講師:馬場 清 先生
【プロフィール】 認定NPO法人日本グッド・トイ委員会事務局長 東京おもちゃ美術館副館長 高齢者アクティビティ開発センター主任研究員・法政大学非常勤講師 一橋大学社会学部卒業後、中学校・高等学校の社会科教諭を経て、 浦和短期大学・浦和大学の教員として社会福祉学、福祉文化論等を担当。2010年4月、認定NPO法人日本グッド・トイ委員会事務局長に就任。おもちゃコンサルタント等の人材育成、 子育てサロン「おもちゃのひろば」活動や「グッド・トイキャラバン」、林野庁が進める「木育推進事業」、また、東京おもちゃ美術館の副館長として運営等に携わる。
「東京おもちゃ美術館」とは
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ヴィニーチェクラブをバックアップしているナイス株式会社は、木を取り扱う会社でもあります。そんな関係もあり、マンションに木を取り入れられないか・・・と様々な取り組みをしています。
その取り組みのひとつとして子育て世代をターゲットとする大規模マンションプロジェクトにヴィニーチェスタッフが関わったときに提案したのが“木育”です。 「木と関わりながら子供たちを育てていく」コンクリートで作られたマンションでそんなことができたらステキだと思いませんか。 そんな中で、木育に力を入れている団体があることを知り、「東京おもちゃ美術館」の存在を知りました。そこで早速、お話を伺おうと美術館へ向かいました。地下鉄丸の内線「四谷三丁目」駅で下車し途中路地を入り歩くこと10分弱、閑静な場所に「東京おもちゃ美術館」はありました。 平日なのに建物の入り口にはベビーカーがずらりと並び、遊具がある広場もありました。館内では、事務局長の馬場さんにお話を伺うことができました。 こんにちは。今日は宜しくお願いします。
早速ですが、まずは「東京おもちゃ美術館」の概要から教えていただけますでしょうか?
馬場 先生
「東京おもちゃ美術館」は認定NPO法人日本グッド・トイ委員会が運営している施設です。子どもが実際におもちゃに触れて遊ぶこと、手作りのおもちゃを作ってみること、そしておもちゃ学芸員と触れ合い遊び方を教わったりコミュニケーションを楽しむことができるミュージアムです。
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美術館という名称からは展示施設というイメージを受けますが、実際に遊べるのですね。最近、TVゲームで遊ぶ子どもが増えている中、様々なおもちゃに触れて体験し、つくることで想像力を養い、人とのコミュニケーションを図れるのはいいですね。 「東京おもちゃ美術館」はいつ頃できたのですか?
馬場 先生
2008年4月20日にオープンしましたので丸4年経ち、今年5年目を迎えたとところです。この建物は昭和10年に建てられた戦前からある小学校だったのです。その小学校が廃校になり、建物の一部を新宿区からお借りして「東京おもちゃ美術館」としてオープンしました。「おもちゃ美術館は」以前中野にありましたが、今のスペースの1/10程度の広さでした。
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ずいぶん広いスペースですね。どんなおもちゃがあるのか楽しみです。早速各部屋を案内していただきたいと思います。
馬場 先生
それではまず「グッド・トイてんじしつ」からご案内します。この部屋には、毎年、おもちゃメーカーやおもちゃコンサルタントから推薦されたおもちゃの中から投票で選ばれたグッド・トイを展示しています。 今年は6月1日から展示がスタートしています。毎年およそ100~150点ほどの推薦がありますが、その中から、約20点を選びます。またグッド・トイの中から、国産材を使った優れたおもちゃ1点に対して、林野庁長官賞が授与されます。第1回目の受賞作品は北海道のスタジオノートが作った「ビー玉の音色と引きぐるま」です。車の中にビー玉が入っていて、動かすと音が鳴るおもちゃです。昨年の第2回目は青森県の福祉施設で作られた「ひばの積み木」が受賞しました。 グッド・トイにはプラスチックのおもちゃも選ばれますが、近年は特に木のおもちゃが選ばれることが多いですね。
VINICE 木のおもちゃは温かみや肌触りがいいですね。私の息子が保育園でグット・トイに選ばれたわにのおもちゃで遊んでいました。 ひもをひっぱるとカタカタ木の音がしてかわいいですよね。
馬場 先生
このダンシングアリゲーターはタイのおもちゃで、ゴムの木でできています。樹液がなくなって使えなくなったゴムの木を無駄にすることなく、おもちゃとして再利用しています。そういう意味では環境に配慮したおもちゃでもあります。 続いて「きかくてんじしつ」です。ここでは展示を年2~3回入れ替えています。今年度4月からは「木の玩具展」を開催しています。 次回10月からは「木のおもちゃ作家展」を行います。木のおもちゃを作っている若手作家の作品を集めて1ヶ月間展示します。 その後は11月~東京造形大学の春日明夫先生のトイコレクションパート3を行う予定です。 春日明夫先生のトイコレクション展は今回で3回目ですが、1回目の一昨年は「からくりおもちゃ」、2回目の去年は「構成玩具」のコレクション展を開催しました。 ※構成玩具とはパズルや積み木のこと。
