講師:兼松 芳昭氏(有限会社インテリア プランツ)
【プロフィール】
東京農業大学農学科卒業
都内大手生花店に入社、社内研修の講師を務める。
現在は、インテリアプランツに勤務。ガーデニング教室の講師を勤める。
・英国王立園芸協会会員
・同協会コンテナガーデニングマスター認定
有限会社インテリアプランツ
所在地:千葉県市川市国府台3-4-16
事業内容:観葉植物リース及び販売・ガーデン設計・施工・ ガーデンメンテナンス
植物・フェイクプランツによるディスプレイ・・ ガーデニングスクール主催・講師派遣
電話・FAX:047-371-4556
東京営業所:東京都足立区鹿浜6-36-4
電話・FAX:03-3854-0453
◆夏は守りの季節
VINICE
今回は「夏のベランダガーデニング」について色々教えていただこうと思います。
兼松先生、宜しくお願い致します。
兼松先生
はい宜しくお願いします。
VINICE
早速ですが、夏休みなどでちょっと時間に余裕ができ、草花の手入れを・・・
などを考えている方も多いと思うのですが、どのような点に気をつければよいですか?
兼松先生
はい、夏の時期はガーデニングにとっては守りの季節となります。暑い夏は植物も夏バテ状態です。プロも樹木の剪定は軽いものにして、植え替えも極力控えて植物に与えるダメージを少なくします。ハイビスカスとか夏が好きな熱帯性の樹木やお花でも、最近の東京は熱いですから、日中の気温が35度を超えたりすると、弱ってしまいます。
夏というのは植物の植え込みや植え替えをするには、難しい季節ですね。
VINICE
そうですか。夏はガーデニングをするには難しい時期なんですね。
逆に植物を植え込むのにふさわしい時期はいつなんですか?
兼松先生
そうですね、一般的な植物の植え替えに良い時期は、春(3月のお彼岸過ぎ~5月/中旬)と
秋(9月のお彼岸過ぎ~10月/中旬)です。観葉植物のように寒さに弱い植物は5月中旬から6月と9月頃がよいと思います。ベストは植物が成長をはじめる少し前です。種類によって違いはありますが、植物が成長を始めるということはある程度植物が怪我(根が痛んでいる、葉が少ない)をしていても、その時期なら十分回復できる可能性が高いのです。
植え込みや植え替えは少なからず根にダメージを与えてしまいますから、回復しづらい真冬や真夏に行うと、回復しきれないケースがあります。例えば、クリスマスローズは、暑い夏は苦手なので休眠していて、涼しくなる9月下旬頃から元気になり、2月くらいから花を付け始めます。したがって、元気になる9月下旬頃に植え替えをしたほうがダメージは少なく回復もしやすいのでベストですね。【クリスマスローズ】
キンポウゲ科の常緑多年草。写真はオリエンタリスという一般的な品種です。改良が進んでいて、花色が豊富です。八重咲きもあります。
VINICE
真夏に行うと、枯れてしまうということですか?あー、かわいそう・・・。
兼松先生
例外もあって、真冬に植え替えをしないといけないものもあります。
落葉樹などがそうですね。落葉し、根が葉に水分を大量に供給しなくてすむ休眠中なら、多
少根が傷んでも木は枯れません。バラなどは冬に植え替えをします。
VINICE
なるほど。植物の成長時期は、それぞれ違いますものね?
兼松先生
植物の植え替えの基本というのは、その植物のライフサイクルでダメージが回復しやすい時期に行うことですね。例外はありますがとりあえず春と秋ならば大体は大丈夫でしょう。
それともうひとつは、園芸店などで一番商品の花が豊富にある時期もその頃(春と秋)なので、
この時期に植物を選んでいただくといいと思います。もっとも真夏や真冬でないと売り場に並ばない植物もありますが。
植物を夏バテにさせない為には・・・。
VINICE
今までのお話を伺うと、夏にガーデニングを行うというのはやはり無理なのでしょうか。
兼松先生
ちょっと辛いですが、植物にダメージを与えないよう上手に行えば出来ますよ。
ただシーズンの春・秋と同じようにはやはり出来ませんので以下の点を注意してみてください。
・ 植物を植える場合は根が傷めないように、根鉢をあまり崩さない
・ 植え込んだ後の植物はダメージを受けているので養生をする
VINICE
「養生する」とは、具体的にどんな事をすればよいですか?
