正しいケアで健康的なお口を目指す

食べ物を食べたり、唾液を出す役割の「お口」は全身との関わりが大きいのをご存知ですか?
お口の健康状態によって体に様々な影響を及ぼすため、正しいお口のケアが大切です。
そこで、口腔ケア商品を扱うファイン株式会社の4代目女性社長の清水さんに
健康的なお口を目指すための正しい口腔ケアについて教えていただきます。

■Lesson1 お口のケアの重要性

■Lesson1 お口のケアの重要性

講師プロフィール:清水 直子氏

1967年、東京都生まれ。88年東洋女子短大(現・東洋学園大学)卒業後、貿易会社に入社。90年ファインに入社し、94年同社取締役。
2006年取締役副社長、10年代表取締役に就任。
「ガイアの夜明け」「にじいろジーン」にも出演。

ファイン株式会社:http://www.fine-revolution.co.jp/

虫歯と歯周病

VINICE
創業66年の歯ブラシと介護用品メーカーファイン株式会社の
4代目女性社長でいらっしゃる清水さんに
正しいお口のケアについてうかがいたいと思います。


清水様
早速ですが、お口は身体の入口であり、全身との関わりがとても強い場所です。口の中の細菌によって虫歯や歯周病を発症するだけではなく、他の病気も引き起こしてしまう、と最近言われています。歯周病は歯の周りだけに影響があると思われがちですが、実は全身への影響が多くあります。そして歯周病を持っている成人は8割と言われるほど日本の国民病です。


VINICE
そんなに多いんですね。
私たち日本人は歯周病が国民病だという認識はありませんが・・・。


清水様
外国の方が日本に到着すると、味噌の匂いではなく、
歯周病の匂いがする、と言うほど、実は日本人には歯周病の軽度の人から重度の人までいます。日本人は海外に比べて歯に執着している人が少なく、歯並びに対しても神経質ではない人が多いようです。アメリカは歯並びをきれいにしておかないとビジネスマンとして認められない、と言われるほどで、小さい頃から矯正をするのが常識なくらいです。日本人の場合は、歯並びがよっぽどひどくなければ矯正しない人がほとんどですね。


VINICE
日本と海外では歯に対する考え方が全然違いますね。


清水様
そうですね、日本人は歯並びがきれいじゃない人が多いため、歯磨きが難しいです。そして、虫歯と歯周病では、歯の磨き方も異なります。


VINICE
虫歯と歯周病の違いがわからないのですが、どう違うのですか?


清水様
虫歯とは、歯の表面で繁殖した細菌や、糖による酸で歯が溶ける病気です。酸が歯を侵食するため、歯が欠けていくのが虫歯です。歯周病は歯の中の骨を溶かす病気で、歯茎に炎症が起こる病気です。歯は、歯肉や神経、骨などで支えられていて、固定されているものではないため、骨と歯茎が衰えれば、グラグラして抜けてしまいます。虫歯の場合は歯の表面をしっかり磨かなければなりませんが、歯周病は、歯と歯茎の境目の溝である歯周ポケットにブラシを入れて汚れをかき出さないと、歯周病菌が奥へ奥へと入っていってしまいます。歯周病菌は空気に触れると死んでしまうので、空気がない場所で繁殖します。そして、歯周病は最悪の場合、菌が血管の動脈や静脈に入り込んで、やがては脳まで行ってしまうこともあるのです。

VINICE
虫歯も怖いですが、歯周病はもっと怖いですね。口の中だけの問題ではなく、脳にまで影響があるとは。よく歯科医でフロスや歯間ブラシを使うことを勧められますが、その理由がわかりました。


清水様
歯ブラシだと届かない場所なので、歯間ブラシやフロスも使ってお掃除をしなければならないのです。特に歳をとると歯茎が下がり歯と歯茎に隙間ができ、食べ物が詰まりやすくなります。そうなると歯間ブラシやフロスを使わないと詰まったモノをとるのは難しいですね。歯と歯の間や、歯と歯茎の際はとても汚れがたまりやすい場所なので、そこから菌が繁殖していきます。ですから、正しく歯磨きをするためには、自分の歯磨きの癖を知らないといけません。染めだし液を使って磨けていない場所を知ることはとても大切で、これを定期的にやらないと案外自分の癖はわからないものです。


