講師:森島 大亮先生
フランスベッド株式会社
ベッドや寝具を販売する若手営業マン。
快適な睡眠をとるために、睡眠を研究し、それぞれの人に合わせた商品の
提案を行っています。主に新築住宅購入者に向けて勢力的活躍中。
フランスベッド株式会社
hp→http://www.francebed.co.jp
なぜ睡眠が必要なの?
vinice
人間の3大欲求の1つに睡眠がありますが、睡眠不足が続くとやる気がでなかったり、集中力がなくなったり、体がだるくなるなどの支障がでてくることを体験された方は多いと思います。それだけ睡眠は体にとって大切なものだと思いますが、睡眠のメカニズムをよく知りません。 そこで今回は、快適な睡眠をとるために眠るときの心がけなど森島先生に教えていただきたいと思います。
宜しくお願いします。
森島 先生
宜しくお願いします。
睡眠不足だと体に支障がでてくることは、もうお分かりだと思いますが、もし断眠を続けたらどのようになるかわかりますか?
死んでしまうんです。 動物実験では断眠を続けたところ、体調を崩して最終的には死んでしまう事がわかっています。短期的な意味で、これは食事を断つよりも早く死んでしまいます。
vinice
食事よりも睡眠の方が先に体が必要と感じるのですかね。
森島 先生
人間ではなかなか実験することはできませんが、生物にとって睡眠は生きる為に必要不可欠なものだと言えます。 睡眠は脳と身体を休ませるために必要で、脳をよく休ませないと人体の全ての機能がうまく働きません。そして、眠りによって脳が休んでいる間に体の中ではホルモンや免疫機構の細胞の修復、疲労の回復、病気との闘いなどの働きを行なっているのです。
vinice
睡眠不足が続くと体の具合が悪くなることが理解できますね。眠っている間に体の中では翌日の活力を蓄えているのですね。
レム睡眠とノンレム睡眠
vinice
レム睡眠やノンレム睡眠という言葉を耳にしますが、この睡眠の特徴について教えてください。
森島 先生
睡眠は2種類の性質が異なるものから成り立っていることが脳波を中心とした医学的、生理学的な研究から分かりました。
1つはレム(rem)睡眠でもうひとつはノンレム(non rem)睡眠と呼ばれるものです。(※)
成人は一晩の睡眠の中で、およそ90分ごとにレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返しています。ノンレム睡眠は睡眠の深さによってさらに4段階に分かれます。 レム睡眠の役割は主として筋肉のための休息で「ぐったり睡眠」と言えます。それに対してノンレム睡眠の役割は主として脳のための休息で「ぐっすり睡眠」と言えます。
通常は眠りに入るとすぐにノンレム睡眠に入り、睡眠ステージ3から始まります。その後ステージ4に達します。これは睡眠が脳を休息させることを大前提として深い眠りに入った状態を言います。このときの体の内面の体温は下がり、体内の熱を出すために体表面は温度が上がって発汗作用が起こります。実は深い眠りのときが一番汗をかくのです。
vinice
なるほど。寝ているときは汗をかいてなさそうなのに意外ですね。
寝ている間によく夢を見ますが、レム睡眠とノンレム睡眠のどちらで見ているのでしょうか?
森島 先生
夢は脳が起きていないと見ないので、体が休んでいて脳が起きているときのレム睡眠のときに見ます。浅い眠りのときです。逆に、脳が休んでいて体が起きているときに目覚めると目覚めは悪いです。
vinice
ノンレム睡眠のときですね。では、睡眠時間が短いよりも長い方が良いのでしょうか?
森島 先生
睡眠の質で言うと、睡眠時間の長い短いは関係ありません。
目覚めに関してはレム睡眠のときに起きると起きやすいです。ノンレム睡眠で体温が下がり、レム睡眠で上がるので体が活動状態なので起きやすいのです。 睡眠時間について歴史的人物を例にだすと、ナポレオンの睡眠時間は3時間だったといわれています。90分を周期として考えると、3時間はレム睡眠のときに目覚めるので理にかなっています。それに比べてアインシュタインは10時間の睡眠をとっていたといわれています。
また、年齢によっても異なり、赤ちゃんは長く、年をとっていくとどんどん短くなりますので、睡眠時間は人によってまちまちです。
脳波についてですが、ノンレム睡眠の脳波はδ(デルタ)波が主です。脳が休息しているので揺らしたりしても簡単には起きません。これが深い眠りと言われています。
逆に、レム睡眠のときには眼球が動いていて、このとき目を開いてみると急速眼球運動と言って、急速に目が動いています。筋肉に緊張は解けてだらりとした状態になります。脳波はθ(シータ)波が主で体が休息しています。
vinice
α(アルファ)派はこのときでていないのですか?