兼松先生
夏の場合、なにせ陽射しが強く暑いですから、植え込みをしてから1週間から10日間くらいは、強い日差しを避けてあげてください。わかりやすく言えば、洗濯物がよく乾くような、風が吹いてよく日が当たるようなところには植物を置かないでください。
根が傷んだ状態で、よく日が当たるところや風が通るところに置くと、葉の表面から水分が蒸発しても根から水分を補給することができずに葉が落ちたり、萎れたりします。最悪の場合は枯れてしまうこともあります。したがって、植え替えをしたら養生をしてあげてください。
やむなく夏に庭木を植える場合があります。そのときは、葉を取ったり、枝を落としたりして蒸発するところを少なくしてあげたりします。
VINICE
植物は、サンサンと照らす日光を浴びたほうがよいと思っていたのですが、実際は違うのですね。では、室内に避難させてあげればよいのですか?
兼松先生
今度は、「日照をとるか」逆に「暑さ寒さをしのぐか」という話しになります。
観葉植物といわれている植物をのぞいて、お部屋の中に長く置くと日照の不足になり植物事態が軟弱になってしまいます。あるいは、風通しも悪く、土の水が乾きづらく今度は根が傷んでしまい根腐れしやすくなります。ですから、夏は、出来ればお部屋でないところで養生されることをおすすめします。もちろんエアコンの室外機からの風が当たるところは避けてください。
VINICE
お部屋でないところ???
兼松先生
ベランダでも、直射日光が当たらない所とかありませんか?
できれば室外で養生してあげてください。
「よしず」で日よけを作ってあげるというのも、植物のためにはよいですね。これはリビングを涼しくするのにもよいですし、植え替え等の養生以外でも、夏の暑さから守るのにはよいと思います。
VINICE
「よしず」?
兼松先生
海の家とかにある「簾(すだれ)の大きいやつ」ですよ。
VINICE
ベランダ用簾(すだれ)として売っていますね。夏になると日よけで使っているお宅がありますよね。
兼松先生
はい、そうですね。あとは、寒冷紗(かんれいしゃ)というのもあります。
温室とかによく貼ってある黒や銀色の日よけシートです。遮光率が50%とか60%とか表記されて売られています。そういったものを使っていただくのが軽いし、濡れても丈夫ですし、一番確実なのですが・・・。どちらかというと栽培の機能優先なので、どうしても見栄えはイマイチですね。
VINICE
そうですね。ベランダガーデニングですから、インテリアのひとつとして見栄えも重視しないと
いけませんよね。
兼松先生
よしずなどを上手に使われたほうがよいですね。リビングやお部屋の温度を下げる効果もありますし、植え替え後の養生以外でも西日から植物を守る場合もいいですよ。
VINICE
この暑い時期にあえて植え替えなどをする場合は、植物には細心の注意が必要なんですね。
兼松先生
そうです。暑さ対策をしてあげてください。
植物を購入するポイント
VINICE
では、お店で選ぶ時ですが、同じお花とかがケースに入ってズラーっと並んでいますよね。どのお花を選ぶべきか、ポイントを教えていただけますか?
