講師プロフィール:清水 直子氏
1967年、東京都生まれ。88年東洋女子短大(現・東洋学園大学)卒業後、貿易会社に入社。90年ファインに入社し、94年同社取締役。
2006年取締役副社長、10年代表取締役に就任。
「ガイアの夜明け」「にじいろジーン」にも出演。
ファイン株式会社:http://www.fine-revolution.co.jp/
虫歯と歯周病
VINICE
創業66年の歯ブラシと介護用品メーカーファイン株式会社の
4代目女性社長でいらっしゃる清水さんに
正しいお口のケアについてうかがいたいと思います。
清水様
早速ですが、お口は身体の入口であり、全身との関わりがとても強い場所です。口の中の細菌によって虫歯や歯周病を発症するだけではなく、他の病気も引き起こしてしまう、と最近言われています。歯周病は歯の周りだけに影響があると思われがちですが、実は全身への影響が多くあります。そして歯周病を持っている成人は8割と言われるほど日本の国民病です。
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VINICE
そんなに多いんですね。
私たち日本人は歯周病が国民病だという認識はありませんが・・・。
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清水様
外国の方が日本に到着すると、味噌の匂いではなく、
歯周病の匂いがする、と言うほど、実は日本人には歯周病の軽度の人から重度の人までいます。日本人は海外に比べて歯に執着している人が少なく、歯並びに対しても神経質ではない人が多いようです。アメリカは歯並びをきれいにしておかないとビジネスマンとして認められない、と言われるほどで、小さい頃から矯正をするのが常識なくらいです。日本人の場合は、歯並びがよっぽどひどくなければ矯正しない人がほとんどですね。
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VINICE
日本と海外では歯に対する考え方が全然違いますね。
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清水様
そうですね、日本人は歯並びがきれいじゃない人が多いため、歯磨きが難しいです。そして、虫歯と歯周病では、歯の磨き方も異なります。
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VINICE
虫歯と歯周病の違いがわからないのですが、どう違うのですか?
- 清水様
- 虫歯とは、歯の表面で繁殖した細菌や、糖による酸で歯が溶ける病気です。酸が歯を侵食するため、歯が欠けていくのが虫歯です。歯周病は歯の中の骨を溶かす病気で、歯茎に炎症が起こる病気です。歯は、歯肉や神経、骨などで支えられていて、固定されているものではないため、骨と歯茎が衰えれば、グラグラして抜けてしまいます。虫歯の場合は歯の表面をしっかり磨かなければなりませんが、歯周病は、歯と歯茎の境目の溝である歯周ポケットにブラシを入れて汚れをかき出さないと、歯周病菌が奥へ奥へと入っていってしまいます。歯周病菌は空気に触れると死んでしまうので、空気がない場所で繁殖します。そして、歯周病は最悪の場合、菌が血管の動脈や静脈に入り込んで、やがては脳まで行ってしまうこともあるのです。
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VINICE
虫歯も怖いですが、歯周病はもっと怖いですね。口の中だけの問題ではなく、脳にまで影響があるとは。よく歯科医でフロスや歯間ブラシを使うことを勧められますが、その理由がわかりました。
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清水様
歯ブラシだと届かない場所なので、歯間ブラシやフロスも使ってお掃除をしなければならないのです。特に歳をとると歯茎が下がり歯と歯茎に隙間ができ、食べ物が詰まりやすくなります。そうなると歯間ブラシやフロスを使わないと詰まったモノをとるのは難しいですね。歯と歯の間や、歯と歯茎の際はとても汚れがたまりやすい場所なので、そこから菌が繁殖していきます。ですから、正しく歯磨きをするためには、自分の歯磨きの癖を知らないといけません。染めだし液を使って磨けていない場所を知ることはとても大切で、これを定期的にやらないと案外自分の癖はわからないものです。
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VINICE
以前、歯科医で染め出し液をつけ歯ブラシしたことがありますが、想像以上に磨けていなくて驚きました。
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清水様
そうですね、やってみないと癖はわからないですよね。また、電動歯ブラシを使っているからと安心しているのは危険です。歯ブラシがしっかり歯にあたっているのかどうかが重要です。また、電動歯ブラシは毎日とか頻繁に使うと強すぎて口の中を傷つけてしまうこともあります。歯の素材はエナメル質で、人間の体の中で一番固いですが、歯茎の粘膜は皮膚よりも柔らかい部分ですので、粘膜にずっと電動歯ブラシをあて続けたら歯茎が傷みますし、象牙質が削れると知覚過敏になることもありますので注意が必要です。
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VINICE
電動歯ブラシは細かい動きをするのでよく磨けてそうな気がしますが、歯の当て方や使い方に注意が必要ですね。
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清水様
プロの方に定期的にみてもらわなければ歯をキレイに保つのは難しいものです。歯ブラシの仕方は歯科衛生士にアドバイスしてもらうことをおすすめします。また、歯科医にかかるときは、先生の方針を確認することが大切です。歯周病専門の方とインプラント専門の方では治療方法が変わってきます。歯周病が進行したからインプラントにしようと思っても歯茎が痩せてインプラントが入れられないということもあります。インプラントの先生は歯周病が進んでいないうちにインプラントを入れましょう、という考え方ですが、歯周病専門の先生は、自分の歯はできるだけ残しましょう、という考えの方が多いように思います。ですから、治療方法も変わってきます。
