様々なものをすっぽり包み込み、包むものに合わせて形を変える風呂敷。昔から永く日本人の生活に関わってきてた風呂敷が、今新しい動きをし始めています。
昔から生活のまわりにあったのに、馴染むあまりに意識したことがなかった風呂敷に焦点をあて、「受け継がれてきたもの」とその文化の「これから」について伺いました!
■Lesson1
風呂敷、
基本の「き」から
■Lesson2
染めの
技術に触れる

■Lesson3
建築家とのコラボレーションPART1
■Lesson4
建築家とのコラボレーションPART2
■Lesson5
風呂敷との付き合い方も変わる!?
■教えて!先生
 ■Lesson5
東京からの発信
のれんへの挑戦
風呂敷の現代的な使い方
余談:泥棒の唐草模様
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講師:美濃部順一郎氏 代表取締役社長
1970年生まれ、東京都出身。東京学芸大学で景観デザインを学び、橋梁のデザイナーとして某建設コンサルタントで活躍後、風呂敷や暖簾などを扱う和小物製造卸業に転向。“ホンモノものづくり”という理念の上に立ち、作り手側の立場からのプロデュース役として活動を行なう。建築家とのコラボレーション作品をプロデュースするという活動も話題。

美濃部株式会社 http://www.minobe-inc.jp

VINICE
いまちょうど風呂敷ブームが起きて、風呂敷バックなどが出てきたりしていますが、
「ARCHITEXTURE」シリーズを出された時期と重なったことに、どうお考えになっていますか?

美濃部先生
奇しくも一緒になってしまったと思っています。
今の風呂敷ブームは、やはりブームで終わると考えています。それに対して「ARCHITEXTURE」はブームを起こそうと思って作ったわけではなく、風呂敷の長い歴史を絶やさず後生に残すには、今何をするべきかと考えて企画したものなので、別のものと考えています。

VINICE
たまたま重なってしまったということですね。
今回新しい試みとしてこうした作品を作られて、またそれとは別に受け継いでゆくべきであろう歴史ある風呂敷の基本がある。では、今後どのように進んでゆこうとお考えですか?

美濃部先生
今の和小物と言われるものの約9割5分は京都で作られています。
和物というとほとんどが京都に行き着くという中で、当社としては創業当時から東京で商いをやっておりますので、「東京から発信する和物」という視点でやっていきたいと考えているのです。
Tokyoという特性を生かすこと、それこそが当社の特徴であり、「現代のスタンダードや異国の文化と融合させる」といった、「情報の発信地であるが故にできる利点」を生かすという思いでやっていきたいと考えています。

VINICE
東京独特の粋な文化というのでしょうか?
京都のはんなりとした文化とはまた違う文化がありますよね。

美濃部先生
そうですね。京都というのは、新しいものを発信しているかのようで、実はあまり型破りなことをできない世界なのだと思っています。どこかに縛りがあるようで、「ARCHITEXTURE」のような突拍子の無い物というのは、やろうとしないし、またやれないのではないかな、と。それならば、東京でその地の利を生かすことこそが、東京で和小物を扱う上での最大の特徴になると考えました。

VINICE
なるほど。

美濃部先生
それと風呂敷というものを後生に残すにはどうしたら良いのかという視点では、若い世代に風呂敷という言葉を認識してもらわなければいけないと考えています。そのような思いがあるからこういうアイディアが出てきたということもあるのですが。
実際、現在ブームが起きているので、大分風呂敷の購買層というのは下がってきていますが、それまでは60代前後が主流でした。
そうした現状の中、若い人たちにもどうしたら受け入れられるのかという視点が重要ではないかと考えています。そして彼らに実際に手にとって買ってもらうためには、風呂敷というものはどのように使うのかということを伝える必要がある。ですから私の中では、この包み方や現代での風呂敷の使い方を紹介している「ARCHITEXTURE」のリーフレットこそ、一番多くの方に見てもらいたいと思っているのです。