兼松先生
同じケースの中の植物はほぼ同じ品質です。しかし、特に夏場は入荷してから何日か経っている場合は状態が変わってきます。ケースにぎっしりお花が詰まった状態で入荷しますから、ケースの中の方は風通しが悪く、蒸れてしまって傷んでくることがあります。
VINICE
そうなんですか。
兼松先生
ですから、良心的なお店や人手があるお店だと、苗と苗の間隔をあけたりして風を通すようにしています。
VINICE
では、売り場に、ちゃんと専門の人がついているほうが間違いないということですか。
兼松先生
そうです。誰かが常駐していて常に手を動かしてお手入れしているようなお店のほうが品質がよい可能性が高いですね。
VINICE
女性の方とかで2,3人でお花屋さんの専門店をやっているところとかはどうですか。
兼松先生
小さくても良心的な方ががんばっているお店だったら問題ないと思います。
VINICE
逆に大型のホームセンターなどには、ガーデニングコーナーがあるケースが多いのですがいかがですか。
兼松先生
ええ、品揃えも豊富ですし、相談できる人がいる事が多いのでよいと思います。できれば空いている平日に行くと相談にのってもらいやすいのでよいですね。
VINICE
では、お店の方にお話を聞いて、植物を選ぶというのもよいですね。
兼松先生
植物によって好む環境が違うし、栽培が難しいものもあります。最初は小さくても、ベランダでは大きくなりすぎて大変になってしまうものもあります。詳しい人が売り場にいればいろいろと相談できるので安心ですね。
お店は何箇所か見て廻ってみて、その中で自分の気に入ったお店を選ぶのがよいでしょう。近いのも便利でよいのですが、何店か廻って見られることをすすめます。
購入した後は・・・。
VINICE
これは夏とは関係なしで、いろんな種類を買ってくるとそれぞれに生産地の違う土がついているわけですが、そのときはあらためて自分が作った土に植えたほうがよいのですか?
兼松先生
培養土というのは、生産者が栽培しやすい土で作っているはずです。あるいは培養土に育て方を合わせています。私たちが植物を育てる際に、最初に植わっていた培養土が私たちの育て方にあっているかといえばそうでないことも多いでしょう。ですから新しい環境に合った新しい培養土に早く植え替えてあげてください。そしてなじませてあげることが大事です。そのためには、苗の土を落とすことが必要ですが、根が切れたりしますから、植物が傷みます。それをダメージを受けやすい夏にやってはいけないんですね。
VINICE
あー、なるほど。
兼松先生
夏に買った場合はとりあえず、一回り大きい鉢に植え替えておいて、その植物の植え替えに適した時期にもう一回ちゃんと植え替えをしてあげるのが良いでしょう。
VINICE
大きい鉢に植え替える場合は、根っこについている土のまわりに新しい土を入れればいいんですよね。
兼松先生
そのときに、もしも移し変えるときに土がボロっと落ちても、根がついていないところは、ボロッと落ちますから気にしなくていいです。ただし無理に土を落として根を切ったりしないよう、そうっと植え替えてあげましょう。その後は、養生をしてあげます。
VINICE
しばらくは直射日光をあてないように、養生をしていたわってあげればいいんですよね。
兼松先生
そうですね。
VINICE
夏は、私たちも人間も誰かにいたわってもらいたいですね(笑)
■Lesson2 「ベランダガーデニングでの注意点」
◆整理整頓に役立つグッズ
VINICE
レッスン1に引き続き「夏のベランダガーデニング」について色々教えていただこうと思います。
レッスン2は『ベランダガーデニングでの注意点』です。兼松先生、宜しくお願い致します。
兼松先生
はい宜しくお願いします。
VINICE
早速ですが、植え替えなどをベランダなどですると汚れますよね。
兼松先生
そうですね。ガーデニングやっていると、土や落ち葉やらゴミなどがとても出ますね。特にベランダガーデニングではとにかく“整理整頓清潔第一”です。
直径30cmくらいの鉢皿(植木鉢の下に敷くお皿)を3枚くらい用意すると便利です。植え替えや植え込みの際、土を落とす時にお皿の中に落とすようにして、培養土をブレンドするときもお皿の中でします。植えるときもお皿の上に植木鉢を入れて作業すれば、床をほとんど汚さずにできます。そのときに1m四方ぐらいのビニールシートなどを用意していただいてその上で作業すれば完璧ですね。◆植え替えセット
プラスチックの鉢皿3枚・土入れ・スコップ
ステンレスのハサミ・ピンセット(割り箸可)
鉢底ネット・小型のホウキとチリ取り
VINICE
なるほど。ガーデニングの作業に使うグッズには、ステンレス製などのスコップをイメージする方が多いのではないかと思いますが・・・・。
兼松先生
鉢植えなどには“土入れ”の方が便利です。先の尖ったスコップ型をしているのは移植ゴテといってお庭で穴を掘ったり、植えてある植物を掘り取って植え替えたりするときに使います。植木鉢に土をいれるときは、移植ゴテだと使いにくいですから、“土入れ”をご用意されたほうがよいでしょう。
(土入れ・・・・上写真の右側にあるステンレス製の筒状のものです。写真は大中小3種類あります)
VINICE
植木の根元などや、寄せ植えの際隙間に土をシュッと入れやすいものですよね。
兼松先生
そうです。
VINICE
この他に、ゴミの処理用にゴミ箱があるとよいですか?