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「木の玩具展」は、「Pull Toy(ひっぱるおもちゃ)」や「Vehicle Toy(乗り物のおもちゃ)」などとおもちゃの種類ごとに分けて展示されていますね。 とてもカラフルで見ていて飽きませんね。
馬場 先生
そうですね。よくみるとそれぞれのお国柄がおもちゃにも反映されていて大人の方でも楽しめます。さて次の部屋に移りましょう。
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ここは子どもたちがたくさん遊んでいますね。
馬場 先生
子どもたちにも一番人気の「おもちゃのもり」という部屋です。 国産材を使ったおもちゃがたくさんあるスペースで、靴を脱いで遊びます。床は九州産のヒノキ、真ん中にあるセンターハウスは東北のスギが使われています。 ここにある8万個のそろばんの玉は播州そろばんのメーカーが提供してくれています。中には色がついた玉もあり、色つきの玉を必死に子どもたちは探しています。この前、そろばんメーカーの方がいらして玉が減っているからと玉を送ってくださいました。 この大きなそろばんは、玉と玉がぶつかる音を楽しむおもちゃです。 その隣りにあるのは「森の合唱団」という木琴です。普通、鍵盤の長さを変えて音階を作りますが、この木琴は樹種の違いで音階を変えているのです。
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樹種の違いで音階を変えるとはすごいですね。でも、反対にそれだけたくさんの樹種が日本にはあるのですね。
馬場 先生
その通りです。またこの「木の砂場」はこの部屋でも一番人気です。 北海道のメーカーが作った木の玉が2万個入っています。この玉はひとつとして同じ形をしたものがありません。同じ形だとボールがいくつも重なり合ったときに体が沈み込みませんが、形が違うと体が沈み込むのです。 また、まん丸ではないので転がしたときの転がり方がとても面白いのですよ。このように木の砂場の枠の部分で転がして遊べるようになっています。 ここにある玉は北海道を代表する4種類の木でてきていて色、木目がそれぞれ異なります。
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これは子どもがおおはしゃぎしますね。 そして、私は馬場さんのお言葉に甘えて大人ですが、2階建ての木のトンネルをくぐらせていただきました。2階建てになっていて、木のスリットから入る明かりがキレイでした。子どもたちは遊びながら足や手、肌で木のぬくもりを感じることができます。 東京の都心部にこんな施設があったなんてちょっと驚きました。 今回Step1では、「東京おもちゃ美術館」についてと美術館の2階フロアを案内していただきました。 次回は、3階フロアを案内していただきます。お楽しみに!
■Lesson2
おもちゃ美術館の魅力を
倍増させる人たち
「東京おもちゃ美術館」の魅力を倍増させる人たち
馬場 先生
それでは、今回は3階フロアをご紹介しましょう。 ここ、「おもちゃこうぼう」ではてづくりおもちゃの教室を毎日開いていて、無料でおもちゃを作ることができます。6月は紙皿で作るうずまきモビールと折り紙で作るスカイツリーです。
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モビールは身近にあるものが簡単におもちゃになっちゃうのですね。発想が豊かですね。そしてスカイツリーは今の時期にピッタリですね!
馬場 先生
こちらの棚には手づくりおもちゃの講師の作品を展示しています。これらの作品たちも実際に手に取って自由に遊んでもらっています。
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講師となる方はどんな方なのでしょうか。
馬場 先生
講師はおもちゃコンサルタントという資格を持っている方々です。 赤ちゃんの成長、発達とおもちゃの関わり方から、お年寄りのリハビリ、ヒーリングおもちゃまで「幅広い視点でおもちゃを捉える」のがおもちゃコンサルタントです。 現在は全国に4,000名~5,000名程の有資格者がいます。 おもちゃコンサルタントは、子育て支援や高齢者、難病児の遊びのケアなどの社会貢献活動、玩具専門店の経営、おもちゃの企画開発など、さまざまな場で活躍しています。
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「グッド・トイ」の選考もおもちゃコンサルタントが携わっていますよね?