森島 先生
特にでていません。でているかもしれませんが、主にδ波とθ波です。睡眠に入ると波が変わり、δ波はノンレム睡眠のステージ3からで、脳を休ませるときではないとδはでません。レム睡眠のときはθでαに近く目覚めに近いです。
vinice
図を見ると、レム睡眠を何回も繰り返すから1日にいくつも夢を見たことを覚えていることがあるのですね。しかも、起きる間際の夢を一番鮮明に覚えているんですね。 先ほど睡眠は90分周期とおっしゃっていたので、90の倍数で寝るといいのでしょうか?
森島 先生
そうですね。目覚まし時計を使わずに自然に目覚めるのは、体温も上がっている浅い眠りのレム睡眠の終わる頃です。逆に深い眠りのノンレム睡眠中に強制的に起こされると目覚めは最悪です。だから、睡眠時間を決めるときは90の倍数の時間を目安にすると良いでしょう。 体の外観から判断するとレム睡眠のほうが深い眠りに見えるので、レム睡眠も深い眠りだと主張する意見もあります。しかし現在は脳の状態の観察に重きを置いて睡眠状態を判断することになっています。 そして、レム睡眠は古い睡眠、ノンレム睡眠は新しい睡眠と言われています。これは脳の発達した動物ほどノンレム睡眠が多くなっているのです。
vinice
脳をよく使っているから、脳の休息が必要なんでしょうね。
森島 先生
そうかもしれませんね。
心地よい目覚めとは?
森島 先生
90分ごとに繰り返されるレム睡眠とノンレム睡眠は、時間がたつと深い眠りのステージ3と4の段階は少なくなってレム睡眠の割合が多くなります。 なぜ90分ごとに2つの睡眠が繰り返されるかはよく分かっていないことなのですが、体内時計説(リズム)が有力な説のひとつです。
実は人間の1日の体内時計は25時間なのです。
vinice
24時間ではないのですね!
森島 先生
そうなのです。地球の自転周期に合わせた社会生活のリズムは24時間ですから体は無理をして24時間に合わせていて、朝の光が目に入ることでリセットされます。朝日を浴びない人はだんだんずれていってしまいます。 体内時計が25時間なので人間に時計を持たせないで窓の無い部屋の中で生活させると1時間ずつ遅れていきます。眠りに入る入眠時間がだんだん遅くなり、朝起きる時間も遅くなります。朝日でリセットされないと海外旅行でよくある「時差ボケ」が起き、社会生活に同調できず、登校拒否や出社拒否になる「睡眠相後退症候群」等の障害が起こります。
vinice
病気になってしまうなんて・・・。朝日によってリセットすることがとても大切だとわかりますね。
森島 先生
体温も1日の中で周期があります。日中は体温が高く、夜は下がるというリズムです。レム睡眠とノンレム睡眠が繰り返される理由は、深い睡眠は体温が下がった状態で得られるのではなくて、体温が下がっていく過程、ステージが降りていく過程で得られるため、睡眠の途中にレム睡眠を入れて体温を上げてノンレム睡眠のときに体温を下げるというリズムによって深い眠りを得ようとしているのです。このようにすると、睡眠中に何回も発汗作用が起こります。これは体が自然に行なっていることで睡眠中の発汗は大切な働きなのです。
vinice
なるほど。睡眠中の体温の上がり下がりがそんなに大切だとは・・・。
森島 先生
スムーズに睡眠に入ることと起きるタイミングが睡眠の質に関係するのですが、 睡眠時間については6時間以下の人を短眠者、9時間以上の人を長眠者として分けています。短眠者の例として先程話にでましたナポレオン、また長眠者の例としてアインシュタインが挙げられますが、大部分の人がその間に入ります。
しかし睡眠時間の長短と睡眠の質とは直接関係ないと考えられています。長く眠るから良い睡眠とは言えませんし、短時間の睡眠だから悪い睡眠とは言えません。 目覚め感の良い睡眠はノンレム睡眠で十分に大脳の疲れをとり、レム睡眠で肉体の疲労を取ることによって得られます。
また、年齢によって睡眠時間は変化します。赤ちゃんのときは16時間程度ですが、成長するにつれて短くなり成人では7~8時間前後、老人になると6時間前後になります。なお、日本人の成人の睡眠時間は現在のところ少しずつ短くなる傾向にあります。
vinice
睡眠の質を向上させることが必要なことだとわかりました。それには90の倍数の時間の睡眠により目覚めの良い朝が迎えられるのですね。これは今日から早速実践してみたいと思います。
次回は快適な睡眠をとるために、睡眠の質を向上させるにはどのようにすればよいかをお伺いします。ありがとうございました。
睡眠効率
vinice
lesson1では睡眠の基本的なことを教えていただきました。今回は、睡眠の質を向上させるにはどのようなことをすればよいかを教えてください。
森島 先生