兼松先生
そうですね。ゴミはたくさん出ますから、レジ袋を植木鉢に入れてゴミ箱としても良いでしょう。ただし、風で飛ばないようにクリップや洗濯ばさみで留めてください。雨が降り込むといけないので、ふたができたら良いですね。
VINICE
ところで、土は捨てられるんですか?
兼松先生
まず土と植物は分けてください。土の場合は自治体にもよりますが引き取れないことが多いと思います。少量であれば、少しずつ分けて燃えないごみとして日頃ちょっとずつ出していただければ、よいと思います。
◆ベランダの注意点
VINICE
では、注意することってありますか。
兼松先生
ドレーンってありますよね。排水口ですね。あれが詰まってしまいますと隣近所のお宅にも迷惑がかかりますし、詰まってしまってからなおそうとすると結構大事になってしまいますので、ドレーンは常に清潔にするようにしてください。例えば、このようなもの(右写真)を排水溝の途中に置いておくとよいですよ。これは、スーパーや八百屋さんのニンニクが入っていたネットの袋に石を入れただけです。石があまり細かいとせき止めすぎて、すぐ詰まっちゃいますのでこのくらいがよいようです。
たまねぎのネットに小石を入れています。
VINICE
なるほど、水は流して、ゴミだけをせき止めるわけですね。
兼松先生
あともうひとつは、ドレーンの中にコロンと落ちないような大きさの石を選んで、溝に入れて置いてください。この大きさなら万一ドレーンに落ちても手で拾えますから。(下写真)
VINICE
ベランダの床を掃除する時、お水をかけることって、皆さん結構されるんですかね?
兼松先生
暑い時期は打ち水のように水をまいたほうが涼しくていいですよね。でも床に防水シートが張っているのって、手すりの下の部分の黒いところ(右写真)まででしょ。だからこの上側に水がかかると躯体のコンクリートに滲みこんで良くありません。お隣にドレンがあるので、ゴミが流されないようにしています。
VINICE
そうですね、ベランダの床や壁に対して、注意しなくてはいけない点がありますね。
兼松先生
張ってある防水シートは樹脂性のものですから、硬いもので引掻いたり、熱いものを置いたりしてはダメです。やさしく扱ってくださいね。例えば、重い植木鉢を引きずったり、花火をしたり防水シートを傷つけるような事はダメです。ホタル族のお父さんも要注意です。もしも自分のベランダだけ直そうと思っても、ベランダは共用部分ですから自分で業者さんを呼んで直すことが難しくて、大変な事になってしまいますね。ベランダの床は、扱いに気をつけていただいたほうがいいですね。
◆植木鉢の置き方
VINICE
もしかして、植木は直接床に置くよりもちょっと浮かして上げておいたほうがいいんですか?
兼松先生
はい、コンクリートから離した方が、夏は熱が伝わらないので良いですね。
VINICE
例えば、レンガなどを置いて上に乗せたほうがよいのですか?
兼松先生
レンガでもよいですし、ポットフットといって鉢の下に入れるものがあります。
◆ポットフット
植木の底を浮かせるのに使用します。大き目のものが多く、鉢のサイズが直径30cm以上ないとバランスが悪いです。シンプルな形の他にカエルや天使等があります
VINICE
かわいいですね。
兼松先生
人工芝を敷く園芸家もいますよ。乾燥防止と暑さ対策です。◆防水シート
乾燥しやすいベランダで少しでも湿度を保ちたいので敷いています。
VINICE
上段の棚でも人工芝を敷くのですか?