馬場 先生
そうです。 「グッド・トイ」の選考は消費者の立場に立った目線で、おもちゃコンサルタントが中心になって運営、選考を行っています。
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しかし、4,000名~5,000名もいらっしゃるとは驚きました。
馬場 先生
おもちゃコンサルタントは私どものNPOの認定資格ですので、通信コース、または通学コースの養成講座を受講することによって資格を取ることができます。 通信コースのカリキュラムでは、計12本のレポートを作成し、東京で開催されるスクーリングに参加することでおもちゃコンサルタントとして認定されます。 通学コースの場合は、全12回の講義を受け、東京おもちゃ美術館で3日間の実習を行います。全講義に出席し、実習を終えるとおもちゃコンサルタントとして認定されます。 通信コースは最短で半年程度、通学コースは約8ヶ月程度の期間が必要になります。
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資格を取るには結構大変なのですね。しかし、カリキュラムの内容はおもちゃ学基礎論や手作りおもちゃ実習、世界のおもちゃデザイン論、日本と世界のおもちゃ文化論、などちょっと面白そうですね。
馬場 先生
そうなんです。また、おもちゃコンサルタントとは別に、おもちゃ学芸員という資格もあります。 こちらは東京おもちゃ美術館でボランティアスタッフとして活躍していただく方々のための資格です。おもちゃ学芸員になるためにも養成講座を受けていただいています。しかも、資格取得後、活動するためには、NPO会員になっていただくために年会費がかかりますし、エプロンも実費で買ってもらっています。
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ボランティアなのに、なぜそんなにハードルが高いのでしょうか?
馬場 先生
おもちゃ美術館は入館料をいただく有料の施設です。お客さまに「お金を払ったのにこんなもんか」とがっかりしてほしくないので、学芸員のホスピタリティーの高さを大切にしています。 200人いるおもちゃ学芸員は子どもとおもちゃを結ぶ架け橋のような存在です。おもちゃのおもしろさを教えるだけでなく、おもちゃを通して家族のコミュニケーションをしっかり取るような働きかけをすることで、人と人とのつながりを大切にしています。 平日は7~8人、休日は10~15人体制をとっていて、このおもちゃ学芸員のおかげで美術館の魅力が倍増しているのです。
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おもちゃ学芸員にはどのような方がいらっしゃるのですか?
馬場 先生
様々ですね。若い方から仕事をリタイアした方まで本当にいろいろな世代の方がいらっしゃいます。例えば元営業マンだった方はおもちゃの魅力をお客さまに伝えるのがホントに上手なんですよ。
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リタイア後に、仕事で培った営業トークがおもちゃ学芸員として活かせているのですね。それによって、子どもに喜んでもらえるとは!
馬場 先生
館内の案内に戻りますね。次は「ゲームの部屋」です。 世界中のアナログゲームが集まった部屋で、 土日はオセロの日本チャンピオンやプロの将棋の棋士が来てゲームを教えてくれます。そして、「おもちゃのまち あか」は、日本の伝統おもちゃが集まった部屋です。 けん玉、こま、だるま落としがあり、昭和のレトロなおもちゃが数多くあります。そして、ここには小さな茶室があり、定期的にお茶の先生が来てお茶会も開いています。最後は、「おもちゃのまち きいろ」です。海外の木のおもちゃやひらめき・発想満載の科学のおもちゃが集まっています。木でできたキッチンや冷蔵庫、野菜や包丁があり、ごっこ遊びを楽しむことができます。
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3階フロアは、世界中のおもちゃを楽しむこともできますし、日本の昔ながらのおもちゃにも触れることができますね。そして、おままごとで使う包丁や野菜、果物はプラスチックが多い中、木のおままごとセットがあるのは嬉しいですね。
馬場 先生
木のおもちゃは高くてなかなか買えないので、是非ここで楽しんでいただければ、と思います。
VINICE
ところで、毎日、どれくらいの数の方が「東京おもちゃ美術館」に訪れるのですか?
