様々なものをすっぽり包み込み、包むものに合わせて形を変える風呂敷。昔から永く日本人の生活に関わってきてた風呂敷が、今新しい動きをし始めています。
昔から生活のまわりにあったのに、馴染むあまりに意識したことがなかった風呂敷に焦点をあて、「受け継がれてきたもの」とその文化の「これから」について伺いました!
■Lesson1
風呂敷、
基本の「き」から
■Lesson2
染めの
技術に触れる

■Lesson3
建築家とのコラボレーションPART1
■Lesson4
建築家とのコラボレーションPART2
■Lesson5
風呂敷との付き合い方も変わる!?
■教えて!先生
 ■Lesson2
「染めの技術」・引き染め、プリントスクリーン
オリジナル風呂敷を作る
「染めの技術」・・・硫化、注染
風呂敷のデザイン
講師:美濃部順一郎氏 代表取締役社長
1970年生まれ、東京都出身。東京学芸大学で景観デザインを学び、橋梁のデザイナーとして某建設コンサルタントで活躍後、風呂敷や暖簾などを扱う和小物製造卸業に転向。
“ホンモノものづくり”という理念の上に立ち、作り手側の立場からのプロデュース役として活動を行なう。建築家とのコラボレーション作品をプロデュースするという活動も話題。

美濃部株式会社 http://www.minobe-inc.jp
質問ができる方は、ヴィニーチェクラブ会員の方に
限らせていただきます。
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VINICE
さて、LESSON1のお話で「正絹ちりめん」生地の作り方を教えていただきましたが、この生地は絹糸の時点で染めてあるのでしょうか?

美濃部先生
いいえ、これは後から染めています。生地の製造工場から出来上がってくる生地は全て白の生地だけです。白といっても絹糸の白ですから、やや黄色みがかった生成の白です。

VINICE
その白い生地からこのように染めてゆくのですね・・・。

美濃部先生
そうですね。
逆に、こちらの風呂敷のような真っ白な白というのは漂白されたものですね。
麻の白が本当の糸の世界の白、つまり生成の白が本当の白ですね。

VINICE
なるほど。

美濃部先生
白い生地を作ってその後「染め」の行程に入るのですが、「染め」といっても様々な方法があって、ここにある4種類でも全部染め方が違うのです。

VINICE
へぇ〜、そうなんですか!

美濃部先生
一番高いといわれている、手の込んだ職人の技が光るものが、「引き染め」という染め方です。

この染め方からご紹介しましょう。
まず反物になっている生地を宙に浮かせます。ただし、宙にただ浮かせるだけでは、ねじれてしまったりと生地が不安定なので、「針糸(しんし)」という凧のように生地をピンと張る道具で間隔をあけ張っておき、その上から職人が刷毛(はけ)を使って染めてゆくのです。

VINICE
刷毛(はけ)で染めるのですか?

美濃部先生
はい。ですから、この風呂敷のようなグラデーションは刷毛(はけ)の強弱でつけているのです。

VINICE
強弱ですか!? すごい!ざぶざぶ染料につけて染めているのかと思いきや・・・!

美濃部先生
違いますね。

この風呂敷で言うと、こちらが耳なので、反物自体はこちらの方向に長いものになりますよね。この方向に長い反物に、奥側に濃い色を染めて、中央を力加減で淡い色に染めて、手前をまた少し濃くして・・・というように刷毛(はけ)で染めてゆくのです。

VINICE
素晴らしい技術ですね!