兼松先生
はい、ベランダは乾燥するので少しでも湿気を残るようにしたいのです。
VINICE
アイアンスタンドの花台を置いても良いですよね。
兼松先生
上のほうが日照を確保できるので有効ですね。ただし小さいお子さんがいるお宅は落下事故に注意してください。お子さんが登って体を乗り出してしまうと非常に危険です。
VINICE
コンクリート躯体に植木鉢を引っ掛けるというのは、どうですか。
兼松先生
落下すると、危ないので手すりの内側ならOKです。これは自作なのですが。このような部材を使い作りました。この躯体のヘリのあたりが、一番陽が当たるし、お部屋の中からも良く見えます。手摺の下は一番良く見える位置ですが、日当たりに問題があるのと、熱い空気がこもってしまうのでお勧めできませんね。アクリル板や格子状の手すりだと弱いので、あまり重いものを乗せることはできませんが、コンクリート状の手すりでしたらこのくらいのものは大丈夫です。
背が高い植物は風の影響を受けやすいので難しいのですが、背が低いものや垂れ下がるタイプなら大丈夫。二週間前に植えたのですが、昨日植木鉢を裏向きにしました。
VINICE
なるほど。手軽にプランターを外すことが出来るのですね。
兼松先生
植物は、陽の方を向いてしまうので、たまに裏返しにしてあげるとよいです。
VINICE
手すりの内側に台があり、植木を並べて置いている方がマンションでもいらっしゃいますよね。これは落下しないように注意していただかないといけませんが、今のお話だと植物自身に風が当たりすぎても良くないのですか?
兼松先生
まず、外側に落ちてしまうととてもキケンなのでそれだけは十分注意してくださいね。背の高い植物は特にです。ベランダガーデニングの良いところは鉢の移動が自由なことですから、風が強くて危ないな、と思ったら降ろしてください。
VINICE
あと、鉢自体に風が当たりやすいということに何か影響はありますか?
兼松先生
まず、鉢が乾きやすいですね。テラコッタの場合は、焼き物ですから表面に細かい穴があいていて内側から外側までつながっています。その細かい穴の中には表面張力で水が入っています。風が吹くとテラコッタの表面から水が蒸発して、内側から水が外に吸い出されてしまいます。ですから、風に当たるととても乾きやすいのです。水が多すぎたときは、鉢が水を外に出してくれるので、根腐れはしにくいというメリットがあります。水を多くあげすぎてしまった場合、鉢の中の水を減らすことは難しいですが、乾きすぎている場合は、潅水すればよいわけですよね。
VINICE
なるほど。テラコッタなど焼き物の鉢が多いのはそのような理由なのですね。
兼松先生
デザインも豊富で使いやすいのではないでしょうか。効果としては水が鉢の表面から蒸発しているので、鉢を冷やす作用があると言われています。最近の日本はとても暑いですから、土の中に溜まった水が温まり根にダメージを与えてしまうケースがあります。テラコッタはそのようなダメージを軽減する働きがあるそうです。
VINICE
そういえば小さい頃は、焼き物の鉢が多かったですよね。
兼松先生
◆素焼鉢とテラコッタ
右下が素焼鉢で、他は全てテラコッタです。素焼鉢は壊れやすいので7号(21cm)程度までしかありません。また形も丸鉢のみです。テラコッタはサイズ、形共に豊富です。
昔は素焼き鉢が多かったですね。素焼き鉢はテラコッタと同じようなものですが、焼いている温度が低いので非常に壊れやすいです。テラコッタより乾きやすくてちょっと難しいかもしれませんが、今でも洋ランの栽培によく使われています。プラスチックの鉢は、風の影響を受けにくいので生産者が温室の中で大量に栽培している場合、ほぼ均等に土が乾くことから、管理がしやすいという点もあります。お店で、素焼き鉢は店頭に並べるときに汚れている鉢を洗わないといけなくて、これが結構重労働なのですがプラスチック鉢になって楽になりました。
最近では輸入品ですが、テラコッタ調の合成樹脂製の鉢も販売されています。テラコッタ製で大きいものは重いので移動が大変ですが、
樹脂製のものは軽いので良いと思います。手すりに取り付ける場合も軽いので良いでしょう。良く出来ているので本物のテラコッタの鉢と並べても違和感は少ないと思います。
VINICE
ベランダガーデニングは屋外ということもあり、風などの影響を受ける場所ですから、その場から離れることも意識していただきていですね。まずは、安全第一!