馬場 先生
平日の来館者は150人~200人程度で、休日一番多かったときは1,000人の来館数がありました。もともと、平日の来館数が伸び悩んでいたのが課題だったのですが、昨年10月に赤ちゃん専用の部屋がオープンしたことで、平日の来館数が増加しました。
VINICE
なるほど。では、次回赤ちゃん専用の部屋について教えていただきます。
■Lesson3
国産材の木と触れ合える
「赤ちゃんの木育ひろば」
国産材の木と触れ合える 「赤ちゃんの木育ひろば」
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昨年10月に赤ちゃん専用の部屋を作られたとのことですが、
詳しくお伺いさせてください。
馬場 先生
元々は休憩場所だったスペースをリニューアルして、赤ちゃん専用の部屋「赤ちゃん木育ひろば」を作りました。0・1・2歳の子供が遊べるスペースで、床は東京多摩産の杉を使っています。ちなみに、Step1でご紹介した「おもちゃのもり」の床材はひのきを使っています。
VINICE
スペースに応じて床の材質を変えているのですか。
馬場 先生
杉は柔らかくてケガをしにくく、温かいという特徴がありますので赤ちゃんには向いていると思います。
「赤ちゃん木育ひろば」だけでなく、入口にあるトンネル部分も東京の多摩の杉を使っています。
滑り台は九州の湯布院の杉を使っていて、大分に住んでいらっしゃる造形作家の有馬晋平さんの作品です。また、ベンチは宮崎の杉を使っています。あえて、ひろばの中央にあるくぼみはコンクリートにしているのですが、触っていただくとコンクリートと杉の体感温度が違うことがわかるかと思います。
VINICE
くぼみにあるたくさんの玉は何ですか?
馬場 先生
これはスギコダマと言って、吉野杉・秋田杉を使っています。こちらも有馬晋平さんの作品です。
新しい木だと年輪と年輪の間の肌触りがあまり良くないのですが、これは樹齢200年以上の古い杉を使っているので肌触りが良いのです。
実は、このスギコダマは結構高価なものなのです。私たちは数が欲しかったので、途中まで有馬さんが作り、磨くのはスタッフとボランティアで行いました。入口にスギコダマができる工程を飾ってありますが、磨くのは結構大変な作業でした。3種類の紙やすりを使い、完成させるまでに1個当たり3~4時間かかりました。
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1つ作るのにそんなに時間がかかるんですか!数もたくさんあるので、途方もない作業だったのでしょうね。ところでボランティアの方とはどんな方が参加されたのですか?
馬場 先生
中学生から大人まで、のべ400人くらいで作業を行いました。
VINICE
今、壁の一面に置かれた宮崎の杉のベンチが、授乳スペースに変わりましたね。
馬場 先生
そうなんです。本当は個室の授乳室を作りたかったのですが、スペース的に厳しかったので、授乳するときは学芸員がカーテンを取り付けて授乳スペースに早替わりするようにしました。
VINICE
なるほど。授乳をしていないときはみんなが座れるベンチで、授乳するときはカーテンで仕切って見えないようにしているのですね。スペースの有効利用ですね。また、ここにあるおもちゃの車はカタチが変わっていますね。
馬場 先生
これは京都の北山杉で作られたおもちゃなのですが、専用の滑り台を滑り、地面に着いたときに車が一回転して止まる仕組みになっています。遠くにいかないので、お母さんが座ったまま赤ちゃんをあやすのにオススメなのです。
VINICE
なかなかよく考えられていますね。車だと走らせたはいいけれど、取りに行くのが大変ですものね。ところで、先ほどお話していただいた滑り台によく見ると割れ目ができてしまっていますが・・・。
馬場 先生
天然の木なので、伸縮しますので割れることもあります。柔らかい杉だと床も当然キズがつきやすいですし、乾燥すると板は縮みます。でも、これも子供に木の特徴を知ってもらうのによいことだと思っています。
VINICE
そうですね。私たちの身の回りには天然の木のものが少なくなっているので、なかなか木の特徴を知ることや感じることが難しくなっていますからね。子どもの頃から木の温もりを知ることは大切ですよね。
では、Step4では木育活動についてお話を伺います。
木のおもちゃを広める広める木育活動
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Step4では、木育活動についてお伺いします。