美濃部先生
そうですね。
この反物の上に「伏せ糊(ふせのり)」というものがあるのですが、その糊を模様のように載せていくと、引き染めに例えば文字が浮き出てくるような柄も作ることができます。

VINICE
なるほど。そこだけ色が付かないということですね。

美濃部先生
はい。そうですね。

続いてこちらはスクリーンなのですが、プリントと呼ばれる染め方です。でも、印刷の世界のプリントとは違って、基本は「染め」なのですよ。
反物を幅いっぱいに広げ、捺染台(なっせんだい)と呼ばれる斜めになっている台の上に置き、その上にスクリーン型を載せて染めるのです。
これが、その写真になりますね。

VINICE
シルクスクリーンみたいですね。

美濃部先生
そう、それに近いですね。
「スケージ」という道具を使って、染めてゆくのです。それを風呂敷一枚一枚染めてゆくのですが、印刷との大きな違いは一色に付き一つの型を使うというところです。
だからこの風呂敷でいうと、4色載っているので、4枚の型を使っていることになるのです。

VINICE
なるほど。手間のかけ方が違いますね!

美濃部先生
ところで、こちらの風呂敷もスクリーン型で染めているのです。


VINICE
ええっ!! これがですか?!

美濃部先生
これは、うちの会社でも創業以来最高の型枚数と言われていて、64枚の型を使っているのです。

VINICE
すごいですね!
細かいところも型で染めているのですか?

美濃部先生
そうですね。その後、強弱があまりに強いところは、職人がひとつずつ手で直してゆくのです。

ここは、葉1枚を表現するのに5型使っていますね。


VINICE
わぁ!とても細かい!
こういう絵画のようなものもあるのですね・・・。
これを何枚も何枚も作るわけですよね?

美濃部先生
これを先ほど「プリント」と言いましたが安価にプリントで染める方法とは違い、友禅染めの方法の「プリント」ということになります。そして、「友禅」の一番の特徴は、何色も色を重ねることができるということなのです。
この写真も実際の友禅染めの工場ですよ。この写真に写っている職人さんは刷毛(はけ)で色のぼかし、いわゆるグラデーションをいれているところですね。

VINICE
こういった工場では風呂敷だけを染めているのですか?

美濃部先生
この写真の工場は、風呂敷専門ですね。でも働いている職人さんはもともと友禅の着物を染めていた職人さんなのです。

VINICE
なるほど。

美濃部先生
工程としては、こうして染め上がった反物をこの蒸し箱にいれます。蒸して蒸気をあてることにより、ようやく染料が生地に定着するのです。
その後にいらない糊などを洗い落とすと、ようやく一枚の反物=風呂敷の原型ができあがります。
ただし生地は、濡らすと「しわ(皺)」がぎゅっと縮んだりしますので、「整理」という生地の巾を揃えることを専門の機械で行います。ここでようやく一枚の布ができあがり、最後にカット、縫製して出来上がります。
           

VINICE
なるほど。様々な工程があるのですね。

美濃部先生
ところで先ほどの64型を使ったと紹介したこの風呂敷は市販されてはいません。あるお客様がご自身のために作ったのですよ。
ある著名な画家の方なのですが、一昨年に文化勲章をお受けになった方で、こちらの原画を染めてほしいとのご注文だったのです。

VINICE
すごい注文ですね!

美濃部先生
それで作ったのがこちらの風呂敷になります。
このような作品の風呂敷製作の際には、型屋さんと染め屋さんと当社とで三者協議をして、「ここはこういう型にしよう」など相談しながら進めます。

VINICE
なるほど。

こういったオリジナルの風呂敷はお手ごろなのですか?

美濃部先生
材質や染め方によってまちまちですが、型1枚でだいたい2万円〜4万円くらいですから...

VINICE
それにしても自分だけのオリジナルとは素適ですね。
こういったオリジナルの注文は多いのですか?

美濃部先生
はい、多いですね。
カタログだけを見ると風呂敷のデザインはそれほど種類が多くないように見えるのですが、実は世の中に出回っていない、こういったオリジナル品がとても多いのですよ。

また、こういった「書」を書かれて、それを風呂敷にしてみましょうというのもあります。

VINICE
こういうのは、その場で書くわけではないですよね・・・?

美濃部先生
そうです。風呂敷用にご本人が書かれたものを、こちらで型にしてゆきます。
この書は、経済界の某有名な方が書かれた書ですが、枚数も80枚ととても貴重なものです!

VINICE
それはそれは!