VINICE
なるほど。それぞれのシーンがとてもイメージしやすく載っていますよね。
        

美濃部先生
私は、風呂敷というのはエンドユーザーの方から見ると、高層ビルの上にあるものをとるような存在だと思っています。20代、30代の方々は特にそうだと思うのです。高層ビルの上にあるものなど、誰も目に留めないし、あることも気づかないから、取りに行こうとも思いませんよね。
その「取りに行く」行為を「買っていただく」という行為だとすると、買っていただくためにはその高層ビルに登ってゆくための階段をできるだけ低く設定し、登りやすく(買いやすく)導くことがそのものに到達する近道だろう、と。階段の一段一段を低く設定することを心がけると、高いハードルを越えることよりもよほど楽ですし、必ず登ってくれる人が現れるだろうと考えました。そういった登りやすくする、階段を低く設定するというツールとしてこのコンセプトリーフレットを同封したり、パッケージングなどはこだわりを持って作りました。
購入する側の視点に立つと、一歩一歩登るためのサービスがきちんと揃っていれば、登りきることはそれほど困難ではないと思うのです。
       

VINICE
一気に誘導する=押し売りではなく、自然に風呂敷が身近な存在になっていくようにレールを敷くということですね?

美濃部先生
そのためにはどうすれば良い、ああすれば良いと試行錯誤をしながら形を作っています。
このような考えが認められ、JIDA(財団法人 日本インダストリアルデザイナー協会)より、JIDAミュージアムセレクションVol.8の永久保存選定品として選ばれ、また先日発表された2006年度グッドデザイン賞も受賞することができました。
「風呂敷」というアイテムとしては異例な出来事だと思いますが。(笑)

VINICE
御社では風呂敷に限らず「のれん」などの扱っていらっしゃいますよね?
染の技術などは風呂敷と同じなのでしょうが、のれんについても今後の方向性などを考えられていますか?

美濃部先生
そうですね。アイディアはいろいろとありますよ。
来年4月ぐらいには、作品として世に出そうと思っているものがあります。これは販売する目的ではなく、作品づくりとしての取り組みですが、ある方から一緒にやらないかとお話をいただき、お手伝いさせていただくことになりました。今後ののれんの製品提案としての第一歩だと考えています。

VINICE
そうですか!それは楽しみですね!
カーテン業界では、パネルトラックなど布をスライドさせるパーテーションのようなものもでてきていますが、布を広げて使うところなどは結構日本風でのれんに近いのではと思うのですが?
カーテンは“洋”の物ですが、日本には“和”の物として障子があり、その前は蚊帳があり、平面的に綺麗に見せるものが多かったですよね。のれんもそのひとつになりそうですよね?

美濃部先生
そうですね。逆にのれんを立体的に見せる方法も面白いかもしれないし、2つや3つに割れている「のれん」の基本を変えても良いかもしれないなど、いろいろ考えられますよね。まだまだこれからですが、ぜひ楽しみにしていてください。

VINICE
はい、楽しみにしています!

VINICE
私は今でも旅行には風呂敷を愛用していますが、風呂敷というと本当に当たり前のように家にあり、美濃部さんには申し訳ないですが、なかなか買おうと思うことがなかったように思います。
先日、売り場に行ってこんなにいっぱいあるのだと思ったのが正直な思いですね。

美濃部先生
確かにブームですから、最近いろいろな種類の風呂敷が出ていますよね。
しかし、物は出しても使い方をイメージできる、例えば写真のようなものまで提案しているものはなかなか無いように思います。
実はそうした面がメーカーとして今まで欠けていたのではないのかと考えています。つまり、高層ビルの上に飛び乗れ!と。(笑)

VINICE
なるほど。

美濃部先生
例えば、OLの方はお昼に携帯とお財布を持って出かけますよね?
そういうときにこんな持ち方って結構かわいいのではないかと思うのです。

VINICE
確かにころっとしていてとても可愛いですね。

美濃部先生
こういう単純な使い方で良いと思っているのです。
これは実際にはまだ物足りないけれど、こういう所に可愛さを求めた物を作っていきたいと思っています。また、これをさらに発展させてパーティーバックの代わりに使えるようなドレッシーな物を作れたらなとも。

VINICE
そういうのがあったら欲しいですね!