睡眠効率についてまずお話をしますと、睡眠効率とは、床に入っている時間に対して実際に眠っている時間の割合のことです。床に入って1時間、2時間眠れないのは効率が悪く、また、寝ていて途中で起きてしまう中途覚醒が起こってしまっても睡眠効率は悪くなります。また、年をとると一般的に睡眠効率は悪くなる傾向があります。 中途覚醒を起こす原因には、生理的、心理的なその人の内因と、音や光などによる睡眠環境による外因とがあります。これらの原因をできるだけ取り除くことができれば睡眠効率が良くなり睡眠の質が向上します。
vinice
なるほど。外因については取り除けるものもありそうですが、誰もができる方法を教えてください。
良い睡眠のための環境
森島 先生
睡眠の質を向上させるには、環境を整えることが大変重要です。 スムーズに睡眠に入ることができること、レム睡眠のときに中途覚醒を起こさないこと、そして起床時に気持ちよく目覚めることのできる環境を目指せばよいでしょう。
vinice
私は比較的睡眠に対して悩みはなかったので、何も気にせず睡眠をとっていました。質を向上させることについてもう少し詳しく教えてください。
森島 先生
ポイントは6つあります。 まず1つ目は「入眠」のための環境です。睡眠に入ることを入眠と言いますが、入眠のとき生理的に良好な状態にするためには体温が下がって、発汗作用を活発にできるような環境をつくればよいです。 体内からの発汗作用をスムーズにするためには、例えば入眠に入る前に低い温度で入浴するかシャワーを浴びる、軽くお酒を飲む、食事をする、軽い体操などを行なって血行を良くすることなどが有効です。女性は半身浴をされる方が多いですが、半身浴は効果的で良いですね。
vinice
食事を摂ることも良いのですか?
森島 先生
あくまでも軽い食事です。目的は血行を良くすることです。42℃などの高い温度の入浴やシャワー、多量の飲酒と食事、激しい体操などは体の内部まで温めますから、冷めるのに時間がかかり、スムーズな睡眠に入ることができません。また、神経も興奮するので脳が睡眠状態に入りにくくなります。
vinice
ノンレム睡眠に入るための準備を整えるということですね。
森島 先生
逆に、発汗作用を抑える行動、例えば体表面を冷やすなどのことをすると、睡眠に入りにくくなります。また、コーヒーや紅茶、緑茶などのカフェインの入った刺激飲料は少量でも睡眠に入ることを妨げる可能性があるので、なるべく控えた方が良いです。 心理的な面からは、脳の興奮状態を和らげることが必要です。しかし、ストレスや不安を取り除き、悩みを少なくする以外に今のところ対策はなさそうです。その人のストレスはその人しか取り除けないので・・・。
vinice
心理的な面以外は心がければできることばかりですね。
森島 先生
2つ目に「習慣」です。眠る前にある行動をする習慣をつけておけばそれを行なうことで意識的に体も心も眠る準備ができて、睡眠効率が上がります。
vinice
よく読書をしてから眠ることはありますが、それもひとつの習慣として効果的なことだったのですね。
森島 先生
読書だけでなく、同じ音楽を聴くなどでも良いでしょう。
習慣は、その人が育った環境が大きく作用します。いくら睡眠環境が整えられていても、初めての部屋では落ち着きません。違った環境と慣れない寝具では不安を感じるものです。逆に、慣れた寝室と寝具なら安心感を与えてくれます。旅行に行くときは日常使っているまくらを持参する人もいますからね。睡眠実験を行なうときでも最初の夜のデータは資料として使用しません。1日寝て慣れてからデータをとります。 睡眠は習慣に影響されるということを常に頭に入れておく必要があります。
vinice
確かに、ホテルに泊まる場合も初めは落ち着かないこともありますね。ソワソワしてしまいぐっすり眠れません。
森島 先生
3つ目に「発汗」です。
睡眠中の発汗をスムーズに行わせるためには、寝具の性能が大きく影響します。寝具に要求される条件としては、保温性、吸湿性、放湿性、通気性、重量などがあります。寝床の中が寒ければ体表面は縮まって体からの発汗作用は少なくなってしまします。ノンレム睡眠のときは汗をかく必要があるのでよくありませんし、途中で起きてしまうこともあります。入眠しにくいだけでなく、ノンレム睡眠までいかずに体温が上がってしまうと、深い睡眠が得られないとされています。 寝床内の温度は32℃~35℃、湿度は50%前後を保つようにするのが良いです。私たちは就寝中無意識に寝姿勢を変えたり、寝返りをうつことによって32℃~35℃の温度、、50%前後の湿度の条件をコントロールしているのです。
vinice
コントロールしてるとは・・・。寝ている間も体はしっかり働いているのですね。
森島 先生
4つ目は「寝室」環境の基準です。