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VINICE
なるほど。歯科医にかかるときはどんな方針なのかをしっかり確認することが大切なんですね。
お口の状態が与える全身への影響
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VINICE
ところで、虫歯や歯周病になるとどんな影響がありますか。
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清水様
甘いモノばかり食べたり、口の中が不衛生であったり、喫煙するなどして生活習慣が乱れていると、虫歯や歯周病になる確率が高くなります。虫歯や歯周病になると、歯がなくなったり、咀嚼力が低下するため、それにより生活習慣病や心疾患、脳血管疾患、糖尿病、癌を引き起こすことがあります。
子供の歯がなんでこんな方向から生えてきたんだろう、というお母さんがいますが、生活習慣病によって歯が生えてくる順番や歯並びが変わってくることもあります。子供がお母さんのお腹にいたときに成長ホルモンが狂ってしまうと、本来生えるべきスペースに歯が生えたとしても歯並びが悪かったり、生えるスペースがなかったり、ということになるようです。さらに歯並びが悪いと磨きにくいため、虫歯になりやすくなってしまうのです。
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VINICE
母親の生活習慣が乱れると、子供の歯にも影響があるとは怖いですね。
清水様
そして、歯周病菌は血管を通るため、心疾患や脳血管疾患、糖尿病とも密接な関係があると言われています。糖尿病の薬を飲んでも歯周病の治療をしなければどちらも治らない、ということもあります。また、認知症や誤嚥性肺炎にも関係があります。口は脳に近いですし、口の中に入った刺激は脳の刺激にもなるのです。認知症の方をみると、歯がない方が多かったり、義歯を入れていても合っていない方が多くみられます。逆に、認知症になりにくい人は、歯が全部揃っている方や義歯だとしてもちゃんと合っている方が多いですね。
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VINICE
認知症と歯に関わりがあるとは思ってもみなかったですね。
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清水様
また、歯周病がなくなりきらないと
腸がキレイにならないなど、
腸にも関係あったり、妊婦さんの場合は
早産にもなりやすいそうです。
女性特有の歯周病菌があり、
妊娠期にその歯周病菌ができてくる、
とも言われています。
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VINICE
妊娠期に歯の治療を勧めるのをよく耳にしていましたが、
そういった理由なのですね。
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清水様
その他に肥満やリウマチ、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という手や足の裏に湿疹がでる病気にも関係があるようです。
不定愁訴(ふていしゅうそ)、いわゆるめまいや噛み合わせにも関係してきます。
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VINICE
ここまで多くの影響があると聞くと、いかに歯周病が怖い病気か思い知らされますね。歯を大切に!とよく言いますが、しっかりケアして大切にしなければなりませんね。
お口の役割
VINICE
Step1では歯周病は全身に様々な影響を与えることを教えていただきました。続いては、お口の役割について教えてください。
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清水様
口腔の役割は、噛むことや唾液をだすことで食べ物を食べやすくしたり、消化しやすくすることです。唾液の分泌はとても重要なことで、免疫力を上げたり、脳への刺激にもなります。
寝たきりの方も水を使った口腔ケアをすることで脳に刺激を与え、それがリハビリにもなります。食事を摂ることを摂食(せっしょく)と言い、食べ物を認知して口に入れるまでが摂食、胃に送り込むことを嚥下(えんげ)と言いますが、これも口の役割です。また、口は顔貌を形成していますが、前歯が出ていたり、下顎がでていたり、歯がなかったりすると顔貌が変わってきますし、逆に歯の矯正をしても顔貌が変わります。
歯を1本減らすと口が小さくなったりしますよ。
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VINICE
歯を減らすと顎が小さくなる、ということですね。
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清水様
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また、舌で歯のアーチをつくって頬で押し返しているため、歯と頬で押しくらまんじゅうをしているので舌の形次第で歯のアーチの形も変わります。本来、舌は上顎につけ鼻で呼吸をしますが、鼻炎を持っている人は鼻が詰まっていることが多く鼻呼吸できない人が多いようですね。
その他に、歯は異物の認識や、噛み合わせなど、平行感覚を維持する、スポーツのときに力を入れる、味覚がわかる、といった役割があります。
実は、歯と歯茎の間から浸出液が出ているのですが、歯を抜くと浸出液が出なくなるため免疫力が低くなりますし、歯がないと発音がしにくくなります。愛情や怒りなどの感情表現も口でできます。また歯ぎしりをすることでストレスが発散できる、といった役割もあります。