馬場 先生
私たちはここでの活動以外に、赤と緑のキャラバンボックスに木のおもちゃをぎっしり詰めて、移動おもちゃ美術館も行っています。
これを「木育キャラバン」と呼んでいますが、全国で開催し、北は北海道、南は沖縄で開催しています。
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地方に住んでいる方は、「東京おもちゃ美術館」になかなか来ることができませんから、自分の住んでいる地域に「木育キャラバン」が来て、多くの種類のおもちゃと触れ合えることは嬉しいことですね。
馬場 先生
百貨店や科学館、児童館、市民センターで行っており、今年10月には仙台の夢メッセみやぎという東日本大震災で津波の被害を受けた施設でも開催します。
VINICE
「木育キャラバン」はどれくらいの頻度で開催しているのですか。
馬場 先生
月に1回は行っています。
その他の木育活動としては、「赤ちゃん木育広場・木育寺子屋」があります。これは国産材の利用を推進するために、市民や乳幼児が木の製品に触れる機会を増やし、木に対する親しみや木の文化を知る機会を設けることを目的としています。子育て広場や地域の子育て支援活動に対し、良質な木のおもちゃを貸し出し、木のおもちゃに触れてもらうための活動です。これまでに全国80箇所でこの「赤ちゃん木育広場・木育寺子屋」を開催しました。
そして、木の良さや木のおもちゃを使うことの意義を教える講義を親御さんに向けて行うこともあります。
赤ちゃん木育広場は今年は20箇所を予定しており、そうすると全国で100箇所になります。
VINICE
「赤ちゃん木育広場・木育寺子屋」が乳幼児向けの
ミニミニ移動おもちゃ美術館なのですね。
馬場 先生
はい、そうです。
そして、東京都新宿区では「ウッドスタート」を行っています。新宿区で産まれた赤ちゃんに対し、出産祝い品として木のおもちゃが贈られる制度です。去年の4月から新宿区とおもちゃ美術館が一緒になって行っている活動です。
VINICE
木のおもちゃは誰がつくっているのですか?
馬場 先生
本当は木の地産地消を目指していました。ただ新宿区には木がないた
め、姉妹提携している長野県伊那市の木を使って、伊那市の木工職人
さんがつくるというしくみを考え出したのです。
伊那市は2006年に伊那市と高遠町と長谷村が合併したのですが、高遠町は新宿の産みの親でもあり、現在の伊那市には新宿の森という森林があるのです。しかし、おもちゃを1から作るというのは大変なことでして・・・。私たちが、木のおもちゃを作ってほしいと木工職人に直談判したところ、中には「私は直線のものしか作れない!」と言われたこともありました。結局、その職人さんにはおもちゃ専用の木のボックスを手作りしてもらっています。
VINICE
ボックスも伊那の職人さんの手作りとは、木育を徹底されていますね。一緒にやられている新宿区長からの要望はあるのですか。
馬場 先生
要望は1つだけでした。新宿区民が“ステキ!”と思うもの、です。
しかし、新宿区民がステキと言ってくれるのにはハードルがなかなか高くて・・・。
VINICE
ご苦労されているのですね。
ところで、贈られるおもちゃはどんなおもちゃなのですか。
馬場 先生
今年は7種類の中から1つ選んでいただいています。
積木とガラガラがセットになった「積み木とラトルセット」や、ひもを引くと首を振りながら進む「犬のプルトーイ」、そして「漆のままごとセット」や「漆の離乳食食器」なども用意しています。
実績として、今までに新宿区で産まれた赤ちゃん2,300人に木のおもちゃをプレゼントしました。そして今、このプロジェクトを全国に広めたいと思っています。
今年ウッドスタートの開始を予定しているのは、神奈川県小田原市、岐阜県美濃市、長野県伊那市、熊本県小国町、沖縄県国頭村の5都市です。
このうち岐阜の美濃市では、この秋から配布するためのおもちゃの
コンペを行いました。先月の6月に結果発表がありました。
VINICE
「ウッドスタート」が少しずつ日本で広まっているのですね。早く全国に広まってほしいですね。
馬場 先生
私たちは木のファンを育てる、木を使うことで森を守る、ことをモットーとしています。日本は森林率が世界で第2位なのですが、国産の木をあまり使っていないのが実状なのです。
そもそもプラスチックが出回り、木材そのものが使われなくなってきたこと。そして安く大量に仕入れることができる輸入木材に国産木材が取って変わられてしまったことなどが理由です。