美濃部先生
これもそうですね。柿沼康二さんという方で、これも「書」を風呂敷にしました。来年のNHK大河ドラマは「風林火山」の題字を書かれたり、浜崎あゆみさんのCDの題字を書かれたり、とてもご活躍されている方の書です。

            

VINICE
字も素適ですし、また風呂敷になったときもいいものですね・・・。
お話を伺っていると、機会があったら自分たちもオリジナルの風呂敷を作ってみたいと思いますね!

美濃部先生
是非、いかがですか!


美濃部先生
さて、染めのお話に戻ると、もう数種類染め方があるのです。

先ほどの「友禅」、「スクリーン」に続き、これは「硫化(りゅうか)」という染め方になります。
今までは、生地を横に広げて染めるという方法でしたが、この「硫化」の場合は生地をS字形にずっと束ねていき、その上に型を置いて、染料に漬けるという方法になります。

VINICE
型は・・・?

美濃部先生
型は1つだけです。
そうすると、表裏がくっきりと染まるのです。

VINICE
ああ、そうですね。先ほどのスクリーンは、裏がかすれたようになって染まっていなかったですよね。
型が「おもり」変わりなのですか?

美濃部先生
「おもり」の役割もあるかもしれませんが、先ほどと同じように「伏せ糊(ふせのり)」で型を作っておいて染料に漬けるのです。

VINICE
何枚もの生地を重ねて一枚みたいな感じにして型で染める感じなのでしょうか?
不思議ですね。そんなきれいに出るのですね!

美濃部先生
そうですね。ただし、この方法の場合は、何色も使えないのです。
一色、できて二色ぐらいだと思います。

これと似たようなやり方で、「注染(ちゅうせん)」という方法があります。こちらは漬けるのではなく型の上から流し込む(注ぐ)というのが適切ですね。こちらの場合は、色の境目が少しにじんだ形になるのが特徴です。そのかわりにいろいろな色を使うのです。

VINICE
なるほど。
こちらのほうがすんなり頭に入ります。境界線がにじまないほうが理解にしにくいです(苦笑)
染め方を聞いてから改めて、風呂敷を見ると全然見るところが変わってきますね!

美濃部先生
他にも草木染というのは個人でもやられている方が多いのですが、一般的には薄い色しかだせないのです。でも染めの世界ではどうしても濃い色を出さなければならない所もあり、今の時代ではいろいろな薬品をまぜて耐久性のある濃い色を作り出しているのです。
だから、素人の方がご自分で染めようとすると、どうしてもこの濃い色がだせないのです。「どうすれば良いんですか?」といったお問い合せをいただくこともあるのですよ!(笑)

VINICE
ええっ、そうなんですか?(笑)

VINICE
御社の風呂敷はいろいろなデザインがありますが、これはデザイナーの方がいらっしゃるのですか?

美濃部先生
これは、芹沢_介さんという方のデザインになります。
もう亡くなられているのですが生前に作られたものなのですよ。氏は染めの作家だったんですが、染めの作品としてはそんなに多くつくることができないので、では当社で製品化しましょうとライセンス契約をしたのです。
「鈴廣のかまぼこ」のロゴや、「あけぼの」というおせんべいのロゴなど書かれた方なのですよ。また、JALの初代の鶴のマークも氏の作品です。

VINICE
私たちも身近に見たことがあるものばかりですね。

美濃部先生
生前は人間国宝にもなられています。
昭和30年代にこういう文字を作るというのは、相当モダンだったと思いますよね。
     

VINICE
そうですね。とても素適ですね。
では、風呂敷として一般的な模様というものがあるわけではないのですね?

美濃部先生
そういう風に考えると「小紋」が一般的な模様になるのではないでしょうか。
これは鮫小紋といって、少し鮫の肌のような模様になっていますね。

VINICE
こういうものが本当に一般的な模様なのですね。なるほど。

さて、次回はいよいよ、風呂敷の新しい取り組みについてお話を伺いたいと思います。
 
 
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