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VINICE
歯ぎしりでストレス発散しているのですか。私は寝ているとき歯ぎしりしていると言われますが、寝ている間に知らぬ間にストレス発散できているんですね。
それにしても、口の役割はとてもたくさんありますね。
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清水様
その役割をしっかり使えるようにするには、様々なプロの方との連携も大事です。歯の治療は歯科医師、歯磨きの指導や口腔内のチェックは歯科衛生士、義歯を作るときは歯科技工士の方が関わっています。補足ですが、口内炎のときは歯科医に行けば先生が薬を塗ってくれたり、レーザーで焼いてくれたりもしますよ。
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VINICE
そうなんですね。口内炎は治るのを待つだけかと思っていましたが、歯医者で処置をしてくれるのですね。
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清水様
さらに、介護の現場だと、食べ物のサイズが合わない場合には栄養士、お箸がうまく使えなくなったら作業療法士が手のリハビリをします。歯を自分で磨けない場合は看護師やケアマネージャー、ホームヘルパーや歯科衛生士、家族の協力が必要になってきます。歳をとるとむせやすくなりますが、うまく飲み込めないときは言語聴覚士の力を借りたりもします。このように、口腔の役割を果たすにはいろいろな方が関わっています。
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VINICE
モノを食べることは生きている上で必要なことなので、様々なプロの方の力を借りて口腔ケアをしたり、食べ物を摂取していくことも必要ですね。
口腔ケアと誤嚥性肺炎
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清水様
嚥下(えんげ)とは食べ物を飲み込むことですが、姿勢は実は嚥下にとても重要です。日本の食事はお椀を持ち上げて食べるので、姿勢良く食べることができるので本来はむせにくいのです。ですが肺炎が原因で亡くなる方は多く、65歳以上の死因としては、以前は1位:癌、2位:心疾患、3位:脳血管疾患、4位が肺炎でした。でも今では、癌、心疾患に続いて肺炎が3位になりました。高齢の要介護者の場合の直接の死因は1位になるそうです。この一因が誤嚥性肺炎です。そして、肺炎を予防するのが口腔ケアになります。
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VINICE
肺炎と口腔ケア、関係なさそうですがどのような関係があるのでしょうか。
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清水様
何よりもお口の中の雑菌数を減らすことが大事です。口腔ケアをした人とそうでない人で、肺炎の発生率が半分という調査結果があります。食道と気道はパタパタと蓋で切り替わりますが、加齢や病気・薬で脳の働きが鈍くなると、反射が遅れ、誤って肺に口内の細菌が気管に入ってしまいます。気管で炎症を起こす肺炎が誤嚥性肺炎という病気で、高齢者の多くが死に至ってしまいます。寝たきりの方は寝ている時間が長く唾液の分泌量が少ないので、口の中の雑菌が多いです。そのため誤嚥性肺炎になる方が多いですね。
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VINICE
確かに、高齢者が誤嚥性肺炎で亡くなる、とよく聞きますね。
鼻呼吸の大切さ
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清水様
最近、鼻呼吸と口呼吸が話題になっていますが、先ほど口腔の役割をお話したとき、呼吸の役割があるとは伝えていませんよね。口は本来の呼吸器官ではありません。正しい呼吸とは、鼻で空気を吸って鼻で息を出すことです。
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VINICE
当たり前のことすぎて鼻で呼吸していると気にしたことはありませんが、風邪をひいて鼻が詰まると口呼吸してしまいますね。
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清水様
口呼吸から鼻呼吸に直すことで、アトピーや喘息、花粉症、鼻炎などのアレルギー疾患が改善されるとも言われています。唾液が身体の免疫力を守るという重要な役割があります。
口で酸素を取り込むことはできますが、鼻で酸素を取り込むのと質が違うようです。また、北極のような寒冷地で口呼吸すると肺が凍ったりしもやけになってしまいますが、鼻呼吸すると鼻の部分で取り込んだ空気が体温近くにまで上がるそうです。
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VINICE
鼻ってすごいですね!!鼻呼吸でアレルギーが治る、とのことですが意識するだけでいいのですか。
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清水様
鼻呼吸を推奨している先生がいらっしゃいますが、その先生が推奨している「あいうべ体操」をしたら口呼吸が自然と身に着くそうです。
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・口を大きく「あ~い~う~べ~」と動かします。
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・1セット4秒前後のゆっくりとした動作で
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・1日30セット(3分間)を目標にスタート
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・あごに痛みのある場合は「い~う~」でもOK!
私は、この運動をして花粉症が治りました!