美濃部先生
実は私の友人が、最近このように風呂敷にものを包んで出かけたりしているそうです。

VINICE
それは、素適ですね!
たしかにお弁当持ってくる人は大判のハンカチなどで包んでくるし。正絹ちりめんの風呂敷もこのように使えるということを知ってはいるけれども、普段の生活ではついお財布をむき出しに持って出かけてしまいますよね、これはおもしろい提案ですね。また風呂敷は、昔から家に当たり前にあったためにあまり関心を持っていなかったこともありますね。

美濃部先生
そういう方たちのために、一枚家にあると便利という提案もしてゆきたいですね。

VINICE
実は風呂敷は収納の際も便利ですよね。私たちのスタッフのひとりが、家族のそれぞれの荷物や洋服を色違いの風呂敷に包み、収納していてとても便利だと言っていました。
分類にも使え、様々な形に変わるから便利だと言っていました。

美濃部先生
そうですね。バッグは形や容積が決まっていますが、風呂敷は自由自在に変えられるという特徴があり、その特徴をうまく利用されているのですね。
もちろん大きいサイズの風呂敷でしたら布団ケースの代わりにもなりますし、ベッドやテーブルの上に掛けたり、形が四角いので実はコタツの上に掛けるのもお勧めで、幅広い使い方ができますよね。

VINICE
なるほど!そうですね。

美濃部先生
先日、出版社の方からの取材を受けた時にいろいろお話をしたら、とても興味を持っていただいて、
「風呂敷だけで本が作れますね」と言っていただけました。
確かに今までも風呂敷の本というのは何冊か出ているのですが、通り一遍等の包み方HOW TO本が多いのです。でもこれからは、「風呂敷で作るライフスタイルの提案」ではなく、「今のライフスタイルの中での風呂敷のあり方」を提案していきたいと考えています。
実際の生活に溶け込んでいる風呂敷という視点でエンドユーザーの意見も聞きたいのですが、正直生活に溶け込めるような風呂敷の商品が少ないのも現状ですね。

VINICE
まだまだこれからということですね?

美濃部先生
そうです。これからですね。

VINICE
さて、余談になりますが、風呂敷に関してひとつ聞きたかったことがあります。
よく泥棒が持っている唐草模様の風呂敷がありますよね。あの柄は、泥棒が関係する歴史はあるのでしょうか?(笑)

美濃部先生
実は日本独特の柄というものではなくて、「唐草=草の蔦をモチーフにしている柄」は実は各国にあるのですよ。日本での唐草模様は、風呂敷の歴史の中ではそれほど深くなく、江戸時代には無かったのでは、と言うほど歴史はありません。

VINICE
そうですか。
それが、現在ではどうして「泥棒といえば唐草模様の風呂敷」と繋がるようになったのでしょうね?

美濃部先生
あのイメージは、明治維新後あるイラストレーターか漫画家が、たまたま泥棒に唐草模様の風呂敷を持たせて書いたのでしょうね。

VINICE
それがたまたましっくりきたキャラクターだったということですね!

美濃部先生
サンタクロースが着ている赤い服も元はコカコーラのCMから、というのと同じですね。
でも、唐草自体は非常に縁起の良い柄なのですよ。それがなぜ泥棒に繋がるのかと疑問に思いますが、それがかなり目立ったキャラクターだったということでしょうね。(笑)

VINICE
そうだったのですね!(笑)

さて、風呂敷の伝統的な技術と新しいものを取り入れた挑戦のお話を5回シリーズに渡って教えていただきました。
普段使っている方も、全然縁の無かった方も、新しい見方をしていただけるような深い内容のお話だったのではと思います。今後の美濃部さんの新しい挑戦も楽しみにしていたいと思います。

ありがとうございました。

美濃部先生
ありがとうございました。
 
 
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