寝室に必要な要素としては、光、音、温度、湿度、広さなどが要求されますが、これらの性能は絶対的なものではなく、その人の感覚的、精神的な要素に大きく左右されます。例えば、同じ大きさの音であっても自分の部屋ならそれほど邪魔にははりませんが、隣室や隣家からの音は気になって我慢できないことがあります。また、仲の良くない隣家からの音はうるさくて眠れないことがあっても、親しい隣家からの音なら気にならずに眠れることがあります。
vinice
同じ音でも仲が良い、悪いで感じ方が違いますね。こうしたことも睡眠に影響するのですね。
森島 先生
入眠時の寝室環境の基準についてですが、温度は、20度前後で寝具でコントロールできない場合は室温で調整してください。光は30ルクス以下です。文字がかろうじて読める程度で、月灯りぐらいの明るさです。
vinice
ある程度の光はあったほうが良いのですね?
森島 先生
多少あったほうがよいです。真っ暗だと不安になってしまいます。でも、光源は見えない場所にしてください。 音量は、40ホーン以下で、冷蔵庫のコンプレッサー音程度ですが、音楽などの音量はその人の習慣によって左右されます。 寝室の広さの目安は6畳程度ですが、一人用として狭すぎず圧迫感がなく、また広すぎて不安を感じることのない適度な広さです。 最後に香りについては、基本的に無臭が好ましいですが香りもその人の習慣によって左右されるものなので、少し香りがあったほうが落ち着くという方もいますね。
vinice
アロマオイルをたいたり、お香をたく方もいますね。私は寝具に香りのスプレーを吹 きかけて寝ることがありますが、とても心地良く眠れます。
森島 先生
5つ目は「就寝中」の環境です。
中途覚醒はレム睡眠のときによく起こりますが、中途覚醒を起こさないためには、生理的にトイレに行こうとしないように入眠前に水分の摂取を控えることです。心理的な対策としては、夢によって目が覚めないようにストレスを取り除いておくことです。 夢を見ることはストレスをなくすためという説があります。夢を見ないとストレスでパンクしてしまうと言われています。夢は寝ているときに自己防衛機能として発生して、人はその夢を見て悩みを解消しているのです。
vinice
そうなんですか。夢を見ることにそんな意味があったとは!知らず知らずのうちに、夢によってストレスを軽減しているのですね。
森島 先生
そして寝床内の環境条件としては、寝具は暑すぎたり寒すぎたりしないように、適当なものを選ぶことが大切です。寝室は、目を覚ますような刺激が突然入ってこないようにしなければなりません。また、中途覚醒が起きたときには柔らかな光がないと不安になってかえって目が覚めてしまいます。
最後に6つ目は「起床時」の環境です。
自然に目が覚める前は、レム睡眠の状態になっています。また、脳と体が活動しやすいように体温は上昇してきます。起床時の環境は入眠時とは逆で、脳と体に刺激を与えるほうが良いのです。刺激を受けると脳と体は早く活動体勢に入ることができます。したがって、起きたときは寝具から出てカーテンを開けて光を浴び、さらに窓を開けて冷たい空気や水による刺激を受けるほうが良いのです。起床時にふさわしい光の明るさは2500~3000ルクス程度とされています。晴れた日の窓辺が3000ルクス程度ですので、目安にしてください。
vinice
なるほど。良い睡眠のための環境のキーワードは、「入眠」・「習慣」・「発汗」・「寝室」・ 「就寝中」・「起床時」ですね。どれも簡単に取り入れられるものばかりでしたので、意識すれば良い環境づくりができることが分かりました。 次回はベッドのマットレスについてお話を伺います。
マットレスの力の分散
vinice
LESSON2では、快適な睡眠のための環境を教えていただきました。今回は、ベッドのマットレスの選び方やお手入れ方法について教えてください。
森島 先生
はい。マットレスの選び方からお話ししますと、快適な睡眠を得るには、身体と マットレスと枕の3つの相性が合うことが条件になります。マットレスのみ身体に合っていても快適な睡眠が得られるとは言えません。身体・マットレス・枕、この3つを考えながら選ぶことが大切です。
身体に合ったマットレスの見分け方は、仰向けに寝たときにお尻に落ち込んだ感の底づき感がなく、横向きに寝ても肩と腰に圧迫感がないものが一番理想的です。
vinice
なるほど。お尻が落ち込まず、肩と腰を圧迫しない硬さを見つけるのはなかなか難しそうですね。
森島 先生
敷く寝具の性能で、最も大切なことは寝姿勢を正しく保つことです。 人間が立ったとき、背骨のS字形の曲がりは約4~6cmで、寝たときはS字形の曲がりが約2~3cmになることが好ましいと言われてます。極端に肩や腰だけ落ちるのは良くありません。
vinice
実際に寝てみて腰が落ちるかどうかは分かるものですか?