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VINICE
ほんとですか!あいうべ体操は効果があるのですね。
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清水様
舌はしっかり上顎につけるのが正しい位置なのですが、舌が上顎についていないと、顎のお肉がたるんできてしまいます。
でも、舌は筋肉なので鍛えようと思えば鍛えられますよ。噛んだモノを送り込むのは舌の役割なので、筋肉が衰えるといくら噛んでも飲み込めないという支障がでてきます。先ほど風邪で鼻がつまると口呼吸してしまう、とのことですが顔が真っ赤になるくらい鼻で息を吸おうとがんばっていると一瞬ですが鼻は通りますよ(笑)
一度やってみてください。
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VINICE
今度やってみます(笑)
今回はお口の役割や高齢者の死因として高い誤嚥性肺炎と口腔の関係性、鼻呼吸の大切さを教えていただきました。
お口のケア方法
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VINICE
Lesson3では、実際のお口のケア方法を教えてください。
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清水様
お口のにおいを消そうと、よく液体の洗口剤を使ってうがいをする方がいますが、この洗口剤にはアルコールが入っているものもあり口の中の水分が抜け、ドライマウスになりやすくなります。ドライマウスは口が臭くなる原因のひとつですので、あまりお勧めしないです。洗口剤を使うならばアルコール分が少ない低刺激のものをお勧めします。
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VINICE
そんなデメリットがあるのですね。
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清水様
また、顆粒が含まれている歯磨剤がありますが、詰め物の中に入り込んでしまうことがあり、歯と歯茎の溝にあるポケットと言われる溝の中に入り込んでしまうと、歯医者さんでもかなり取れにくいそうです。
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VINICE
粒が歯をキレイにしてくれそう!と思っていました。
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清水様
何よりも大切なのは、歯ブラシのあて方ですね。ヘッドの毛先が先細になっているのも良いですが、歯科医はフラットな形を勧めていることが多いです。しっかり歯にあたりますし総合的に使い勝手がいいですね。
ただし歯ブラシで磨いても70%しか磨けないと言われているので、+αのものがないとしっかりとしたケアをすることは難しいです。ですから、残りの30%はフロスや歯間ブラシで補う必要があります。また、歯と歯茎の病気は予防が大切ですから、何もなくても歯科医には3ヶ月に1回程度行くことが望ましいです。
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VINICE
歯科医には痛くなってから行くことが多いですが、
定期的に行ったほうがいいのですね。
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清水様
痛みなどの自覚症状がなくても行ったほうが良いですよ。
それが健康的なお口を維持できる秘訣です。
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VINICE
先ほど、歯ブラシは先細タイプよりフラットタイプが良い、とおっしゃっていましたが、歯ブラシの選び方をもう少し詳しく教えてください。
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清水様
毛先が先細タイプは歯と歯茎の間を磨く場合にはお勧めです。
歯周病が気になる方は先細タイプを選び、歯垢を落とすことを考えたらフラットタイプがお勧めです。
ヘッドが大きいとつい力を入れて磨きがちですので、小ぶりなものだと力を入れずに奥歯や細かい部分が磨けるので良いですね。
こんな小さい歯ブラシを使っているのは日本くらいで、海外の歯ブラシは日本のものに比べてヘッドが大きいですね。台湾や韓国などのアジア圏は顔の大きさや形が似ているのに、日本より大きな歯ブラシを使っていますよ。
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VINICE
そう言えば、海外に行くとホテルに置いてある歯ブラシはヘッドが大きいですね。日本と海外で歯ブラシの形状が異なるんですね。
歯ブラシを選ぶとき、毛の固さを悩みますが、どう選ぶべきですか。
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清水様
歯周病が進んでいる方は歯茎が痛むことがあるので、柔らかい歯ブラシが良いですね。歯茎がしまってきたら普通の固さがお勧めです。
汚れを落とすには、普通の固さがいいですが、汚れが柔らかいうちは柔らかい歯ブラシでもある程度落ちますよ。柔らかい歯ブラシでも歯茎が痛む場合は、歯周病がかなり進んでいると考えた方が良いです。
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VINICE
歯磨きの時間は何分くらいが目安ですか。
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清水様
歯磨きはよく10分を目安に…と言いますが、まんべんなく磨くことが大切です。上の歯の左から右、下の歯の右から左、と順番を決めて磨くようにしましょう。しっかり磨けていれば、10分も磨かなくても大丈夫です。むしろ磨く時間が短ければその分歯の刺激が少なくて済みます。効率的にしっかり磨ける方法が身に付けば2、3分でも大丈夫だとおっしゃる先生もいらっしゃいます。
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VINICE
しっかり磨けるようになるには、どうしたら良いですか。
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清水様
染め出し液を使うと磨けている部分と磨けていない部分がよくわかるので、是非やってみて自分の癖を知るといいですね。
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VINICE
では、歯ブラシを取り替えるお勧めのタイミングを教えてください。
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清水様
歯ブラシは復元力が命なので、ヘッドを後ろから見て毛がはみだしていたら替え時です。
安い歯ブラシと高い歯ブラシがありますが、値段には様々な要素があるためどちらがいいとは一概に言えません。衛生面を考えても、安い歯ブラシでも頻繁に取り替え広がっていないものを使うことが大切です。