日本国土の66%が森林だと言うのに木材の自給率は25%程しかありません。
VINICE
そんなに自給率が低いとは・・・。国産の木材を有効活用するために様々な木育活動をされているのですね。
馬場 先生
木のおもちゃは価格的には高いですが、木の香りを楽しめますし、長持ちします。
丈夫であるために2代3代と長く遊ぶこともできます。子どもに安心して与えられるのは木のおもちゃだと思いますし、経済の活性化になるので、是非、木のおもちゃを選んでいただきたいと思いますね。これからも、国産材の木製品を積極的に暮らしの中に取り入れ、木を使うこと、木を育てること、緑の森を守ることを行っていきたいと思います。
VINICE
木が豊富にある日本に産まれ育った私たちは、もっと国産の木とともに生活をし、木の自給率を少しでも上げることができたらいいな、と思います。
今回、実際に様々な木と触れ合えたことで、木の温もりや肌触りのよさ、香りなど、木の良さを再確認することができました。子ども達にはもっと木と触れ合ってほしい、木の良さを知ってほしいですし、それが日本を活性化させることにつながるので、私達自身も木育をもっともっと進めていけたら、と思いました。
2012年に初めて訪問し、ネットセミナーに掲載しました『東京おもちゃ美術館』を2015年6月下旬、3年ぶりに訪問してきました。
最初の訪問以降、東京おもちゃ美術館にご協力いただき、ヴィニーチェクラブの母体であるナイス(株)が主催する「住まいの耐震博」において、2014年のポートメッセ名古屋、2015年には東京ビッグサイトの会場内で移動型おもちゃ美術館・「木育キャラバン」を開催していただきました。住まいの耐震博覧会には、お子様連れのファミリーも多数ご来場されますので、お子様が飽きることなく楽しめ、たいへんご好評をいただきました。
さて、「東京おもちゃ美術館」を訪問してから3年が経ち、展示物やコーナーがリニューアルされている部分がありました。
「グッド・トイてんじしつ」には、2015年のグッドトイが数多く展示されていました。グッドトイ選考基準は、健全なおもちゃ、ロングセラーおもちゃ、遊び・コミュニケーション尊重おもちゃ、の3点となり、さらに6つのポイントである心地よい音・動きのバリエーション、感触のよさ、適度な大きさと重さ、美しい色と形、丈夫で壊れにくいもの、といったことを加味し、選考委員であるおもちゃコンサルタントを中心に選定しています。
木のおもちゃでなければグッドトイに選定されないわけではありませんが、毎年木のおもちゃが多く選定されていると、副館長の馬場様のお話です。
また、「企画展示室」では、今回はマトリョーシカとロシアの玩具が展示されていました。中央の床には、置き畳ならぬ、置きフローリングが敷かれ、くつを脱いで座って遊べるスペースとなっていました。
以前ネットセミナーでもご紹介した、子供に一番人気の「おもちゃのもり」では、1箇所だった木のボールプールがさらに1箇所増えていました。そして黒板には、マグネットを組み合わせて遊べるスペースがつくられていました。
元々は小学校だった「東京おもちゃ美術館」ですが、音楽室として使われていた部屋が「おもちゃのもり」となり、楽譜用の黒板で子供はマグネットを好きに組み合わせて遊ぶ・・・。古いモノがちゃんと受け継がれ活用されているのはいいですよね。
そして昨年2014年に『ごっこファーム』がオープンしていました。ごっこファームとは、きのこや人参、りんごなど野菜や果物を収穫体験できるコーナーです。まず、抜いたり摘んだりして野菜や果物を収穫、それを今度はキッチンで洗い、さらに、隣りのコーナーのごっこショップでは収穫したモノを販売、そして買った野菜や果物でおままごとができるというコーナーです。
農家の人が野菜を育て、収穫し、お店で販売し、家で調理して食べることができる、このような一連の流れを子供が体験し理解することができます。オープン当初より子供に大人気のコーナーとのことです。
そして、ふたたび赤ちゃんの木育ひろばを訪問しました。
前回訪問したときには気付きませんでしたが、天井をよく見ると照明がまぶしくないよう、布のカバーが設置されていました。赤ちゃんは寝そべり天井を見上げることがほとんどなので、こういった部分にも細やかな気配りがされています。
木育に力を入れる「東京おもちゃ美術館」
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