森島 先生
はい。わかりますよ。逆に、硬すぎてもよくありません。適度に沈み込まないと圧迫されて痛くなることがあります。ただ、腰痛持ちの方は硬いベッドが向いていますね。
vinice
やわらかいと腰に負担がかかってしまうんですね。
森島 先生
マットレスに寝た際、体に受ける圧力の分布状態は寝心地を左右する大きな要素になります。身体を頭部・胸部・でん部・脚部の4つのブロックをつないだものと考えた場合、それぞれの重量配分は8%、33%、44%、15%です。この重量の違いを寝具はバランス良く支える必要があります。 左図を見ると、体に合っていないマットレスの場合、でん部に力が集中してしまっています。理想的なマットレスの場合は全体的に力が分散するようになっています。
vinice
程良く沈み込むマットレスが好ましいのですね。図を見ると体に合っていないマットレスで毎日寝ていたら、背中や腰が痛くなるのがわかりますね。
ベッドと布団
森島 先生
ところで、ベッドと布団の違いについて分かりますか?
vinice
ベッドにはスプリングがあって、布団にはスプリングがありませんね。あとは、ベッドには先程お話があった力が分散しやすいということもありますか?
森島 先生
それもあります。あとは高さです。布団では枕元を人が歩くと畳のほこりが頭の位置まで舞い上がりますが、ベッドではほこりは届きにくく、床にいるダニも上がってきにくいですし、床からの温度や湿度の影響も受けにくいという長所があります。
vinice
布団はくつをぬいで生活をする日本の寝具で、ベッドはくつをはいて生活する欧米の寝具で、それぞれの文化の違いでスタイルが異なるわけですね。
森島 先生
もうひとつ、マットレス自体には吸湿発散性がありますが、布団の場合は、毎日上げ下げして布団を干す必要があります。布団は乾燥させなければなりませんが、マットレスはスプリングが入っているので、置いておくだけで常に吸湿発散することができます。空気が通り抜けて乾燥します。要は、ベッドなら万年床でも構わないのです。
vinice
そう考えると、ベッドは性能が良い上に、使い勝手が楽ですね。
森島 先生
布団の場合、布団が吸った汗を布団の下の畳も吸っているので、必ず布団をあげて畳を乾燥させなくてはなりません。寝具の役目はいかに吸湿発散をするかです。しかし、ベッドも布団も一長一短ですよ。
vinice
そうですね。布団は片付ければ部屋を広く使えますが、ベッドは置き場所が必要なので、部屋が狭くなってしまいます。
森島 先生
そうですね。ベッドまたは布団を選ぶ際は、自分の生活に合わせて選ぶと良いのでしょう。
寝姿勢測定器で目安を知る
森島 先生
フランスベッドでは、いろいろな体型の人に合った寝具を選ぶための道具として「寝姿勢測定器」があります。当社のスリープ研究センターが開発した「寝姿勢測定器」は頭から首、背中、腰、お尻までのバックライン及び身長・体重を瞬時に自動測定し、その測定値を基礎にして理想的な寝姿勢になるマットレスのクッション性と枕の高さを割り出すための装置です。
vinice
先日ショールームで体験させていただきました。確かに、硬いベッド、普通の硬さのベッド、やわらかいベッドがいくつもある中で自分に合ったベッドを探すのは簡単なことではありませんね。
森島 先生
測定器によってその人に適したマットレスの硬さ、枕の高さがわかりますが、もちろんマットレスや枕の好みは人それぞれで違うので、あくまでも、目安として考えていただき、実際に寝て確かめることが大切です。
vinice
そうですね。毎日使うものだから自分に合った寝心地かどうかを確認することは大切ですね。
森島 先生
ショールームで体験できますので、ヴィニーチェ クラブ会員様も是非ご利用ください。ショールームの招待券をプレゼントいたします。
vinice
ありがとうございます!では、ヴィニーチェ クラブ会員様のご応募を募りたいと思います。ご希望の方はこちらからご応募ください。
マットレスのお手入れ方法
vinice
次にマットレスのお手入れについて教えてください。
森島 先生
マットレスは1ヶ月~3ヶ月に一度マットレスの頭部と脚部を入れ替えたり表面と裏面の裏返しを行なってください。
vinice
どうしてそんなことをするのですか?