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VINICE
高い歯ブラシを使っても広がっているものを使っていたらしっかり磨けない、ということですね。
こまめに歯ブラシを替えることも大切ですね。
子供のお口のケア
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VINICE
続いて、子供のお口のケアについて教えていただきたいのですが、
どんなケアをすべきでしょうか。
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清水様
子供を虫歯にさせないためには、飲み物・食べ物・タイミングの3つが大切なのと、歯磨きが大切です。こんなに歯磨きしているのになぜ虫歯になってしまうんだろう、と悩むお母さん方がいますが、水ではなくスポーツ飲料をずっと飲ませて虫歯になってしまったと言うお子様もいます。
スポーツ飲料は糖分が多いので虫歯になる危険度が高いのです。
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VINICE
虫歯にならないためにはどんな飲み物がお勧めですか。
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清水様
水や白湯、お茶がいいですね。
酸性のpH(ぺーハー)が下がるほどエナメル質が溶けやすいのですが、コーラなどはpHの数値が低いです。スポーツドリンクやりんごジュース、ミックスジュース、野菜ジュースなども割とpHが低いですね。
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VINICE
野菜ジュースは体に良さそうだと思い、子供につい飲ませてしまうことがありますが、
本当は歯が溶けやすいのですね。
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清水様
また、野菜ジュースは比較的糖分が高いですね。
しかも、野菜の酵素は含まれていないとも言われていて、嗜好品として考えた方が良いみたいです。大人の飲み物だと赤ワインや白ワインはpHが低いです。ジュースは口の中に滞留させておくものではないですし、唾液が混じるため歯にそんなに影響はないと言われていますが、ダラダラ飲みは歯に良くありません。pHが低い飲み物ほど歯が溶けやすいので、飲み物次第で虫歯になる要素がたくさんあることになってしまいます。
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VINICE
子供の飲み物は注意しなければなりませんね。気を付けようと思います。歯磨きを嫌がる子が多いと思いますが、嫌がらずに磨くにはどうしたらいいでしょうか。
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清水様
子供の歯が生えていないからと、
小さい頃から特にケアをせずに、生えてきたらとやろうと思ってもその頃には自我が芽生えているので、歯ブラシを嫌がることが多いです。
しかもお母さんは怖い顔をして歯磨きを迫りがちですね。食事が終わったらガーゼで拭うなどして小さい頃から口の中に入ってくることに慣れていれば歯が生えてきたときに歯ブラシで歯磨きをしても子供にとって違和感は少ないと思います。
また、上の前歯の歯茎部分にある小帯(しょうたい)に歯ブラシがあたると痛みを感じるので、この部分を手でおさえて磨くといいですね。最初は柔らかい歯ブラシではじめて、慣れてきたら普通の固さの歯ブラシ、というようにステップアップするのもいいですね。くれぐれも怖い顔せずにお母さんが歯磨きを楽しみながら笑顔でやってみてください。
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VINICE
親としては、つい力が入ってしまい怖い顔になってしまいがちなので、歯磨きは楽しいよ!ということを伝えるために笑顔で磨いてあげることが大切なんですね。
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清水様
その他に大切なのは、奥歯が一番虫歯になりやすいので、そこを重点的にやってあげることや、仕上げ磨きは小学生入学まで親がやる家庭が多いですが、乳歯と永久歯が生え変わる小学校高学年まで仕上げ磨きをしたほうがいいですね。
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VINICE
大人がしっかりサポートしてあげることが大切ですね。
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清水様
よく乳歯はどうせ生え変わるから虫歯になっても大丈夫、と思いがちですが、歯茎が菌に犯されると歯茎の中でつながっているため、かなり影響があります。
歯茎の中では乳歯の奥に永久歯が隠れているのをご存じですか。
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VINICE
えっ!そうなんですか、知りませんでした。
乳歯だから・・・と安心してはいけませんね。
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清水様
そうですね。また、歯周病タイプか虫歯タイプかは、お母さんがどちらなのかによって子供も同じタイプであることが多いです。歯周病菌も虫歯菌も感染症なので、赤ちゃんの頃はどちらの菌もありません。
しかし、お母さんからの食べ物の口移しや、同じ食器を使うことで移ることも多いです。子供は3、4歳から歯周病が始まることが多く、歯は乳歯から死ぬまで付き合うものなので歯を大切にしてほしいですね。そして、歯並びについてですが、ずっと指しゃぶりしていると上の歯と下の歯に隙間が空いてしまい口を閉じようとしても閉じることができない「オープンバイト」や、噛み合わせが深く、口を閉じたときに上の歯が下の歯を覆いかぶしてしまう「過蓋咬合(かがいこうごう)」、口を閉じたとき、例えば右半分は上の歯が下の歯を覆いかぶり、左半分は下の歯が上の歯にかぶってしまう「シザーズバイト」、など様々な歯並びがあります。
歯並びで心配なことがあれば、歯科医に相談し、どのタイミングでどんな治療が必要かアドバイスをもらうことをお勧めします。
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VINICE
子供はすきっ歯の子が多いように思いますが、
乳歯がすきっ歯だと永久歯もすきっ歯になるのでしょうか。
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清水様
永久歯は乳歯の1.5倍のサイズがありますので、むしろすきっ歯でなければ、永久歯が生えてきたときに歯並びが悪くなることが多いです。
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VINICE
なるほど。今回は歯ブラシの選び方や取替え時期、子供のお口のケアについて教えていただきました。