VINICE
以前、歯科医で染め出し液をつけ歯ブラシしたことがありますが、想像以上に磨けていなくて驚きました。


清水様
そうですね、やってみないと癖はわからないですよね。また、電動歯ブラシを使っているからと安心しているのは危険です。歯ブラシがしっかり歯にあたっているのかどうかが重要です。また、電動歯ブラシは毎日とか頻繁に使うと強すぎて口の中を傷つけてしまうこともあります。歯の素材はエナメル質で、人間の体の中で一番固いですが、歯茎の粘膜は皮膚よりも柔らかい部分ですので、粘膜にずっと電動歯ブラシをあて続けたら歯茎が傷みますし、象牙質が削れると知覚過敏になることもありますので注意が必要です。


VINICE
電動歯ブラシは細かい動きをするのでよく磨けてそうな気がしますが、歯の当て方や使い方に注意が必要ですね。


清水様
プロの方に定期的にみてもらわなければ歯をキレイに保つのは難しいものです。歯ブラシの仕方は歯科衛生士にアドバイスしてもらうことをおすすめします。また、歯科医にかかるときは、先生の方針を確認することが大切です。歯周病専門の方とインプラント専門の方では治療方法が変わってきます。歯周病が進行したからインプラントにしようと思っても歯茎が痩せてインプラントが入れられないということもあります。インプラントの先生は歯周病が進んでいないうちにインプラントを入れましょう、という考え方ですが、歯周病専門の先生は、自分の歯はできるだけ残しましょう、という考えの方が多いように思います。ですから、治療方法も変わってきます。


VINICE
なるほど。歯科医にかかるときはどんな方針なのかをしっかり確認することが大切なんですね。

お口の状態が与える全身への影響

VINICE
ところで、虫歯や歯周病になるとどんな影響がありますか。


清水様
甘いモノばかり食べたり、口の中が不衛生であったり、喫煙するなどして生活習慣が乱れていると、虫歯や歯周病になる確率が高くなります。虫歯や歯周病になると、歯がなくなったり、咀嚼力が低下するため、それにより生活習慣病や心疾患、脳血管疾患、糖尿病、癌を引き起こすことがあります。
子供の歯がなんでこんな方向から生えてきたんだろう、というお母さんがいますが、生活習慣病によって歯が生えてくる順番や歯並びが変わってくることもあります。子供がお母さんのお腹にいたときに成長ホルモンが狂ってしまうと、本来生えるべきスペースに歯が生えたとしても歯並びが悪かったり、生えるスペースがなかったり、ということになるようです。さらに歯並びが悪いと磨きにくいため、虫歯になりやすくなってしまうのです。


VINICE
母親の生活習慣が乱れると、子供の歯にも影響があるとは怖いですね。


清水様
そして、歯周病菌は血管を通るため、心疾患や脳血管疾患、糖尿病とも密接な関係があると言われています。糖尿病の薬を飲んでも歯周病の治療をしなければどちらも治らない、ということもあります。また、認知症や誤嚥性肺炎にも関係があります。口は脳に近いですし、口の中に入った刺激は脳の刺激にもなるのです。認知症の方をみると、歯がない方が多かったり、義歯を入れていても合っていない方が多くみられます。逆に、認知症になりにくい人は、歯が全部揃っている方や義歯だとしてもちゃんと合っている方が多いですね。


VINICE
認知症と歯に関わりがあるとは思ってもみなかったですね。


清水様
また、歯周病がなくなりきらないと
腸がキレイにならないなど、
腸にも関係あったり、妊婦さんの場合は
早産にもなりやすいそうです。
女性特有の歯周病菌があり、
妊娠期にその歯周病菌ができてくる、
とも言われています。


VINICE
妊娠期に歯の治療を勧めるのをよく耳にしていましたが、
そういった理由なのですね。


清水様
その他に肥満やリウマチ、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という手や足の裏に湿疹がでる病気にも関係があるようです。
不定愁訴(ふていしゅうそ)、いわゆるめまいや噛み合わせにも関係してきます。


VINICE
ここまで多くの影響があると聞くと、いかに歯周病が怖い病気か思い知らされますね。歯を大切に!とよく言いますが、しっかりケアして大切にしなければなりませんね。

正しいケアで健康的なお口を目指す
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