森島 先生
人が寝ている時にマットレスに一番負荷が掛かっている部分がでん部部分だということは先ほどの耐圧分布画像でお分かりだと思います。そして長期間にわたって
マットレスのローテーションを行わなかった場合そのでん部部分のウレタンやスプリングがへたってしまい正しい寝姿勢が得られなくなる恐れがある為、1ヶ月~3ヶ月に一度はローテーションを行ってください。
vinice
結構頻繁にお手入れをする必要がありますね。でも、マットレスは大きくて重たいので起こすのは簡単なことではありませんが・・・。
森島 先生
そうですね。選ぶ時のポイントに、重量のことも忘れないでください。自分で起こせる程度の重量のマットレスを選ぶようにしてください。そして、お手入れを行う際に3ヶ月に1回は日光に当てると良いと言われますが、あまり日光に当てすぎは中のウレタンや綿が傷んでしまうので、ほどほどで良いでしょう。
vinice
はい。わかりました。快適な睡眠を得るには、身体とマットレスと枕の3つの相性が合うことが条件とおっっしゃっていました。
今回は身体とマットレスについてのお話をしていただいたので、次回は枕についてのお話を伺いたいと思います。
枕の選び方
vinice
前回はマットレスの選び方について教えていただきました。
今回は、枕や羽毛布団などの寝具について教えていただきたいと思います。では、枕から教えてください。
森島 先生
はい、わかりました。まず枕の素材についてですが、眠っている間に多く汗をかいているので、ムレない素材が良いです。
vinice
前回、寝ているときには体からたくさん汗をかくと教えていただきましたね。頭の汗に対しても、吸湿性の良い素材が良いのですね。
森島 先生
枕は頭だけではなく、首と肩も一緒に支えているのです。また、首と肩が冷えないように保護することも枕の役割です。そのために一種類ではなく複数の素材を組み合せることもあります。一般的には天然素材の方が、ムレ、フィット感、弾力性では優れていますが、衛生面からはプラスチック系のものが良いという意見もあります。どちらにしても、枕の基本的な役割を果たしていればあとは好みの違いです。
vinice
では、選ぶ時のどのようなことに注意して選べばよいでしょうか?
森島 先生
枕の高さについては、仰向けの場合は4~8cmの範囲で考えて下さい。横向きのときはそれよりもやや高くする必要がありますので、枕の下にタオルなどを敷くと良いでしょう。しかし、たいていは仰向けで寝ているもので、最初は横向きで寝ていてもそのうち仰向けに
なってしまうのが一般的です。仰向けに寝るのが楽ですが、それよりも、うつぶせに寝るほうが本当は一番楽なんですよ。動物は基本的にうつ伏せで寝ますが、仰向けで寝るのは人間くらいです。うつぶせは痰(たん)がからみにくいので老人にとっても良く、病院では
うつぶせ療法があるくらいです。
vinice
でもうつ伏せは寝にくいですよね?
森島 先生
真ん中があいているマットレスや枕があるんですよ。または、段差のついた枕もありますね。うつぶせはいびき防止にもなりますよ。
vinice
なるほど。気道がふさがらなくて良いのですね。 ところで、よくホテルでは枕が2つ置いてありますが・・・。
森島 先生
厚めの枕と薄めの枕、又は硬い枕と柔らかい枕を用意しているホテルは多いですね。
vinice
自分の好みの枕を使って下さいというホテルの配慮なのですね。
森島 先生
そうですね。 それと、枕の高さは組み合せるマットレスの種類によって変わってきます。同じ枕を使っても柔らかいベッドに寝たときは胸とお尻が沈むので、枕も合わせて低いものにしてください。4~8cmと言いましたが、柔らかいマットレスの場合は2cm程度でも良いでしょう。反対に硬いベッドでは体が沈み込まないため、枕はもっと高めのものにしないと良い寝姿勢になりません。このように体とマットレスと枕の3つはお互いに関連し合いながら変化するものですから、枕やマットレスや布団を購入する際には、今お使いの寝具を考えて選んでくださいね。
vinice
できればマットレスと枕を一緒に買ったほうが良いのですね。
森島 先生
それが理想的ですね。
女性に人気の枕
vinice
女性に人気の枕はどんな枕でしょうか?