次回は、ファイン株式会社の商品づくりについてお話を伺います。
■Lesson4 ファインの歴史・オリジナル商品1
ファイン株式会社の歴史
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VINICE
清水さんが代表を務めていらっしゃるファイン株式会社は、歯ブラシと介護用品メーカーとして創業から66年とのことですが、是非会社の歴史を教えてください。
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清水様
私の父の叔父である若松誠造がロウソクメーカーとして昭和23年(1948年)に創業したのが始まりです。当時は電力事情が悪く、毎日停電しており、ロウソクが必需品でした。
約10年経った1958年、事業が軌道にのってきた頃、新事業として歯ブラシの製造を開始しました。大阪で設立しましたが、当時から、東大阪と八尾は歯ブラシが地場産業ということもあり、事業を始めやすかったのかもしれません。その後、病院経営などをして、ロウソクは他の会社と合併し、歯ブラシ部門は父の清水益男が買い取り、ファイン株式会社として独立したのが1973年でした。それから約20年後に父が55歳で亡くなり、経理をしていた母の清水和恵が1994年に会社を受け継ぎました。母は介護やベビー、グミキャンディ、エコの商品など、商品開発に力を入れながら事業を継続し、2010年に私が社長に就任しました。同じ型の歯ブラシを受け継いで4代目ということで、自分では4代目と名乗っています。
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VINICE
おじさまから始まり、お父様、お母様、清水様、と親族で66年間も事業を継承されているのですね。
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清水様
父は、歯ブラシ以外にも、粘着式のねずみ取りや動物のゲージ、ビーカーなどを洗う業務用洗剤を開発しました。OEMで他社のブランドの歯ブラシを販売することもあり、過去には大手雑貨ブランドと取引させていただいたこともあります。特に、母は商品開発に力を入れ、虫歯にならないグミキャンディやエコ素材の商品、介護用スプーンやフォーク、コップの商品開発を手掛けました。私の代では、既存の商品をより使いやすくするためにリニューアルにも力を入れています。介護向けコップの「レボUコップW」は平成26年にグッドデザイン賞をいただきました。
メディアにも取り上げていただき、2010年放送のテレビ東京の「ガイアの夜明け」では、事業承継をテーマに母から事業を承継する様子を取り上げていただきました。2013年には関西テレビ系列の「にじいろジーン~ミラクルチェンジ~」に出演しました。出演する前までの私は、黒やグレーのスーツばかりで服装が地味でした。でも、にじいろジーンに出演したときをきっかけに、ミントのような明るいカラーの洋服を着てイメージチェンジをしました。
メディアに出させていただけるのは、少し珍しいもの作りをしているからなのかな、と思っています。弊社は急成長している会社ではないですが、面白いもの作りをしている企業として見られることが多いです。小さな会社ですが、この世の中で存続できているのは、私たちの役目があるからだと思っています。
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VINICE
60年以上会社が継続することは簡単なことではないですよね。
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清水様
大手メーカーのように様々な商品づくりができるわけではありませんが、弊社の経営理念は、「不便を便利に、不安を安心に変えるお手伝い」です。これが私たちのあり方だと考えています。
また、消費者と歯科医との口腔ケアの認識に乖離があるので、正しい口腔ケアをお伝えし、歯科のプロケアとホームケアの橋渡しをしながら、必要な商品とサービスを提供することで、人々の心身の健康をサポートすることが、私たちのミッションだと考えています。
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VINICE
どんなサービスをされているのですか?
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清水様
セミナーを開催して“伝える”サービスを行っており、乳歯を守るセミナーを親子カフェで隔月開催しています。セミナーを始めて3年目になります。歯科衛生士さんを呼んで講義をしてもらい、その後皆さんのお口の中を見て質疑応答や唾液のチェックなどをしています。
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VINICE
親子カフェということは、小さいお子さんをお持ちのお母さんが子供と一緒に参加できるのですか。
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清水様
そうです。お子さまと一緒に正しい口腔ケアについて学びに来ておられます。親の世代にセミナーを告知しても集客が難しいですが、「子供の口腔ケア」といった内容にすると集客ができます。
子供のために役立つ内容だから足を運ぼうと思うのだと思います。皆さん、ご自分自身の歯に不安がないわけではないのですが、足を運ぶきっかけは子供で、結局はご自分自身のことを聞く方が多いですね。ご自分の口が子供にどう影響しているかも気になる、というのもあるかと思います。大人の世代が後々認知症になるかもしれないので、大人も歯が悪くなる前にケアの大切さや正しいケア方法を知ることが重要です。
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VINICE
セミナーの参加者は、リピーターが多いのですか。
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清水様
そうですね、リピーターの方が多いですね。子供の月齢が変われば口の中も変わってきますので、月齢に合ったケアを学ばれています。
参加費500円+ワンドリンクなので1000円くらいで参加できることもあり、気軽に参加していただいています。
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VINICE
歯磨きの大切さはわかってはいるつもりでいますが、実際にセミナーで話を聞くと、しっかり磨こうと思いますね。でもそれがなかなか維持できないものなので、定期的に話を聞き、歯磨きの意欲をかきたてることは良いことですね。
ファイン株式会社のオリジナル商品1
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VINICE
ファイン株式会社では、
どんな商品を取り扱っているか教えてください。
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清水様