そして、必要最低限でシンプルなグッズを用意して、危険性のないように注意しながらベランダガーデニングを楽しんでください。
◆植物の潅水について
VINICE
植物が大好きだと、ベランダいっぱいに植木鉢を置いてしまったりするお宅もありますが・・・。
兼松先生
ベランダガーデニングで鉢数が多い場合は、ベランダに水栓があればよいのですが、ない場合は潅水がとても大変ですよね。鉢数が多いとジョウロ一杯の水で、間に合わせようと思ったりして、どうしてもひとつの鉢の水量が少なくなりがちですよね。潅水は鉢底の穴から水が出るまでたっぷりとあげてください。鉢数を増やしすぎて潅水が大変にならないようにしてくださいね。植物好きには難しいのですが・・・。
置き場所が足りなくなっても、エアコンの室外機の風があたるところは、夏も冬も絶対置いてはだめですよ。夏は熱風で、冬は寒風が出てきますから。
VINICE
潅水が大変だと思わないようにするためには、自分の生活スタイルの中で植物の世話をする時間をどうするか、ですね。
兼松先生
無理なく時間の取れるときに手入れをすれば良いと思います。潅水は真夏の暑い日中は良くないのですが、もしも日中に植物が萎(しお)れていた場合は、すぐにたっぷりと潅水して日陰に移してください。水が上がって元気になったらまたもとの所に戻してください。日中以外なら朝でも夕方でもよいと思います。園芸家の間では夏の潅水は朝が良いとか、夕方が良いとかよく話題になりますが、忙しい人は一番無理なく潅水できる時間でよいと思います。勤めている人は夕方の潅水は難しいし、夜は暗くて鉢土が潅水を必要としているか確認できないので、色々と慌しい時間なのですが、朝の方が良いように思います。私は夏の間、夜に潅水したことがあります。冷やそうと思って葉水をかねて潅水したのですが、鉢土の乾き具合が暗くてよくわからず、必要以上に水を与えてしまったようで根腐れでたくさん枯らした経験があります。培養土をかなり水はけのよいものにしないといけなかったんですね。冬の場合は凍ってしまうので潅水は朝か日中にしてください。
VINICE
旅行などでお水をあげられない時は、どうすればよいですか?
兼松先生
毎日見てあげていれば、どの鉢がどのくらいで乾くかがわかってきますので、鉢別に対応しましょう。たとえば夏で2泊3日の場合は、2、3日に1回潅水するものは旅行に出られる前の晩か当日の朝に、たっぷりと水をあげればほぼ大丈夫ですよね。毎日潅水をしないと萎れてしまうものは、陽の当たらないところに移動して、鉢皿に水を張って鉢をつけてしまいます。ただし水は少なめにしてください。植物には良くないので非常事態の場合だけですよ。もちろん例外があって普段から水につけておいても平気な種類はありますけど。あるいは濡れたタオルに植木鉢を包んでしまうのも効果的でしょう。鉢の中の培養土が乾くのは植物が吸収するより、鉢や培養土の表面から蒸発する方が多いというデータがあるので、日陰や室内に移すだけ出だいぶ違います。5日ぐらいだったらすべて部屋の中に避難が無難ですね。
もっと長く出かける場合は、自動潅水の器具を使うのが良いと思います。いずれの場合も必ず事前にテストをしてみてください。うまく行かないと帰ってからがツライです。短期間でしたらこのような方法でよいですが、長期間の旅行は植物を維持するのが難しいと思います。デリケートな種類だったせいもありますが。私は色々対策しましたが、1週間の旅行で3割ほど枯らしたことがあり、夏の旅行は控えています。植物好きには夏の旅行はつらいです。やっぱり、お花の好きなお友達を作って協力体制を作ることがよいのではないでしょうか。
◆植物との対話
VINICE
兼松さんもお手入れをする時に、植物に声をかけてあげたりなさるのですか? とても愛情を注いでいらっしゃるようなので。
兼松先生
意識はしていませんが、話しかけているかもしれませんね。植物好きは皆そうみたいですね。
特に植物は休眠から覚める頃や蕾の開く頃は、午前と午後でも違ってきて面白いですよ。できれば植物は毎日様子を見てあげるのがよいですね。病気や害虫の対策が早くできるし。元気な植物は眺めていると気持ちが良いものですよ。季節や植物の種類や置き場で乾き方も違ってくるから、毎日チェックしてください。慣れてくると、潅水の間隔も分かってきますが、それでもどうなったかな、と様子を見てあげるのがよいと思います。私のお客様には、”毎日水をあげなくても見てあげてください”とお話しています。
