念撮影
VINICE
人物を撮影するときの注意点を教えていただけますか?
小島先生
記念撮影などで、何人か集まって撮影するときは声をかけてから撮影するようにしてください。
大概だれかが目をつぶってしまい、中途半端な写真になるケースがありますからね。
VINICE
ありますよね。なぜか目が半開きになってしまう人がいたりしますね。
小島先生
せっかくの記念撮影ですから、失敗しないためには声をかけること。
それから、念のために1枚だけでなく何枚かとるようにしたほうがいいですね。
人物ポートレート
小島先生
また、屋外で人物を撮影するとき、注意したいのが光の当たり方です。
逆光にならないように、太陽が人物を明るく照らすようにしてください。
VINICE
逆光だと人物がシルエットになってしまいますからね。
小島先生
あまり光が強く当たってまぶしい時は、場所を少し変えた方がよい時もあります。
カメラマンの後ろに太陽があるよりは、横から照らすくらいがいいと思います。
構図
VINICE
では、構図にはどんなこと注意したらいいですか?
小島先生
観光地で人物の背景に建物など一緒に写そうとするときによくある光景ですが、写される人がどこに立つかがポイントですね。
カメラマンよりも遠く離れたところに立ち、全身が写るようにして撮影すると、人物と建物の大きさが比較できるでしょう。
でも、記念撮影でしたらカメラマンの近くで上半身だけ写し、背後に建物を入れて撮影すれば人物の表情がはっきり見えていい思い出になりますね。イメージイラスト
建物の近くで全身を写すと人物の顔の表情は見えにくいイメージイラスト
カメラの近くに立つと、建物風景と人物の表情がよく見えてインパクトが出る【花と建物】photo by HARADA
これは、建物を背景に花を撮影。インパクトが出る。
VINICE
硬く考えず、人それぞれ撮影を楽しめばいいですね。
カメラを楽しもう
VINICE
現在は、銀塩カメラの市場は、『中古』市場なんていわれています。
新しく発売されるのはデジタルカメラばかりなのに、銀塩の話題が多かった今回のネットセミナーは時代遅れではないか?と思った方もいたかもしれません。
でもカメラの元祖を知って、現在のカメラを知るいいきっかけになったらと思っています。
私は、銀塩カメラの面白さを知り、これにこだわる人が多くいることが理解できました!
一方、一眼レフデジタルカメラは、今までにはない家電メーカーからも品が揃い、価格も手の届く身近なものとなり人気上昇中ですね。
どんなカメラでもいいから、上手に活用して、素適な時の記録を残してほしいですね。
小島先生
今回は、撮影することを第一として皆さんにお届けしました。
また多くの写真を撮ることで、失敗や疑問の壁にぶつかることもあると思います。
写真に関する本はいっぱい出ていますので、自分の興味のある項目を探してみるのもよいかもしれませんね。
VINICE
先生どうもありがとうございました。
column -コラム
◆「何故、今クラシックカメラブームなのか?ブームの背景にあるもの」◆
今、クラシックカメラブームだと言います。多くの雑誌でクラシックカメラの象徴であるドイツ製カメラを特集しています。この背景には、行き過ぎたハイテクカメラに対する反動なのでしょうか?
「性能至上主義」や「効率至上主義」から脱却したカメラがまさしく「クラシックカメラ」だと思います。
物としての作りが良い事や、巻き上げなどの操作感が良い事などが人気のある理由のようです。
直接性能には関係無い部分が選択基準になっているようです。
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<スピードグラフィックス>
カメラは時として、映画の主人公の脇役を演じ、効果的な時代考証の1つの「道具」となって登場することがあります。
「スピードグラフィックス」もそんな時代を象徴するカメラの1台です。
「スピードグラフィックス」は名画「ローマの休日」に出てきます。
ローマの休日は1953年公開だから、スピグラがジャーナリズムの最先端で活躍していた絶頂期です。現在では大きく重たい機動性の無いカメラと言う印象がありますが、当時、アメリカで報道用カメラと言えば「スピグラ」といわれた時代です。
そんなエピソードも「スピグラ」にはあります。当時の報道カメラマンはこのカメラとともに朝から晩まで仕事をしていました。
映画の中でも記者がスピグラで素早くヘップバーンをスナップする場面がありますが、なかなか「粋」です。 |
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<ローライフレックス2.8F>
このカメラは1960年に西ドイツで生産された「ローライフレックス2.8F」と言うカメラです。二眼レフといってレンズが縦に2個付いている変わったカメラです。当時このカメラは報道機関の人を中心に使われていました。このタイプは、昔日本でも大流行し、多くの国産メーカーが生産していました。しかし、今ではすっかり現役を退いたクラシックカメラです。現代のカメラに比べると速写性は劣りますが、のんびり散歩をしながら撮影する時などに使っています。最新のカメラと違って、すべてがマニュアル式です。これは15年程前に中古で安く買った物で、何もメンテナンスをしていませんが今のところ元気に動いています。クラシックカメラは使用する事がなによりのメンテになります。
機械式カメラは常に動かしていた方がかえって調子が良い様です。 |
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<ライカⅢa>
これも、恥ずかしながら中古で安く買ったガラクタカメラです。1935年に西ドイツで生産された「ライカ」と言うカメラです。
現在のカメラと比較するとかなり小型です。手の中にすっぽり納まります。そして機械式カメラ独特の小気味良い操作感が魅力です。生産から70年以上経った現在も快調に動いているタフなカメラです。ライカは昔から多くの写真家に愛用されてきました。
かの写真家「ロバート・キャパ」もライカを愛用していた1人です。
私のライカも多くの歴史を記録して来た「歴史の証人」かも知れません。そう思うとガラクタと呼んでは失礼かな? |
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