要介護者向けやベビー向け、エコといった切り口の商品を多く取り扱っています。今まではアクティブシニア向けの商品がありませんでしたが、今年の2015年に発売した富士山歯ブラシは、まさにアクティブシニアがターゲットになります。
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VINICE
よく見ると、
富士山が3つ表現されていますね。
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清水様
実は使うともうひとつ富士山が出現します。使っていくうちにブラシが広がってきますが、そうすると4つ目の富士山がでてきます。
横から見て4つ目の富士山が見えたら取り替えのタイミングです。
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VINICE
面白いですね。
取り替えのタイミングがわかりやすいですね。歯ブラシはどのようにして作られているのですか。
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清水様
歯ブラシができるまでの工程ですが、最初は持ち手のハンドル部分がプラモデルみたいにいくつも繋がっている状態です。
それをカットして1本1本にします。ヘッドの部分は穴が空いていて、横から見ると穴がくぼんでいます。穴よりも少し大きめの毛を二つ折りにしてはめ込み、上から金属のチップで押さえて毛が抜けないよう固定しています。長めの毛を植えて、最後に切り揃えて完成です。世界中ほとんどのメーカーも同じように打ち込み式で歯ブラシを作っています。余談ですが、歯科業界の一般的な歯ブラシとは、ヘッドの穴の数が21穴か24穴で、毛が3列×7行か3列×8行、毛はフラット、長さは8~11mm、ハンドルはストレート、といったものが多いです。
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VINICE
毛が半分に折られて植えられているとは知らなかったです。また、歯ブラシの構造や穴の数を教えていただいたので、歯ブラシを選ぶときはしっかり見てみようと思います。歯ブラシの新商品を開発するときは、どのようにしてコンセプトを決めているのですか。
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清水様
歯ブラシの使い心地は、様々な要素があり、形状、毛の長さや太さ、ひとつの穴に何本植えられているか、先細かフラットか、この他に使われる方の力の入れ方や歯茎の状態によって使い心地は変わってきます。これを考慮して商品を作るときはコンセプトを決めていきます。
持ち手のハンドルは同じでも毛の柔らかさやバランスを変えるだけでも使う方の対象を変えることもできます。例えば、歯周病向けとか・・・。コンセプト作りやハンドルデザイン、試作モニタリング、パッケージデザインは本社で行い、金型製作と成型は協力会社で行っています。その後、自社工場の三重県の伊賀工業で植毛と毛切、包装して出荷します。
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VINICE
ベビー用歯ブラシも作っていらっしゃいますが、
どんな特徴がありますか。
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清水様
以前、子供が歯ブラシでケガをしたことや、ケガをしそうになったことがある経験をされた家庭が多くありました。子供は歯ブラシをしながら歩き回ることが多く、転んだりぶつかったりすることがあります。事故は不測の事態とはいえ、子供がけがをしない歯ブラシを作りたい、と思いベビー用歯ブラシを開発しました。ベビー用は、ネックを短くし、持ち手を輪にして口の奥まで入っていかない作りにしました。今では他メーカーさんで楕円形など出ていますが、弊社が先駆けて商品化しました。
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VINICE
子供の場合は、棒のようなものをくわえて転んだりして歯ブラシが喉に刺さることが一番の心配事ですので、その心配事を解消できる歯ブラシなのですね。
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清水様
また、ベビー用のリング歯ブラシを知った重度障害者施設のオーナーさんからのご依頼があり、大人用の障害者向け歯ブラシがほしい、という要望もあり、商品開発したことがありました。重度障害者の方は握力があまりない方が多く、持ち手が細いと落ちてしまうので挟み込むように持つ形状にして、ハンドルを切り替えてヘッドの向きが変えられるようにしました。ヘッドの向きを変えることで、お口の中をまんべんなく磨くことができるのです。
ちなみに、ヘッド部分を差し替えて専用のスプーンやフォークとして使うこともできる商品です。このように困っている方のお手伝いをするためにもの作りをしていたら、大手メーカーさんが展示会で当社のブースに見学にいらしたこともありました。
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VINICE
障害者の方向けの商品も開発され、
幅広く商品づくりをされていますね。
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清水様
過去には、言語聴覚士がご自身で手作りで作っていたものを商品化してほしい、と依頼がありました。
毛の部分に穴が空いていてチューブがつながった構造になっていて、チューブを吸引器につなげると汚れを吸引器が吸ってくれる、という寝たきりの方向けの吸引歯ブラシの吸ty(キューティー)シリーズとして商品開発しました。口内の汚れを吸引器が吸い出すので、意識障害や嚥下障害でうがいができなくても水を使った口腔ケアができる商品です。こちらは、労災病院勤務の言語聴覚士と共同開発しました。
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VINICE
ファイン(株)は、「不便を便利に、不安を安心に変えるお手伝い」といった経営理念のもと、様々な口腔ケア商品を開発されているのですね。
次回LESSON5も引き続きオリジナル商品についてお伝えします。
■Lesson5 ファインの歴史・オリジナル商品2
ファイン株式会社の歴史
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VINICE
LESSON4では、富士山歯ブラシの他に、ベビー向け、障害者向けの商品開発をされているお話しを伺いました。最終回のLesson5も引き続きオリジナル商品について伺います。
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清水様
「レボ UコップW」は、嚥下障害者向け商品として歯科医の意見を取り入れながら開発した商品を、2014年にリニューアルしグッドデザイン賞を頂いた商品です。それまで販売していた商品に比べて、飲み口部分を分かりやすくし、自立する蓋を作りました。病院での食事はトレーで配膳されますが、蓋が自立すれば蓋を置くスペースが小さくて済みますし、滴がたまるのでトレーが汚れない工夫があります。さらに、手に麻痺がある方でもふたを外しやすいよう、指をひっかけるだけでふたを開けられる、といった特徴があります。容器については、目盛りを10cc単位と細かく表示しました。飲むときには飲み物が口に大量に入らないよう、飲み口の近くにくぼみを設けたことで飲みやすくなりました。