森島 先生
女性は男性よりも一般的に低めで柔らかい枕を好んでいます。フランスベッドの商品ですと、「ニューショルダーフィットピロー」が人気です。これは、放熱性・通気性に優れた小さなソフトパイプを頭の部分に使用して、首・肩の部分には低反発
フォームウレタンを使っています。使われている低反発フォームウレタンは通気性が高く、冬でも硬くなりにくく、そばがら以外の素材は丸洗いできるのが特徴です。素材はソフトパイプ・そばがら・フェザー・パールがあります。
vinice
寒いと縮まって肩が凝ってしまいますが、この枕なら肩にフィットするので肩を冷やさなくていいですね。そして、丸洗いできるのも嬉しいですね。
敷き布団・羽毛布団の選び方
vinice
続いて、ベッドで寝ない方に向けて、敷き布団の選び方について教えて下さい。
森島 先生
寝具は、深い眠りを与えて、脳と体の疲れをとるための道具ですが、それは掛ける側と敷く側と枕の三要素となります。それぞれに要求される性能は異なり、シーツやカバーなどの補助用品にも、それぞれの用途に合った性能が必要です。 敷く寝具に要求される性能は9つあります。
①体の支持力が強いこと
②耐圧分布が適当であること
③弾力性が優れていること
④保温性が良いこと
⑤吸湿性が良いこと
⑥放湿性が良いこと
⑦透湿性が良いこと
⑧大きさが適当であること
⑨耐久性、衛生性、経済性に優れていることです。
敷き布団の場合は、畳の透湿性が良くないので、毎日布団を片付ける必要があります。畳が乾燥して吸湿性を回復させるためです。万年床は湿気がたまって床や寝具にカビが生えることもあるので、衛生的によくありません。そのため、敷き布団を選ぶ際には布団を毎日片付け、天気の良い日には天日干しが楽に出来る軽めで扱いやすい敷き布団を選ぶと良いでしょう。
vinice
マットレスを選ぶ際にも、大きさ、重量は大切と教えていただきました。同じように、布団も1人で扱える重量ではないと動かせないからですね。汗を吸収したらしっかりと放湿することが大切なのですね。
森島 先生
布団の下がフローリングの場合、布団をずらすと水分がフローリングにまで浸透することもあります。畳の部屋で布団を敷くのは良いですが、フローリングではあまりお勧めしません。もし敷く場合は吸湿シートが必要ですね。
vinice
最近では、ほとんどの方が羽毛布団を使われているのですか?
森島 先生
そうですね。でも、質の良い布団を使っているかは分からないですね。ハンガリー産、ポーランド産、カナダ産、中国産などありますが、ヨーロッパ産等の高品質グース羽毛と中国産ダック羽毛を円柱の筒に同じ重量入れると、かさ高が全然違います。空気を多く含むことによって羽毛の温かさがでますが、廉価な羽毛は空気をあまり含まないものもあります。
vinice
空気を多く含んだほうが、層が多くできて温かくなるということですね。羽毛布団を選ぶポイントを教えて下さい。
森島 先生
羽毛布団の詰め物の表示は義務化されているので、ダウン95%、フェザー5%などと、必ず%の割合が記載されています。ダウンは、正式にはダウンホールと言いますが、首の下の辺りから採取できる貴重な羽毛で中央に核があり、核のまわりに小さい細い毛がついています。フェザーは中央に羽軸を持っていてその両側に柔らかい羽枝がある、いわゆる羽根のことです。よくダウンジャケットから羽根が出てくることがありますが、そのでてくるものはフェザーです。
vinice : なるほど。
森島 先生
ダウン90%以上の布団がお勧めですね。羽毛は水鳥の種類によって変わってきますが、グース(がちょう)とダック(あひる)の種類があり、羽根の形状によってダウンとフェザーがあります。ダックよりもグースの方が保温性が高く、フェザーよりもダウンの方が保温性は高いです。ですので、グースのダウンが一番良いです。また、産地によっても品質の差があり、寒い地域の水鳥が一番温かいです。採取方法は、機械で採取か、一本一本ハンドピックで採取かに分かれます。ハンドピックはダウンが傷つかなくて、形も崩れにくいので高級です。フランスベッドで販売しているもので、100万円以上する羽毛布団がありまが、保護鳥が巣立った巣から羽毛を採っているものなのです。この羽毛を使った布団は、手に置いただけで温かいのです。
vinice
保湿性を考えると寒い地域のグースの羽毛で、ダウンの含有量が90%以上のものが温かそうですね。
布団の保管方法
vinice
では、布団の保管方法について教えてください。
森島 先生
ビニールケースなどの通気性が悪いものに入れて保管すると、ムレたり臭いがついてしまうことがあるので避けましょう。不織布を使った布団ケースの場合は空気を通すので、そのまま置いておいても問題ありません。陰干しして湿気を逃し、熱をとってから使い古したシーツなどに包んで保管することがお勧めです。
vinice
直射日光はよくないのですか?