◆害虫・病気から植物を守る
VINICE
もしも害虫とか病気が見つかったらどうしたらいいですか。対策方法を教えてください。
兼松先生農薬を使ってください。病気や害虫の種類によって使う農薬の種類が違ってきますので合ったものを使ってください。分からなければお店の人に相談してください。病気の場合は話では分かりにくいので、病気の葉を持って行くとよいでしょう。とりあえず、スプレー式の毛虫・アブラムシ用をすぐに使えるように用意しておいてください。あまり被害が広がらないうちに退治した方が良いので手元に置いておきましょう。エアゾール式もよいのですが、薬液の霧が細かいので飛散しやすくてお隣に飛んでいって心配なのと、近づけて使うと気化するときに低温のガスがでるので植物が凍傷になるので注意が必要です。農薬を使った後も必ず効果あったかチェックしてください。
私は念のため2週間ぐらいあとにもう一度散布しています。効果が無かったら農薬の種類を変えてください。農薬はくれぐれもお子さんの手の届かないところにしまってくださいね。
VINICE
食用に使うハーブとかでも農薬を使って大丈夫ですか。
兼松先生
園芸店で私達が入手できるものは毒性が低いですし、説明書に収穫の何日前まで使って大丈夫か書いてあるのでよく読んでください。最近では安全な天然性の農薬もありますよ。
VINICE
肥料の中でお勧めのものを教えていただけますか。あと使い方で注意することとか。
兼松先生
成分によってで化学系のものと有機質系がありますが、ベランダでは清潔にしたいので化学系が良いでしょう。有機質系は効き目が穏やかでよいものなのですがにおいが出たり、コバエがわいたりすることがあります。さらに与え方で3種類あります。植え込む時に培養土にまぜるタイプと培養土の表面にまくタイプと水で薄めて根に与えるタイプです。化学系は与えすぎると肥料焼けしやすいので注意が必要です。
絶対に説明書きをよく読んで使ってください。前にもお話しました(Lesson1)が、夏冬は一部の植物を除いてはどのタイプの肥料でも使用は控えてください。
◆夏の終わりに
VINICE
植木を購入する際にどんなお店で購入するのがお勧めでしょうか?最近インテリアのお店などでもよくグリーンも売っていますが、園芸ショップとの違いってどんな点がありますか?
兼松先生
インテリアショップの場合は、やはりインテリアとして見ていますので『フォルムが個性的な植物』が多いです。園芸ショップの場合は、インテリア的なものもありますが、どちらかというと『育てやすい植物』が多いと思います。やはり、植物が元気が出ないと可哀想ですから、入手する前には栽培の手引書に目を通しておいたほうがよいでしょう。
VINICE
やはり、手引書は多少用意して参考にしつつ、自分にあった植物はどんな種類なのか、いろいろ試してみることも必要ですね。
兼松先生
最近のマンションはベランダも広いし、日当たりも確保されています。鉢植えで育てるので夏場は潅水が大変だと思いますが、リビングから良く見えますからリビングの延長と考えてデザインできるし、色々とやってみるのも楽しいと思います。バラだってコンパクトなものなら大丈夫ですし、基本を押さえれば栽培できる植物の種類は意外と多いです。少しずつトライして楽しんでください。
最後に、ベランダガーデン関係で面白い本を紹介します。読書にどうぞ。
◆ 屋上・ベランダガーデニング べからず集 屋上開発研究会編 創樹社 3500円
少し難しいかもしれませんが内容は濃いです。本格的です。
◆ 園芸入門 原田親編 NHK出版 2800円
基礎的な内容で、用意しておくと便利です。
◆ 鉢花ポケット辞典 長岡求著 NHK出版 2800円
植物の名前や性質を調べるのに使いやすく、種類もたくさん載っています。店頭に並ぶことの多い一年草・多年草中心。植木鉢に植わった姿の写真が載っているので、調べやすいです。
◆ 趣味の園芸 2005年7月号 NHK出版 480円
◆ 趣味の園芸 2005年8月号 NHK出版 480円