カラーは、ユニバーサルカラーを使っており、赤だと黒に見えてしまうことがあるためオレンジを採用しました。オレンジは認識されやすいカラーなのです。こちらは、2年かけてリニューアルした商品です。
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VINICE
細かい部分にまで気を配った商品ですね。竹でできたエコな歯ブラシも商品開発されたようですが、どんな歯ブラシか教えてください。
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清水様
竹の歯ブラシは、生分解する素材でできた歯ブラシです。微量の薬物や化学物質によって健康被害が引き起こされる化学物質過敏症という疾病がありますが、その症状をお持ちの方が通常の歯ブラシを使うと、ラバーを握っただけで手の皮が剥けてしまったり、口の中に多数の口内炎ができるなどしてアレルギー反応を起こす場合があります。
化学物質過敏症は個人差が大きい疾病ですが、竹の歯ブラシだとアレルギー反応が起きにくいようです。
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VINICE
一般的な歯ブラシが使えなくて困っている方も、
竹の歯ブラシなら歯を磨くことができるのですね。
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清水様
弊社が生分解する歯ブラシを作り始めて10年以上経ちますが、作り始めの頃は他にも作っている会社が何社かありました。しかし、生分解する素材は水を含むと割れやすいという弊害が起こり、みんな製造を取り止めてしまいました。そんな中でも弊社は製造を続けていましたが、ある時、製造を中止しようとしたところ、お客様から在庫を全部買うというお申し出がありました。竹の歯ブラシは、生分解するため使用期限があります。そのため製造日から日数が経つと割れやすいことをお伝えしましたが、1回使うだけで使い捨てになってもいいから、とおっしゃいました。このような声が1件だけではなく、何件もありました。お問い合わせいただいた方は皆さん化学物質過敏症の方で、唯一使えるのが弊社の歯ブラシだったのです。
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VINICE
その方々にとってはファインさんの竹歯ブラシでなければならなかったのですね。
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清水様
この竹の歯ブラシは、静岡県の竹を使っており柄の部分の素材に、1年で成長する植物を資源としたポリ乳酸樹脂と微粉末にした竹繊維を混ぜて作っています。ブラシの部分は天然毛と超極細毛があり、天然毛はブタ毛を使っています。消毒剤によるアレルギー反応が出る方がいるので、2種類の素材で作っています。
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VINICE
化学物質過敏症の方はそれぞれ反応する物質が異なるため、お客様ご本人が素材を選べるようにしているのですね。使用期限があるとのことですが、どれくらいの期間なのですか?
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清水様
樹脂が出来上がってから2年です。樹脂が出来上がり、歯ブラシとして製品が完成し、お店に並んでもすぐに売れる訳ではないので、お客様が購入して実際に使える期間はもっと短くなります。こちらの商品はニッチ産業ですが、化学物質過敏症の方の声を聞いた以上は製造をやめる訳にはいかないですね。
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VINICE
求める声に答えたい、という想いがあるのですね。
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清水様
そうですね。「不便を便利に、不安を安心に変えるお手伝い」が弊社の大切な経営理念です。Lesson4でもお話ししました、新商品の「富士山歯ブラシ」についてですが、高齢の方や認知症の方は口腔ケアがしっかりできない方が多くいらっしゃいます。毎日ケアをしない方も多く、人と会うから歯を磨く、という方もいます。なので、お孫さんからプレゼントして、毎日しっかり口腔ケアをしてほしい、という願いと、毎日の歯みがきを楽しく、心が晴れ晴れするような歯ブラシを作りたいという思いから「富士山歯ブラシ」を作りました。いつもの「歯みがき」をちょっとだけ変える、ギフト向けの歯ブラシです。また、ペアでお使いいただけるように、青富士、赤富士の2色をご用意しました。
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VINICE
世界遺産の富士山は日本を代表するものですので、海外の方にとって日本のお土産としてもよさそうですね。
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清水様
そうですね。今お土産として販売しようと動いているところです。
ファインの工場見学
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清水様
三重県の伊賀工場で歯ブラシを製造しておりますが、そこでは「ふぁいん・らぼ」といって工場見学を行っています。歯ブラシの柄と毛の色を選んでもらい植毛をします。そして毛をカットして、毛先をやすりにかけて完成です。
販売している商品は大きな機械で製造していますが、ご見学いただく方が作るときは、小型の扱いやすい機械で作っていただきます。また、歯ブラシを作りたいという業者さんが多く、製作依頼が結構あります。歯ブラシの形は3Dプリンターで作れますが、植毛機がないと植毛ができないのでそのお手伝いすることが多いですね。
業者さんは、毛がもっと硬堅かったら…、短かったら…、こんなカットだったら…、という細かい要望があるのでラボでその要望に答えながら一緒に製品を作ることができます。当社の工場としても多くの方に訪問していただくと社員の士気が高まるといったメリットがありますね。
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VINICE
工場見学で実際に歯ブラシを作れるのは面白そうですね。5回に渡って口腔ケアや御社についてお話しを伺いましたが、口腔ケアの大切さがよく理解でき、また様々なオリジナル商品で困っている方の生活を便利にするお手伝いをされていることもよく分かりました。
これからも口腔ケアの大切さを伝え続けていただきたいと思います。ありがとうございました。
正しいケアで健康的なお口を目指す
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