森島 先生
羽毛布団と敷き布団の両方とも直射日光はよくありません。しかも、表面の生地も傷んでしまいますので、陰干しをしてください。また、たたくと中の綿が壊れてしまうのでよくありません。日に当てる場合は、シーツをかけて干すようにしてください。また、押入れの中は湿気がこもりがちになるので、吸湿シートを使うと良いですが、ずっと入れたままだと、吸湿性の高いものはたくさん吸い込みすぎて、それ以上吸わなくなってしまうので、たまには外にだして干す必要があります。
いびき軽減枕
vinice
フランスベッドさんで変わった枕があるんですよね?とても人気商品と聞きましたが・・・。
森島 先生
いびき軽減枕です。いびきをかく人は約2000万人いると言われていますが、いびきは隣りで寝ている人の睡眠を妨げるだけでなく、かいている本人も十分な呼吸ができていないため、睡眠の質を悪くしているようです。
vinice
いびきは何故かいていしまうのでしょうか?
森島 先生
いびきは気道が何らかの理由で狭まれることにより起こります。原因のひとつとして、舌の沈み込みがありますが、舌が大きい人、顎の小さい人、飲酒等で舌が垂れ下がることによって気道が狭まります。舌の沈み込みを軽減させる方法として、横向き寝が効果的であることが分かっています。いびきをかいている人に何らかの刺激を与えると止まるというのを経験した人は多いのではないでしょうか。この枕はいびきを検地すると内部の振動子が作動して、その音と振動で使用している人に軽微な刺激を与えていびきを止めるという枕です。
vinice
ショールームで体験させてもらいましたが、寝返りを打つと振動が止まり、またいびきをかくと振動するようになっていました。
森島 先生
フランスベッドは質の高い眠りを提供するメーカなので、眠りを妨げるいびきは少ない方が良いということでいびき軽減枕を作ったのです。
vinice
なるほど。いびき軽減枕は本人にとっても隣りで寝ている人にとっても嬉しい商品で すね。
4回のLESSONで快適な睡眠のための環境づくりの大切さや、マットレス・寝具を選ぶときのポイントを教えていただきました。快適な睡眠がとれるようにアドバイスを参考にさせていただきます。ありがとうございました。
■教えて先生
サーカディアンリズムでの体温のリズムはよく耳にしますが、先生の以下の文章:「レム睡眠とノンレム睡眠が繰り返される理由は、深い睡眠は体温が下がった状態で得られるのではなくて、体温が下がっていく過程、ステージが降りていく過程で得られる」にありますレム-ノンレムでの体温リズムや、各周期で体温が下がっていく過程で深い睡眠が得られるという学説を聞いたことがありません。出展を是非教えてください。(雑誌名、ページなど)
よろしくお願いします。
ノンレム睡眠は大脳に休息を与え回復を図る為の睡眠です。ノンレム睡眠中は、体温を下げ、脳の温度を下げオーバーヒートし易い大脳を冷やすことにより、大脳の神経機能を回復させ、維持する機能があり、とても重要な睡眠であると言えます。逆に、レム睡眠は、ノンレム睡眠で冷やした脳の温度を下がりすぎないように上昇させる機能があり、大脳機能を活性化させ覚醒状態に近付けます。しかし、ノンレム睡眠だけでは、温度が下がる一方になりますので、これを繰り返すことで睡眠全体のバランスを取っています。
参考として井上昌次朗先生執筆の、光文社発刊の「熟睡できる本」などを読まれれば如何でしょう。
毎日に安らぎを!快適な睡眠のために知っておきたいこと
https://www.vinice.jp/wp/wp-content/uploads/2016/12/s2.jpg
https://www.vinice.jp/lesson/1853/