7月号は夏の暑さ対策について、8月号は留守中の水遣りの特集があります。
◆ パリのテラス ジュウ・ドゥ・ポゥム著 アシェット婦人画報社 1900円
その名の通りテラスの写真集。さすがにパリの生活感はオシャレです。
◆ TERRACES&ROOF GARDENS OF PARIS
◆ ROOF GARDENS BALCONIES&TERRACES
2冊ともに洋書です。写真が多いのでパラパラとめくって眺める本。住宅事情が違うので即参考になるものではありませんが、デザインのヒントになるかも。
◆ ひみつの植物 藤田雅矢 WAVE出版 1400円
最後は読み物です。難しくなくて気軽に読めます。でも内容は濃いです。
著者の植物好きが伝わってきます。
VINICE
まもなく、暑い夏も終わり、疲れた植物が元気に回復できる時期が訪れますね。植物の植え替えにもふさわしい時期ですから、あと少し、植物をやさしく世話をして、秋を迎えて欲しいですね。
秋は秋で、ふさわしいベランダガーデニングを楽しんでいただきたいと思います。
今回は『夏のベランダガーデニング』について兼松先生に伺いました。本当に有難うございました。
兼松先生
はい、ありがとうございました。
■教えて!兼松先生
ヴィニーチェ会員より寄せられた質問に 兼松先生が回答して下さいます。
ベランダガーデニング、大変参考になります。
兼松先生に質問があります。
現在鉢植えを外にいくつか置いていますが、鉢の中の土が固くなっているようで、お水をあげても少し土の上にたまってから浸透していくようなのですが、このままで大丈夫でしょうか。茎や葉っぱは、見た目なんともないようなのですが・・・。
あまり水が培養土に浸透しない状態だと、程度にもよりますが、“根詰まり”を起こしているかもしれませんね。鉢底の穴を調べてください。穴から根が出ていたら根詰まりです。
植物の種類や培養土などにもよりますが、購入したままの鉢で1年以内、購入した後にひとまわり大きな鉢に植え替えたとしても2~3年で(早い場合は1年ぐらい)で根詰まりになる事が多いです。鉢の中の培養土が伸びた根でいっぱいになっている状態です。このような状態だと水や肥料分を根が吸収できないばかりでなく、通気性も悪く生育が悪くなります。鉢植え栽培ではこれを防ぐために、定期的に植え替えて培養土を交換する必要があります。
植え替えの時期は植物の種類によって違ってきますが、一般的なものでしたら秋なら9月のお彼岸ごろから10月中に植え替えをしてはいかがでしょうか(寒さに弱い観葉植物などは9月中)。根詰まりを起こしていなくても、鉢栽培の場合は庭植えと違って度々潅水をする必要があるので、培養土の表面の土の粒が水にたたかれて砕けて細かくなってしまい、培養土の表面が固くなってしまうことがあります。このような場合は培養土の表面が乾いた状態の時に、培養土の表面を金属のフォークのようなもので軽く引っかいて耕してください。
この前室内の鉢植えの土がカビてしまい、人体にも影響がある・・・
というテレビを観ました。
うちも何個か室内に置いているのでちょっと心配になりました。
見た目で土がカビているかどうかが、よくわからないのですが
見分け方とか注意することはありますか?
鉢植えの培養土の表面のカビが人体に影響する話は知りませんでした。
怖いですね。さて、培養土の表面のカビは白くてフワフワしたものや、黒くてベットリとしたものなどが多いです。カビは多湿と低日照で多く発生しますので、普通の管理をしていればそれほど多くは発生しないと思います。
カビが生えるようだと植物も病気にかかりやすい状態だと思います。
もしもカビが発生したら取り除いてください。そして置き場所や培養土や管理方法を見直したほうがよいかもしれませんね。白くて粉のようなものは、化学合成の液肥を与え続けるとできることがありますが、これはカビではなくて肥料の化学成分が結晶になったものです。これも植物に悪いので取り除いて、多めに潅水して培養土中に溜まった肥料分を洗い流してください。
夏のベランダガーデニング
https://www.vinice.jp/wp/wp-content/uploads/2005/08/garden.jpg
https://www.vinice.jp/lesson/143/